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第4章『皇女と友達になった!』
第1話『ぼいん令嬢より綺麗な人おった』
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レイとの仲が少しばかり縮まったため、前よりもっとイケイケで推しているのだけど、全く揺れてくれる気配がない。だけど、前よりも表情が柔らかくなった気がする。きっと俺の魅力に一ミリくらいは揺らいでくれているんだろう。
レイと一緒に寝たあの一夜から、レイを見る度に俺の心臓は破裂しそうなほどに激しく動くようになった。ムキムキイケメンに磨きがかかったのか前よりも何倍もかっこよく見えてしまう。こんな感情を抱くのは初めてだけど、たぶんアレで間違いないだろう。俺はきっと、レイが気になっているんだ。好きの領域までは到達していないけど…。してないからな!?だけど、ぶっちゃけその前の段階まで来ちゃってる。あんな冷たくて怖かったのに、急に優しくしてくる方が悪いんだ。俺は悪くない。うん、好きになっちゃうのは必然なんだから。いやだからまだ好きじゃないってばっ!!!
「奥様。着きましたよ」
「はっ……も、もう?」
今日は、珍しく外出している。外を見れば一面雪の景色。すっかり季節は冬となった。てかこの世界にも季節っていう概念は存在するんだな。
「待って緊張してきた」
「ここまで来て何を言っているのですか。ほら、行きましょう」
ディオンに促されて馬車から降りると、目の前には帝城が。ここに来るのは、この世界に来た初日以来のこと。相変わらずデカすぎるだろと思いつつ、数日前俺宛に届いた手紙を見る。黄金の獅子の印は、紛れもなく皇族アルフェンロード家の家門だ。差出人は、アメリアージェ・ルーラ・レティフォンセ・アルフェンロード第一皇女殿下。それは、事実上の帝城への招待状であった。
検問を終えて無事に帝城の中へと入ると、第一皇女殿下の従者と思わしき人に案内される。
「この部屋で第一皇女殿下がお待ちでございます」
「あ、ありがとうございます…」
「奥様、健闘を祈ります」
「な、なんの健闘だよっ!」
拳を二つ作って応援してくるディオンに小声で怒る。いかんいかん、怒っちゃいかん。ここは帝城の一角とも言える別宮なんだから!何か粗相をしたら殺されかねん!!!
意を決した俺を見て、従者が中にいる第一皇女殿下に声をかけた後、扉を躊躇なく開ける。いやそんな急に開ける?普通。心の準備がまd……………。
「ほっ!?!?!?」
「お待ちしておりました、エーデルワイス大公夫人。この国の第一皇女アメリアージェ・ルーラ・レティフォンセ・アルフェンロードでございます」
「お、おおおおおつかれさまです!おなしゃすっ!!!」
「……………え、え???」
しまった、動揺しすぎてなんか変なこと言ったわ。粗相をしないと誓った瞬間に粗相をするなんてやばすぎんだろ俺。ふぅ、と深呼吸をして、貴族の挨拶をする。
「この度は帝城に御招待いただきありがとうございます。エーデルワイス大公が妻マヒロ・グラデンド・エーデルワイスと申します」
「マヒロ、とお呼びしてもいいかしら」
「も、ももももももももももちのろんです…!!!」
ぼいん令嬢より綺麗な人おった…!ぼいん令嬢は顔と胸だけが取り柄だが、第一皇女殿下は違う。明らかにこれは稀にいる、顔も性格もいいタイプだ!黄金に輝く長髪に宝石のような真っ赤な瞳の美女。ぼいん令嬢の大胆なドレスとは違って、お淑やかさが目に見て取れる綺麗なドレスを身に纏っている。一目見ただけで他の人とは格が違うのが分かる。
「私のこともどうぞアメリアとお呼びになって」
「………ふ、不敬罪とかには…」
「ふふ、大丈夫よ。そんなことで不敬罪にしないわ。堅苦しい敬語もなしよ。仲良くしましょう、マヒロ」
「はい、いや違う。うんだ」
微笑むアメリアがもうそれは本当に美しくてびっくらこいた。ぼいん令嬢は確か、大帝国一の美女と言われていると言っていたけど、アメリアの方がよっぽどそう呼ばれるに相応しい。
「この世界には慣れたかしら」
「まぁ、ある程度は」
「よかったわ。最初は噂の異世界から来た美人がエーデルワイス大公と結婚するというものだから本当に驚いたのよ」
「そ、そんな驚くことなん?」
アメリアは深く頷きながら無駄のない丁寧な動作で紅茶を淹れ始めた。
レイと結婚することがそんな驚かれることなのか?今年の冬で二十三歳を迎えるレイは、確かにこの世界でいう恋愛適齢期というものをとっくに過ぎてはいるけれど。
「あの美貌に輝かしい経歴、家柄がエーデルワイスときたら放っておく女性たちはいないわ。どの縁談にも全く靡かなかったあのお方が、結婚を決めたなんて。今でも私を含めて半信半疑の御令嬢方が多いのよ。だから、あなたが特別なのかも」
「特別、ね~…」
レイが昔から物凄い量の縁談を申し込まれていたことは既に知っている。あのぼいん令嬢もきっとその一人だ。この大帝国の宝とも言えるハイスペックなレイが誰とも結婚しないせいで一生独身なのでは、とか、インポとか種無しとか言われていることも知ってるし。ちなみに俺はまだ、レイがインポで種無しかもしれないっていうのを疑っているからな。
「特別ってわけでもないなぁ、俺は」
「え、?」
悲しそうに呟いた俺を見て、アメリアは首を傾げる。俺はアメリアから視線を逸らし窓から雪景色を見つめた。しとしと、と音もなく降り積もっていく雪を見て何故か無性に、レイに会いたくなった…。
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