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5話

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陽が落ち墓場が暗闇に包まれる。

土から這い出したムクロは以前生活してた街を見上げ背を向け北の森を目指す。

召喚されてからお世話になった街、街の人たちとは友好関係を築き上げていたと思う。

うまいに露天の屋台の食べ物に下町にあるような大衆酒場食欲の沸かない自分にはもう願わない夢である。

残念でならない。

そしてあの街で忘れてはならない出来事。

逆恨みによる突然の死、ギルドや貴族からの理不尽な抑圧。

まるで召喚前の踏ん反り返った議員や無能な上司を見ているようだった。

せっかく一度死んで人ではなくなった。

これまでの溜まっていた鬱憤を晴らさせていただこう。死霊術で使役した屍を従え夜の森をひたすら奥へ奥へ進んでいく。

途中ゴブリンや小動物を殺しそのアンデッドは増えていく。

以前のようにムクロは隠れてコソコソ指揮をしなかった使役した。

アンデッドの中心で指揮を行い死にかけのモンスターには自らナイフでトドメを刺すこともあった。

そしてその場で死霊術をかける。

返り血を浴びても特に動揺もなく姿だけでなく精神までも変化していることを確認した。

以前は画面のみアンデッドを指揮していたせいでゲーム感覚で行なっていたが、今は目の前で指揮をしている。

相手を屠るときの達成感は格別だ。

本来ならば指揮官が危険な前線に立つなど問題だが、今はこのスリルを抑えることができないムクロであった。

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