5 / 9
5話
しおりを挟む
ダンスの間、男はずっとソフィーの顔から目を離さなかった。
「そんなに見られていては落ち着きませんわ」
ぎこちないステップでつまずいてしまった。
「貴方は私と目が合うのを避けているようだ」
まさに図星だった。
ソフィーは彼を見上げた。鮮やかなブルーの瞳が愉しげに細くなった。ソフィーの顔が真っ赤になった。
「何かお話してくださらないの?」
気まずくてごまかした。
「言いたいことはあります」
「何でしょう?」
「もう二度とこのドレスを着てはいけない」
ソフィーは小さく声を出して笑った。
「ええ、そのつもりです!」
「貴方も何か話してください」
促されて、ソフィーはしばらく考えた。
「スミスさんは、権力者のお知り合いもいるそうです。あの様な態度で大丈夫だったのですか?」
男が首を傾けた。
「レディ、私はそんなに頼りなく見えますか?」
冗談めかして彼は言った。
「私は貴方のこと、何も知りませんもの」
ソフィーは足元に視線を落とした。
ソフィーの背に触れる男の手がこわばった。
「失礼しました。⋯⋯私はライアン・カッセルといいます。ノース伯爵家の次男です」
「ハワード男爵の娘のソフィーです」
聞いたことのない名前だった。爵位のある家は何百もあるので、別に不思議でもない。
ライアンはどこで私を知ったのだろう。とりたてて目立つ存在でもないのに。
ライアンはとてもダンスの上手な人だった。ソフィーは彼の洗練されたリードに身を任せて、夢見心地で踊った。
何曲も共に踊った。
気づくと最後の演奏が終わっていた。ぴったり寄り添っているのはもうソフィー達だけだった。
周りからの好奇の目に、ソフィーは慌ててライアンから離れた。
舞踏会の帰り、ライアンはソフィーを馬車までエスコートした。きっとスミスを警戒してだろう。
ソフィーは馬車を目の前にして、歩調を緩めた。まだ離れたくなかった。これで最後なのだろうか。
立ち止まったライアンがソフィーの頬にためらいながらそっと触れた。
ソフィーは目を見開いた。
「私達、まだ初対面ですわ」
か細い声しか出てこない。ライアンは短く笑った。
ライアンは視線を僅かにさまよわせた後、すらりとした体をまっすぐに伸ばした。
「ソフィー、また会ってくれますか?」
ソフィーは無意識に頷いていた。
「そんなに見られていては落ち着きませんわ」
ぎこちないステップでつまずいてしまった。
「貴方は私と目が合うのを避けているようだ」
まさに図星だった。
ソフィーは彼を見上げた。鮮やかなブルーの瞳が愉しげに細くなった。ソフィーの顔が真っ赤になった。
「何かお話してくださらないの?」
気まずくてごまかした。
「言いたいことはあります」
「何でしょう?」
「もう二度とこのドレスを着てはいけない」
ソフィーは小さく声を出して笑った。
「ええ、そのつもりです!」
「貴方も何か話してください」
促されて、ソフィーはしばらく考えた。
「スミスさんは、権力者のお知り合いもいるそうです。あの様な態度で大丈夫だったのですか?」
男が首を傾けた。
「レディ、私はそんなに頼りなく見えますか?」
冗談めかして彼は言った。
「私は貴方のこと、何も知りませんもの」
ソフィーは足元に視線を落とした。
ソフィーの背に触れる男の手がこわばった。
「失礼しました。⋯⋯私はライアン・カッセルといいます。ノース伯爵家の次男です」
「ハワード男爵の娘のソフィーです」
聞いたことのない名前だった。爵位のある家は何百もあるので、別に不思議でもない。
ライアンはどこで私を知ったのだろう。とりたてて目立つ存在でもないのに。
ライアンはとてもダンスの上手な人だった。ソフィーは彼の洗練されたリードに身を任せて、夢見心地で踊った。
何曲も共に踊った。
気づくと最後の演奏が終わっていた。ぴったり寄り添っているのはもうソフィー達だけだった。
周りからの好奇の目に、ソフィーは慌ててライアンから離れた。
