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🍸84.俺が一番🍾
しおりを挟む目が覚めた時、車は店裏側の駐車場に止まっていた。
車の中で着替えをして、ウィッグをかぶり、シンヤにメイクされる。
今日のドレスは少し可愛げが多い気がする。肩口のリボンを結び直すのに手間取ってたら、結局それもシンヤがしてくれた。
金曜夜の店内は賑わっていた。
初めは体裁上出勤していたのに、手の回らないところに座ったり、愛想笑いしたりする。
不安しか無かったこの役目も、少し楽しくなってきた。
サングリアを舐めて、そんなふうに酔いしれていた、午後21時だった。
「·····?」
ミチルはふと後ろを振り返った。
何やら、店のメインホールが騒がしい。
それも妙なざわめきだ。
ここはキャバクラなのに、初めの騒音は男性から、段々と女性特有の黄色い声が混ざる。
さざめきの方へ向かったヒールは、それ以上先へ行くことを拒んだ。
騒音が遠くなり、めいっぱい目を見開いたまま動けなくなる。
「ルチアちゃん·····!」
ミカの呼びかけでハッと意識を引き戻される。
背が高くて、万能のスタイルをした男が3人。
1人はヒラヒラとこちらへ手を振るタトゥーの男、もう1人は眠そうな水面の瞳を微笑ませる天使のような青年。
そして、スマホ片手に店を眺める、冷たい紫髪。
立っているだけでこの場にいる全ての人の視線を奪うような美男は、最後こちらを一瞥した。
「遊びに来ちゃった」
人懐こい笑顔をうかべるツバサからふいと目を逸らして、ミチルは無言を貫いた。
VIP席、個室のソファ席。右隣にはツバサ、左にはノエル、そして斜め向かいにハルキがいる。
ハルキはツバサに誘われ、ノエルは嬉々としてついてきたという。
全くそりの合わない3人が行動を共にするなんて、明日は台風か地震か、雷か。今から恐ろしい。
グラスに氷を入れる手が震える。
白金髪の天使が、酒を入れて、割って、マドラーを反時計回りにするのをじっと見ている。
妙に熱っぽい視線だ。じょうずだね、ちゃんと反対に回すの偉いね、なんてとろけそうな男の声が横でいちいち言うから、恥ずかしくてかなわない。
どんな罰で、天下のカサ・ディアブロスリートップの前で酒を作らなきゃいけないのだ。
耐え兼ねて初めに飲み物を渡したら、ノエルは長いまつ毛を綻ばせた。
「俺が一番」
順番にこだわりなんてない。
(どういうつもり?)
斜め前に座る男が気が気でない。
最後に盗み見たハルキは、ずっと無言のまま、酒を受け取る時だけこっちに腕を伸ばしてきてくれた。
「今日のお洋服もかわええね」
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