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1章

25話

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セントロイス宣戦布告の噂から1年がたった。

一郎達はその後も優秀な傭兵や職人を引き抜いていった。

以前にお世話になったと魔法道具屋の店主を始め一郎ゆかりのある人々も移住済みである。

今ではリバーウッドにできた新しい商業地域で活躍してもらっている。

屋台で販売されていた肉と野菜の包み焼きはこちらに来ても大繁盛であり、一郎もマジックバッグに常時ストックしているお気に入りである。

今も買ったばかりの屋台の包み焼きをほうばりながら街を歩いていると、遠くから見慣れた女性が走って来た。

ミアである。

彼女は肩で息をしながらしゃべり始めた。

「一郎ついにセントロイス王国の貴族と教会が攻めて来ます!」

セントロイスの本国から教会騎士団と名乗る一団が到着しこの街を攻めるとのことらしい。

規模は200人程らしいがおそらく先発隊であろう。

本体がどの位いるか不明だが早速、戦争の準備を始める。

以前から攻めて来ることがわかっていたのでそれに対しての対抗する為に準備を進めていた。

一つ目は装備の向上、スケルトン部隊は基本今まで倒したモンスターが持っていた武器をそのまま使っていたが、攻撃の範囲と威力が安定しない為装備を均一化した。

一郎が召喚したスケルトンの兵は基本のスケルトンゴブリンからなる槍兵、弓兵、 ブラックスケルトンからなる重歩兵、レッドスケルトンからなる強襲兵である。 

一郎自身も杖は初心者用ではなく闇魔法と相性の魔物の骨を加工して作られた骸の杖はめ込まれている魔石には魔力の蓄積ができる優れものである。

またセントルイスとの戦争を踏まえ新しいデザインの仮面を用意した。

今回のデザインは雄羊の頭蓋骨を模している。

特殊効果は鑑定改ざん。これを被っている間、鑑定をかけられるとステータスがこちらが決めた偽りの情報が出ることになる。

内容は、
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名前 ムクロ
種族 不明
状態 健康
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もちろん普段はつけずに戦っているのだが、今回はこの異様な仮面が役に立つ。

一郎は村長に作戦を報告し食料を大量に買い込み、リバーウッドを後にする。

今回の作戦は全面戦争前の相手戦力の威力偵察である。あわよくばなるべく相手戦力を削りたいと考えていた。

リバーウッドからしばらく離れてから早速マジックバッグからとあるものを取り出す。祭りでよく担がれる神輿に似た代物である。人が担ぐことのできる土台の上にソファーがある。

ブラッドスケルトンを20体ほど召喚し、一郎は新しいフルフェイスの仮面と防寒用のローブを羽織りソファーに座り指揮をする。

ブラッドスケルトンは一斉に土台を担ぎ高速で走りだす。

不眠不休で高速で走ることのできるスケルトン飛脚の完成である。

そのスピードは馬の如し、揺れもほとんどなく快適である。軽量化のため最低限のソファーしかないが視界が開ける天候が良ければ快適である。

そしてその不眠不休で移動する飛脚は徒歩で1週間かかる距離を2日で走破可能である。

しかし知らない人が見たら異様な光景な為、一郎は普段街中では使わなかった。

途中に通る砦で下準備を行う。相手をおびき出す為の策略である。

そして街に着くとあの忌々しい傭兵ギルドに駆け込む。

「一大事だ。至急この街の傭兵ギルドに依頼をしたいギルド長に引き継いでくれないか?」

一郎は昔の装備に戻した格好でカウンタの職員に頼み込む。

ほどなくして忘れもしないギルド長と対面を果たす。

「おや一郎くんそんなに慌ててどうしたんですか?」

「実は、モハべ共和国とセントロイス王国の間にあった砦に正体不明のアンデッドモンスターが現れまして、その討伐の依頼したくてここに来ました」

「それならばあなたが討伐すればいいのでは、あいにくこちらも暇ではないのでね」ギルド長は見下すような目で返答する。

「私のスケルトンでは全く歯が立たず逃げ帰って来ました。
砦を占拠しているアンデッドもスケルトンの大群を召喚して来ます。
このままでは両国に多大な被害を受けるかもしれません。
是非とも依頼したいのですが・・・お金ならここにあります」

一郎は金貨の入った袋を取り出し、土下座する。

ギルド長は鼻で笑った後、皮肉交じり言い放つ

「はっ勝手に飛び出した傭兵は惨めですね。
まぁこの金貨は前金として受け取り依頼を出しておきましょう」

頭を伏せた一郎の口が思わずにやける。
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