舞踏会の帰り、ライアンはソフィーを馬車までエスコートした。きっとスミスを警戒してだろう。
ソフィーは馬車を目の前にして、歩調を緩めた。まだ離れたくなかった。これで最後なのだろうか。
立ち止まったライアンがソフィーの頬にためらいながらそっと触れた。
ソフィーは目を見開いた。
「私達、まだ初対面ですわ」
か細い声しか出てこない。ライアンは短く笑った。
ライアンは視線を僅かにさまよわせた後、すらりとした体をまっすぐに伸ばした。
「ソフィー、また会ってくれますか?」
ソフィーは無意識に頷いていた。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】その令嬢は、鬼神と呼ばれて微笑んだ
やまぐちこはる
恋愛
マリエンザ・ムリエルガ辺境伯令嬢は王命により結ばれた婚約者ツィータードに恋い焦がれるあまり、言いたいこともろくに言えず、おどおどと顔色を伺ってしまうほど。ある時、愛してやまない婚約者が別の令嬢といる姿を見、ふたりに親密な噂があると耳にしたことで深く傷ついて領地へと逃げ戻る。しかし家族と、幼少から彼女を見守る使用人たちに迎えられ、心が落ち着いてくると本来の自分らしさを取り戻していった。それは自信に溢れ、辺境伯家ならではの強さを持つ、令嬢としては規格外の姿。
素顔のマリエンザを見たツィータードとは関係が変わっていくが、ツィータードに想いを寄せ、侯爵夫人を夢みる男爵令嬢が稚拙な策を企てる。
※2022/3/20マリエンザの父の名を混同しており、訂正致しました。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
本編は37話で完結、毎日8時更新です。
お楽しみいただけたらうれしいです。
よろしくお願いいたします。
お金に目の眩んだ最低な婚約者サマ。次は50年後にお会いしましょう
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
《魔法を使う》と言われる商会の一人娘アイラは幼馴染の婚約者エイデンの裏切りを知る。
それをエイデンの父母も認めていることも。
許せるはずはない!頭にきたアイラのとった行動は?
ざまあが書きたかったので書いてみたお話です。
婚約者の私より彼女のことが好きなのですね? なら、別れて差し上げますよ
四季
恋愛
それなりに資産のある家に生まれた一人娘リーネリア・フリューゲルには婚約者がいる。
その婚約者というのが、母親の友人の息子であるダイス・カイン。
容姿端麗な彼だが、認識が少々甘いところがあって、問題が多く……。
どうぞお好きになさってください
はなまる
恋愛
ミュリアンナ・ベネットは20歳。母は隣国のフューデン辺境伯の娘でミュリアンナは私生児。母は再婚してシガレス国のベネット辺境伯に嫁いだ。
兄がふたりいてとてもかわいがってくれた。そのベネット辺境伯の窮地を救うための婚約、結婚だった。相手はアッシュ・レーヴェン。女遊びの激しい男だった。レーヴェン公爵は結婚相手のいない息子の相手にミュリアンナを選んだのだ。
結婚生活は2年目で最悪。でも、白い結婚の約束は取り付けたし、まだ令息なので大した仕事もない。1年目は社交もしたが2年目からは年の半分はベネット辺境伯領に帰っていた。
だが王女リベラが国に帰って来て夫アッシュの状況は変わって行くことに。
そんな時ミュリアンナはルカが好きだと再認識するが過去に取り返しのつかない失態をしている事を思い出して。
なのにやたらに兄の友人であるルカ・マクファーレン公爵令息が自分に構って来て。
どうして?
個人の勝手な創作の世界です。誤字脱字あると思います、お見苦しい点もありますがどうぞご理解お願いします。必ず最終話まで書きますので最期までよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる