骸の王~異世界勇者召喚に巻き込まれました。骸を使ってしたたかに生きていきます。

パブロフ

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4章

114話

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神城一家がアルカディアに引っ越して来てから早1週間。

本日、一郎は鼻歌交じりで傭兵ギルドの狩猟依頼を実行していた。

内容はアルカディア南西に位置する水辺周辺のモンスターの狩猟。

上流のアルカディアの湖から魔力の含んだ水が流れている為、魔法に親和性の高い個体多く生息する。

街道からも比較的距離が近い為、国にとって脅威の排除と素材販売による収益に繋がる一石二鳥の依頼である。

モンスターの輸送手段と戦闘能力の高さを併せ持つ、中堅以上の傭兵達にとって人気の依頼であった。

最近は遺跡から出てくる古代語の翻訳は神城が手伝ってくれている。

ジャンヌにそのことを話すと、さっそく好条件で国お抱えの技術員に勧誘すると言っていた。

一郎にとって拘束される時間がなくなった為、本業の傭兵家業に従事する。

最近はストレスのたまる出来事が多かったので憂さ晴らしの意味を込めて、意欲的にモンスターを殲滅していく。

「よし指向性箱爆弾「クレイモア」の威力は上々だな」

今回の依頼はより効率よくモンスターを倒す為の新兵器の実戦テストも兼ねていた。

お弁当箱程大きさの湾曲した箱の下に鉄板を敷きその上に板状にしたミニボムを詰めさらにその上に鉄球を敷き詰める。

起爆すると無数の鉄球が広範囲に渡り高速で飛んでいく。

本来は地面に設置し、陣地防衛に活躍する地雷である。

しかし、今回は森の中を移動しながら戦う為、思いつきでバックラーにくくりつけて運用している。

使う度に爆発の反動でスケルトンの腕が衝撃で粉々になったが、効果は絶大であった。

至近距離で食らえば盆地周辺の小型の狼系の獣は見るも無残な肉の破片に変わる。

今後のさらなる改善が必要になるが、兵士の数が少ない現状では防衛兵器として使えるだろう。

次に一郎は遺跡の技術を用いた兵器の実用試験を行う。

先端が二股に分かれた短槍である。

本来の槍は重量を軽くする為、攻撃する穂先と石突きが金属製でその他は軽い木材で制作されるのが一般的なのだか、この短槍は金属でコーティングされており。その表面には古代語が刻まれていた。

そして所々に加工された小さな魔石が埋め込まれている。

魔石を用いたアルカディア産の魔導武器である。

短槍持たせたブラッドスケルトンを5体ほど目的地に進軍させる。

装備は機動性重視で単走以外には滑りどめ用の厚手のゴム手袋を装備させた。

相手は硬い甲羅と分厚い外皮に覆われたクロコダイルタートルである。

アルカディアの湖にいた主よりは遥かに小さいが、全長約3メートル。

盆地周辺にある沼地に生息している。

街道に出て来た報告は未だ無いが、数が増えるといつ活動範囲を広げるかわからない。

目的に着くとクロコダイルタートルは隠れることもせず水際で甲羅干しをしていた。

さながら水辺の主である。

一郎はニヤリと笑い、ブラッドスケルトンに多方向からの突撃を命じる。

ブラッドスケルトン達は槍を構えて攻撃を仕掛けた。

目の前のブラッドスケルトンはクロコダイルタートルの噛み砕かれ、その他の攻撃も甲羅や外皮に弾かれる。

運良く一体のブラッドスケルトンの攻撃が、クロコダイルタートルの関節の隙に浅く刺さった。

次の瞬間槍についた魔石が輝き出し、刺さった槍の先に電流が走る。クロコダイルタートルは口を開け動きを止めた。

その隙に他の他のブラッドスケルトンは口の中に短槍を突き刺す。

クロコダイルタートルはなんとも痙攣したのち、動かなくなった。

「まぁ成功かな?」

クロコダイルタートルは内部に流れる魔法攻撃は有効であった。

今回使っ二股の短槍は刺さると雷魔法が先端に付与される魔導武器である。

最大の特徴は魔石から魔力を供給する為、魔力がなくても、魔法が使える点である。

そして刺さりさえすれば、どんなに傷が浅くても内部にダメージを与える。

出力は未だ不安定なのが課題だが、安定して生産出来ればアルカディアの軍事力はさらに向上するだろう。

一郎はクロコダイルタートルの死体をマジックバックに入れながらアルカディアに戻る。

傭兵ギルドにモンスターの討伐した素材の山を渡すと、職員は冷や汗をかいていた。

「状態の悪いものは報酬は低くなりますが、それでも依頼金はすごいことになりそうですね」

「それは良かった。では、報酬の半分は難民と孤児院の運転資金に寄付しておいてください」

一郎にとっていまや報酬の額はあまり興味がなかった。

アルビーの経営手腕により、今の資産で遊んで暮らせるほどある。

他の傭兵の手前、無報酬で行うと経済バランスが崩れる為、正当な値段で受けるが、その一部分は国に寄付していた。

自分が溜め込むよりも拠点となっている。アルカディアの資金が上がったほうが何かと都合が良い。

その後、一郎は屋敷の近くひっそりと佇む酒場でバーテンダーを行う。

内装は落ち着いているが最新の魔道具を用いた照明や精巧な細工が施された調度品が置いてある。

酒場の周りには何重にも張り巡らされた防衛装置があり、その厳重さはアルカディア1とも言われている。

以前、お偉いさん達が一挙に集まりビアーズの酒場が大変なことになった為の対策であった。

一階は一般の客も使用できるが、二階部分は許された人物しか入ることができなかった。

そんな2階のカウンターで一郎はグラスを拭いていると、いつもの客と見慣れぬ客がやって来た。

「いらっしゃいませ。エレナさんと其方はどなたでしょうか?」

裕福そうなスーツに身を包んだ若いの男性が深々とお辞儀をし口を開く。

「私はセントフリーで都市運営に携わっているヴィンセントと申します」

この後、ヴィンセントから思わぬ相談を受ける一郎であった。
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