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第四章

《第22話》傷痕

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「は·····っ」


少し固くなった陰茎を覆われる。
庵野の胸元を押した両手は、片手に束ねられ、ベットに押し付けられた。

決して強くはなくて、形でのみ押さえつけられている感じだ。
しかし振りほどこうとすると力を強められ、中々逃れることが出来ない。

身体に力が入らない。
ゆるゆると手のひらが動き出す。
庵野は、俯いた瞼に、そっとキスを落とした。


「·····っン·····ぅ···」


姫宮を撫でていた指が、漏れだした汁を搦め、蕾を擦る。

抵抗する隙を作らないようにと、キスを再開される。
侵入されると思いきや、指の腹は入口をトントンと叩きはじめた。


「ん、ン·····っ」


前に擦られた部分が、じんじんと熱を増す。
じんわりと視界が滲んだ。

中指がそっとつぼみへ押し込められ、そして、すぐに抜けてゆく。


「はぁ·····っ」


キスを拒むように、顔を背ける。
姫宮の顔が、一瞬切なそうに歪む。
たまらない表情だ。
庵野は、再び中指を押し入れていった。


「はぁ········、ン····っ···」


普段は強気な眉が、更に緩められ、濡れた瞳が揺れる。
少し指を動かしてみる。
熱い吐息が零れた。


「先輩、気持ち良いですか」

「ぁ、っち、がっ···」

「違うんですか?···指で掻き混ぜると、すごく気持ち良さそうなのに····」


庵野は人差し指を追加した。


「ばか、増や··········あ·····っ···」


ペニスから溢れ出した愛液が裏筋を通り、蕾を濡らす。
血色を増した孔は滑りが良くなって、やがていやらしい水音を鳴らし出した。


「ふぅっ···ん、ぁっ·····ん·····」 


話すことさえままならないようだ。
姫宮の股を開かせる。
庵野は、閉じられないようにと、彼の腿を膝で固定した。


「あっ、やぁ·····っ」


「嫌ですか?」


動きを止める。
達しそうになっていた姫宮は、ハッとして庵野を見上げた。
綺麗で、格好よくて、少しずるい彼。
記憶の中の美しい彼を、ずっとこうしたかった。


「教えてください、先輩」


誰でもないこの人に、俺に犯されたいと、言わせたい。
指を、浅い所で小刻みに動かしてやる。
しばらくそれを続けていると、彼は甘い声で喘ぎ始めた。

内肉が熱く脈打っている。襞は動きに合わせて強弱し、甘えるように指へ絡みつく。

姫宮は自ら腰を揺らし、庵野の指を使って快楽を得ていた。


「んっ···はぁっ、はぁ、·······んぅ·······」


本人は無自覚なようだ。
極上の景色だ。庵野はそっと下唇を舐めた。


「みずき先輩···俺の指、気持ち良いですか?」


姫宮は、たちまち泣きそうな目をし、隠れるように顔を背ける。
腰はまだ、微量に動いている。

庵野の背を、ゾクゾクと、何かが走り抜けていった。


「もっ·····や·····、」



誰よりも大切にしたいと思っていた。
けれど、彼のこんな顔を見て、どうしようもなく興奮してしまっている自分がいる。
愛しくてかわいい彼の、誰も知らない顔。
色々な表情を、自分だけが見ていたい。

指を奥まで差し込む。
姫宮は期待の眼差しでこちらを見上げていた。


「あなたの欲しい物、全て差し上げます。この先の快楽も、手に入れたいものも全て····だから······」


だから、俺はあなただけが欲しい。
その声は、姫宮には聞こえていただろうか。

動き出した指を締め付け、姫宮はつややかに絶頂した。


意識が朦朧としたまま、近づいてきた唇を受け入れる。
何度か口先で啄んだり吸いつかれたりして、庵野は再び、差し込んだ2本の指を浅い所で動かした。


「···へ·····っ?···、っ···」


惚けた姫宮の瞳が、涙の膜を張る。
縁の緑が濃い。
もっとぐちゃぐちゃにしたい。

こんな感情は初めてだ。
彼が全て初めてだった。


「んっ···ンっ、ぅん·····」


指をもう一本追加する。
辛そうな顔をしたのは一瞬だけ。姫宮は、新しい指も腹のなかであたためだした。


「あっ·····んっはぁ、ンッ」


乞うような視線がこちらを見上げてくる。
理性など、彼方へ葬ってしまいそうだ。
庵野はベルトをゆるめはじめた。

蕾へ、トランクス越しから熱を押し付ける。

1度、驚いたように目を見開く姫宮。深いキスを続けると、視線はとろりと溶かされた。
普段、少々高飛車な彼からは想像できないような光景だ。

ぐっ、ぐっ、と押し付ける行為を、何度か繰り返してみる。
どうしたいかなんて、勿論姫宮も分かっているはずだろう。

ここに、今すぐ自分のモノを押し込んで、奥の奥までかき混ぜてやりたい。
彼だって痛くは無いはずだ。
むしろ、物足りなさそうに指を締め付けている穴は、そうされるのを望んでいるようにさえ思えた。


「·····みずきさん·····」


震える足先を撫でる。


「ねえ、抵抗しなくていいんですか?」


そこを押し付けたまま問う。
姫宮は首を振った。
男に襲われて、尻の穴を弄られ、あろうことか逸物を押し付けられている。

ありえない事のはずだ。
そんな事をされる日が来るとさえ思っていなかった。
許してはいけないのに、身体中の筋肉がほぐれて、まるでぬるま湯の中に浸かってるみたいな気分なのだ。

果たして、本当にそうだろうか。
自分は、心の底から彼を嫌がっているのだろうか。
そんなことを考えてしまっている時点で、答えは明確だった。


「も·····っだめだ·····」


拒絶を口にした唇が、軽くなめとられる。
一際奥へ押し込まれた中指のせいで甘い声が漏れる。
慌てて唇を閉じるが、尻は強く締め付けられた。


「先輩·····それで、抵抗しているつもりですか?」


色気の籠った声が、耳元へ囁く。
丁寧すぎる言葉遣いが、今は、一層姫宮の恥辱心を煽るようだ。


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