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4章
113話
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一夜明け一郎たちと神城達は火災後の片付けを終え、セントフリーの商人ギルドに足を運んだ。
「ではあそこの土地は売却でいいんですね」
「そうじゃな...これ以上周りの人に迷惑をかけるわけにも行かないのでな」
ひどく疲れた顔をした老人は呟く様に話す。
土地は裏通りの更地の為余り良い値では売れなかったが、当面の生活には困らないそうだ。
胸糞の悪い結果になったが、死傷者が出なかったことは幸いである。
「さてまた食い扶持稼ぐ為に傭兵でも再開するかな?」
つぶやく神城に一郎は提案を持ちかけた。
「もしよかったら私がいる国に行きませんか?おそらくそちらの方が安全かと…。仕事の斡旋なら手伝わせていただきます」
セントフリーは禿げ上がった中年男の組織がある街である。
いつまた襲ってくるかわからない。
神城一人でこの一家を守ることは難しいだろう。
「すまない…素直に甘えさせてもらう」
燃え後から使えるものを取り出し、一同はセントフリーを後にする。
正門近くにはあの憎たらしい禿げ上がった中年の男がニヤニヤしながら見ていたが今は甘んじて受けよう。
しかし、悪行の代価はいずれ払って貰おうと一郎は心に刻む。
その後一同はセントフリー北の森に向かって移動する。
「あれ?一郎さん方向が違うのでは無いのでしょうか?」
「ええ空路しで行く為、人目につかないところに移動しています。
すぐそこの森までなので安心してください」
神城一同は疑問を抱いていた。陸路で行くのであれば南の砦の方向が正しいからだ。
この世界では空からの移動手段は無いに等しい。
一郎はいつも使っている森の開けた場所で、大量の骨を取り出し骨のドラゴンを召喚する。
神城一同呆気に取られていたが、一郎は黙々と人を乗せる準備を済ませていく。
索敵で飛ばしていた鳥から悪い情報が届いているからだ。
輩の集団と思われる反応が、セントフリーの入り口に増えていた。
その数約100人、正面からくるのであれば負ける気はしないが、相手にしたところで今は何の利益も生まれない。
守るべき相手がいる為、下手な衝突はこちらに思わぬ損害が増える可能性がある。
ここは大人しく戦略的撤退がもっとも有効である。
「それでは輩に絡まれる前に移動しましょう」
一郎は幻術の杖でカモフラージュを行い、骨のドラゴンで静かにアルカディア方面に向けて飛び立つ。
輩の一団は一郎達がいた森に迫っていたが衝突は避けることができた。
「風の噂で聞いたのは本当だったんだな…」
神城が骨のドラゴンの上で呟く。
詳しく聞くとドラゴンを使役する魔法使いの情報はセントフリーで流れていたそうだ。
しかし、それが誰なのかはわかっていないらしい。
一郎にとって骨のドラゴンは先頭火力ではなくもっぱら移動手段だったので公表していなかった。
既に情報が出回っているのであれば今後の傭兵家業の為に公表してもいいかもしれない。
そんなことを考えているとしばらくしてアルカディアのある。盆地が見えてくる。
早速一郎はアルカディアの屋敷内の敷地に降り立つ。
そして、そこで待っていたのかアルビーと練金術の職員が数名。
職員の一人は書類の山を持っている。
「そういえば、仕事ぬけだしてきて飲みにいってました…」
職員の満面の笑みがある意味恐ろしい。
「一郎さんお帰りなさい。色々あって大変だったでしょう。
神城さん達もお疲れの様子ですから今後の事も含めて少しお茶でもしましょうか?」
さて、この後に事情説明とお説教があると思うと気が重いが、逃げる事は出来そうもない。
「あっこれ落としましたよ。魔力変換と熱量の関係ですか…難しそうな内容だな」
何気なく拾い上げてた神城が意外な発言をした。
それを聞いた一郎は神城の両肩を掴む。
「もしかして先ほどの文章読めました?」
