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第5章『自覚した気持ち』
第5話『ディオンの頼みなら聞くよ』
しおりを挟む《MHside》
「私からは、あの日に何があったかは申し上げることはできません」
「うん、」
「旦那様は、エーデルワイス大公家に御誕生になられたときから、病弱であった父君の正妻の子であるという理由で父君にも分家の方々にも大層可愛がられていたそうです。本来であれば長男が家を継ぐのが一般的なのですが、父君は旦那様に家を継がせようと考えていたようで、兄君方からの嫉妬はそれはもう、凄まじかったそうで…。母君もおらず、父君も兄君方の度が過ぎた行動を咎めはせず、旦那様はろくに家族の愛も知らずに育ちました。そして…」
「十五歳の誕生日の日に全ては起きたって?」
俺のその言葉にディオンは重々しく頷いた。唯一の味方のお母さんも亡くなって、レイを守らなければならない立場のお父さんまでもレイには息子としてじゃなくて跡継ぎとして接してた。本来この世界で四男として生まれるということは事実上の用無しだ。だけど、四男でありながら次期当主になったレイにお兄さん方が嫉妬しまくったってことなのか?嫉妬するのは分かるけど、さすがにレイの天才っぷりを前にしたらもうむりむり諦めよーぜとかならなかったんだろうか?俺がレイのお兄ちゃんだったら絶対諦めてる。怖いもん、あんな超人的な弟。
「旦那様は家族の愛というものが分からないのです。奥様を愛することも、ご自身のお子様を愛することも絶対にできないだろうと、思い込んでおられます」
「自分の代でエーデルワイス大公家は滅びる運命って言ってたからな…」
「っ…。そんな、ことまで…」
ディオンは、悲しそうな表情を浮かべて俯いた。レイが家族の愛を知らないから、俺を愛することも、俺との子供を愛することも無理だと思ってることは分かった。
「やはり、奥様しか旦那様の傷を癒すことはできません。そこまで奥様に言っているということは、心を開きかけている証拠です。奥様、お願いです。旦那様のことを救ってください」
深々と頭を下げ心からの頼みをするディオンに歩み寄り、震えるその手をそっと握る。ディオンの頼みなら聞かないわけにはいかないし、そもそも元からそのつもりだった。レイのことを癒すと決めていたし。心の面でも、体の面でも!!!
「レイは、俺が救うよ。昔のことなんてどうでもよくなっちゃうくらい、忘れさせてあげるから」
「奥様…」
「だからさ、ディオン。頭なんて下げんなよ。レイの傷を癒せるのは俺しかいないんだろ?じゃあそれはもう俺の使命だから」
驚いた顔をしているディオンの額に手を近づけ、思いっきり力を込めてデコピンをする。唐突の痛みに悶絶するディオン。
「レイの誕生日はめちゃめちゃ盛大に祝ってやろ!!!」
「な、何故こんなことを…」
「これまでの誕生日を覆すくらい盛大に!!!!!!」
「お、奥様…聞いていますか?」
「ディオン!!!早く帰って計画立てよ!!!!!!」
蹲り額を押さえているディオンの耳元で、大声でそう叫んで、今か今かと待っている馬の背に軽々と乗る。
「ディオン~!!!置いてくぞ~!!!」
「お、お待ちください奥様っ!!!」
「え、待って。なんか急に走り始めたよ!?!?」
合図も出していないのに急に走り始めた暴れん坊のお馬さん。止め方も何もかも知らない俺はただそのままお馬さんの背に全てを託したのだった。
「奥様~!!!!!!!!!!」
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