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🍸85.クレーム対応🍾
しおりを挟む「今日のお洋服もかわええね」
ツバサが茶化すように言ったら、
「お姫様みたいだね」
被せるようにしてノエルが言う。
このふたりが言葉を交わしたのを見たことがない。今もお互い同じ空間で言葉を発しながら、まるでお互いなんて居ないかのような空気感である。
過ごし良いの回った身体に、また少しだけお酒を入れる。
そうでもしないと落ち着かない。そうしたって落ち着かないけど、シラフよりマシだ。
「ねえハルキ、そう思わん?」
「!」
ギュッとグラスを握りしめる。
1度目は無視。ねーねーとしつこく声をかけるツバサに、翡翠は少し鬱陶しそうに宙を仰ぐ。
「薄いんだけど」
「·····へっ」
果たして返ってきたのは、こちらへの感想ではなかった。
「作り直して?」
「アハハ」
お水ちゃんがお姫様ならハルキは王様かななんて軽口が飛ぶ。
笑ってるのはツバサだけだ。冷めた翡翠がこちらを見ていると、体が強ばって、言葉すら浮かばなくなる。
「す、すぐ、作·····」
感覚の遠のく足を叱咤して立ち上がり、彼の前にあるグラスを取ろうと手を伸ばす。
しかし持っていこうとしたら、ふた周りくらい大きな手に、手ごと掴まれた。
冷たくて硬い手のひら。
ハルキのものだ。
「ぁ、へ?ぁ·····っ」
「客からクレームがあった時はさ」
こちらの手を巻き込んだまま、テーブルの上でぐいとグラスを引かれる。
「まずごめんなさいでしょ?」
「ねえお水ちゃん」
不意に、背後からツバサの声が呼ぶ。
「もしかして下着も女の子用」
「!」
腕を引っ張られたせいで中腰になった。
ちょうど背後になったツバサの方には尻が向けられているのだ。
「ラッキースケベも提供してくれるん?」
「あ、だ、だめ·····っ」
「おい」
半音低くなった声に、ビクリと肩を震わせる。
「クレーム対応もまともに出来ないの?」
長い指がグラスの縁をコンと叩く。
「白と~何色かな?よく見えないや」
「恥ずかしくってお顔真っ赤なミチルちゃん、可愛い」
天使のような美男なのに、ノエルも助けてはくれない。
それどころかこちらが辱められるのを、余興の一環のように恍惚と眺めている。
「ご、ごめんなさ·····っ」
「声小さくて聞こえないってば」
精一杯振り絞った声に高圧的な声が被せられる。
後ろがスースーする。スカートをめくりあげられたのだ。
(早く、言わないと、)
今以上に状況が悪くなる前に、早くこの場を切り抜けないと。
パクパク口を動かすのを繰り返して、再び声を発しようとするのに、
「あれぇ·····お水ちゃん、おパンツちょっとシミできてるよ?(笑)」
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