君の隣は、蛍火と夜

名雪

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お前が笑ってたら

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「蛍火、帰ろうぜ」

「うん……」

今日も二人、同じ道を辿る。俺に恋人がいるっていう誤解は解けても、雰囲気はぎこちないままだ。

「雨だな」

「そうだね」

「傘、入るか?」

「えっ、いいの……?」

「いいに決まってるだろ」

予報では晴れだった。
いつも置き傘してたおかげで、相合傘の口実ができた。

蛍火は、全然意識してないんだろうな。

「なぁ、俺のクラスの山下って、知ってるか?」

「理花さんのこと? 同じ委員会だよ」

「あぁ、そう……」

お前は同じ委員会ってだけで、下の名前を呼ぶのか?
じゃあ俺は、一体お前の何なんだ。

「……理花さんが、どうかしたの?」

「ん、アイツな。お前に用があるって。明日の放課後、体育館裏に来て欲しいらしいぜ」

「用……? 委員会のことかな」

体育館裏なんてベタな場所に呼ばれてるのに、相変わらず鈍い。
そんなとこも好きだけど。

「あー、俺はわかんねーけど。お前に気でもあるんじゃねぇの?」

「理花さんが? それは無いと思うけど……」

やっぱり鈍い。この様子じゃ、俺の気持ちなんて気付くはずもないよな。

……もし明日、山下の告白が上手くいったら。
蛍火と帰るのも、これで最後になるかもしれない。

「蛍火」

「……なに?」

「俺、お前が笑ってたら、嬉しいぜ。幼馴染だからな」

向き直り、言ってやる。

嫉妬とか、寂しさとか、そういうのは全部押し殺した。

しとしとと、雨の音だけが響く。

「……なにそれ。変な一ノ瀬くん」

蛍火は、真顔で返してきた。やっべ、急すぎたか……。

「僕も」

「へっ?」

「僕も、君には笑っていて欲しいよ」

蛍火は、そう言った。その顔は何故か、少し寂しそうな微笑みで。

久しぶりに、幼馴染の本当の顔を見た気がした。
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