「あぁ…読むだけなら内容はさっぱりだけどな」
苦笑いする神城をよそに、翻訳の救世主が来たと喜ぶ一郎であった。
「ではあそこの土地は売却でいいんですね」
「そうじゃな...これ以上周りの人に迷惑をかけるわけにも行かないのでな」
ひどく疲れた顔をした老人は呟く様に話す。
土地は裏通りの更地の為余り良い値では売れなかったが、当面の生活には困らないそうだ。
胸糞の悪い結果になったが、死傷者が出なかったことは幸いである。
「さてまた食い扶持稼ぐ為に傭兵でも再開するかな?」
つぶやく神城に一郎は提案を持ちかけた。
「もしよかったら私がいる国に行きませんか?おそらくそちらの方が安全かと…。仕事の斡旋なら手伝わせていただきます」
セントフリーは禿げ上がった中年男の組織がある街である。
いつまた襲ってくるかわからない。
神城一人でこの一家を守ることは難しいだろう。
「すまない…素直に甘えさせてもらう」
燃え後から使えるものを取り出し、一同はセントフリーを後にする。
正門近くにはあの憎たらしい禿げ上がった中年の男がニヤニヤしながら見ていたが今は甘んじて受けよう。
しかし、悪行の代価はいずれ払って貰おうと一郎は心に刻む。
その後一同はセントフリー北の森に向かって移動する。
「あれ?一郎さん方向が違うのでは無いのでしょうか?」
「ええ空路しで行く為、人目につかないところに移動しています。
すぐそこの森までなので安心してください」
神城一同は疑問を抱いていた。陸路で行くのであれば南の砦の方向が正しいからだ。
この世界では空からの移動手段は無いに等しい。
一郎はいつも使っている森の開けた場所で、大量の骨を取り出し骨のドラゴンを召喚する。
神城一同呆気に取られていたが、一郎は黙々と人を乗せる準備を済ませていく。
索敵で飛ばしていた鳥から悪い情報が届いているからだ。
輩の集団と思われる反応が、セントフリーの入り口に増えていた。
その数約100人、正面からくるのであれば負ける気はしないが、相手にしたところで今は何の利益も生まれない。
守るべき相手がいる為、下手な衝突はこちらに思わぬ損害が増える可能性がある。
ここは大人しく戦略的撤退がもっとも有効である。
「それでは輩に絡まれる前に移動しましょう」
一郎は幻術の杖でカモフラージュを行い、骨のドラゴンで静かにアルカディア方面に向けて飛び立つ。
輩の一団は一郎達がいた森に迫っていたが衝突は避けることができた。
「風の噂で聞いたのは本当だったんだな…」
神城が骨のドラゴンの上で呟く。
詳しく聞くとドラゴンを使役する魔法使いの情報はセントフリーで流れていたそうだ。
しかし、それが誰なのかはわかっていないらしい。
一郎にとって骨のドラゴンは先頭火力ではなくもっぱら移動手段だったので公表していなかった。
既に情報が出回っているのであれば今後の傭兵家業の為に公表してもいいかもしれない。
そんなことを考えているとしばらくしてアルカディアのある。盆地が見えてくる。
早速一郎はアルカディアの屋敷内の敷地に降り立つ。
そして、そこで待っていたのかアルビーと練金術の職員が数名。
職員の一人は書類の山を持っている。
「そういえば、仕事ぬけだしてきて飲みにいってました…」
職員の満面の笑みがある意味恐ろしい。
「一郎さんお帰りなさい。色々あって大変だったでしょう。
神城さん達もお疲れの様子ですから今後の事も含めて少しお茶でもしましょうか?」
さて、この後に事情説明とお説教があると思うと気が重いが、逃げる事は出来そうもない。
「あっこれ落としましたよ。魔力変換と熱量の関係ですか…難しそうな内容だな」
何気なく拾い上げてた神城が意外な発言をした。
それを聞いた一郎は神城の両肩を掴む。
「もしかして先ほどの文章読めました?」
「あぁ…読むだけなら内容はさっぱりだけどな」
苦笑いする神城をよそに、翻訳の救世主が来たと喜ぶ一郎であった。
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