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第2章『ちょっと旦那よ、冷たくないか』
第2話『お飾りの妻とか絶対いやだね』
しおりを挟む《MHside》
朝食抜きで課題を一気に終わらせた俺はついでに明日の課題も終わらせてやった。レイが帰って来るまで邸宅の門の前でうろちょろしていると、ディオンが俺の肩に羽織をかけてくれた。
「ありがとう」
「体を壊されては私が旦那様に怒られてしまいます」
俺が風邪で寝込んだとしても、レイはたぶん仕事を優先するだろうな。くっそ、勉強のし過ぎでノイローゼになってやろうか。エーデルワイス大公夫人はノイローゼになられたのに、エーデルワイス大公は顔も見せないらしいとたちまち噂が広がることだろう。
まぁそもそもの話、世間体なんてもの俺は気にする質ではない。しかし、この世界ではどうやら、他人の目が至る所で光ってるらしい。あそこの旦那が浮気してるだとか、愛人作って子供まで産ませただとか、ドロドロした昼ドラみたいな噂が広がりまくるため、他人の目、つまり社交界の連中には注意しなければならないだとか。例えば俺がとてつもないビッチ野郎だったとしよう。真実という名の噂が社交界全体に広がるまでものの数日。下手すればその数日でエーデルワイスの名を汚し低落させ、レイにまで被害が及ぶことがあるらしい。レイの御先祖のじっちゃんばっちゃんたちが築き上げてきたエーデルワイスの名をレイの世代で終わらすわけにはいかないと、俺は勉学に励んでいるわけであるが。レイにもちゃんと積極的になって欲しい。性のことで、な。
「あんまモタモタしてっとエーデルワイス大公はまさかの種無しなのでは?とか噂されちゃうぞ~」
「もう既にその噂はありますよ」
「…………マジか」
「しかし、奥様とご結婚なさったことによって噂は消えましたけれど、なかなか奥様のご懐妊の知らせがなければ再びその噂は広がりますね」
わお、驚きときめきだ。別に旦那が種無しだって噂が立ってときめきはしないのだけど。もしそれでときめいたヤツとかいたら教えて欲しいくらいだね。ときめきポイントをさ!!!いやいや、ときめきポイントってなんだよ。
「奥様、旦那様が帰って来られたようですよ」
ディオンが耳打ちで教えてくれたおかげで俺のバカな思考は完全に閉ざされた。
シャキッと背筋を伸ばし、魔法によって開かれて行く頑丈な門の前でしっかり笑顔を作る。イメージトレーニングは幾度となくしたはずだ。自信を持て!真宙!
美しい白馬に跨ったまっしろしろすけ人間は他でもない俺の旦那様。何人かの従者である部下を両側に連れているその様は、雪の王のようで神々しい。
「おかえり、レイ」
「……………こんなとこで何をしている」
「お出迎えをしたくて…」
「何か欲しいものでもあるのか」
「欲しいものをせがむ時しかレイに会いに来たらいけないわけ?」
レイは慣れた動作で白馬から降りると従者にその白馬を預け、傍らのセバスティアン執事長に堅苦しそうなマントを剥ぎ取りそれを預けた。俺とディオンの横を通り過ぎ歩いて行ってしまうレイを追いかけ、後ろから話しかける。
「今日は帰って来るの早かったな。一緒に夕飯、食べれる?」
「大公としての仕事があるからおまえは一人で食べろ」
「大公としての仕事?軍人として働いるのに大公の仕事もこなしてるんだ…。なぁ、何か俺手伝おっか?こう見えてもめちゃめちゃ勉強して」
「おまえに手伝えることなど何もない。この際だから言っておくが、俺は形だけの結婚に何も求めない。お飾りの妻として静かにしててくれ」
俺に向かってそう言い捨てたレイはそのまま去って行ってしまった。セバスティアン執事長は申し訳なさそうに一礼するとレイを追いかけた。
「奥様…」
「お飾りの妻ってなんなん?助け合うのが夫婦だろ?いつの時代の考え方してんだよムキムキイケメン野郎め。俺のこのムッチムチでえっちえちな体で、もうやめてくださいって懇願するまで攻め倒してやる!!!」
「………………奥様…」
ムッチムチでえっちえちな体というのは、もちろん嘘だがな。
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