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6 あら嫌だ、信じて下さらないなんて
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「私の月光の君! やっとお会いする事が出来た!! 再び貴女と会う日を、どれほど心待ちにしていた事か」
無事にエリック様との婚約を解消でき、晴れ晴れとした気分で迎えた初めての夜会で、昔からのご友人達と談笑しておりましたのに。
「ごきげんよう、エリック様。何かご用でしょうか?」
空気もタイミングも読まないエリック様が私達の輪に突如割り込んで来られて、折角の楽しい気分が台無しですわ。
ご友人の御令嬢達も不躾なエリック様の登場に眉を顰めておられるのがお分かりにならないのかしら?
皆様のシラケた視線なんて感じないのか、はたまた見えていらっしゃらないのか、徐に片膝を突いたエリック様が芝居がかった仕草で私に手を差し伸べて来られた。
「貴女の為に、婚約を解消して参りました。これで、私は堂々と貴女にこの胸の内を打ち明ける事が出来る。月光の君よ、一目貴女を見た瞬間から私の心は貴女に囚われてしまいました。どうかお願いです。私の妻となり、この私に貴女の為に一生を捧げる事をお許し頂けないでしょうか」
「お断り致しますわ」
「え?」
そんなに私が即答でお断りしたのが信じられないのですの?
鳩が豆鉄砲を食らったかの様な顔で、私を凝視されてますけど、まさか了承されると思ってらしたの? 信じられませんわ。
「そもそも出来ませんわよ? つい先日、私とエリック様は婚約を解消したばかりではございませんか。一度婚約を解消したからには、簡単に縁を結び直す事が出来ないのをご存じ無いのですか?」
「な……なにを言って……。それは、マリサ嬢との話で……貴女とは関係のない話……」
「だから、私がそのマリサですわ。元エリック様の婚約者のマリサ・ロメーヌ・デシャネルだと、申しておりますの。いくら私に興味が無いからと言って、婚約者を婚約者と気付かずに求婚されるだなんて、私ビックリいたしましたのよ?」
「い、いやいや。……なぜ、そんな嘘を……。だ、だって、あの女と貴女では全然違うじゃないですか。は、ははは、貴女がそんな冗談を仰るなんて……」
あら嫌だ、信じて下さらないなんて。
「え? ご自分の元婚約者のお顔もご存知ないんですの?」
「しかも、あの女ですって……元とはいえ婚約者に、なんて粗暴な。怖いわ」
「マリサ様、大丈夫ですか? お父様を呼んで参りましょうか?」
「以前から失礼な方だとは思っておりましたが、ここまでとは……」
ご友人の皆様が口々にエリック様を非難され、信じられない物を見る目で見てらっしゃいますけど、そうですわよね。普通、分からないなんてあり得ないですものね。
でも、それも無理からぬ事かしら。
「エリック様がお化粧はファンデーションと口紅以外はお認めにならなかったでしょ? 地味な私がベタベタ塗った所でみっともないだけだって仰って。だからエリック様とお会いする時はほとんどお化粧しておりませんでしたの……なのに、化粧も覚えず恥ずかしいだなんて、酷いじゃありませんか」
「え……な、な。わ、私は、そんな事」
「仰いましたわよ」
今更、無かった事にしないで下さいまし? 屈辱的な事って、言われた方はしっかりと覚えておりますものよ。
「体つきだって! 全然違うじゃないか! あの女は女性らしい曲線もない寸胴なスタイルで、自堕落な生活が見て取れる見た目なんですよ!」
「エリック様が数回贈って下さったドレスがございましたでしょ? エリック様いわく堅苦しくて地味な、あのドレスですわ。あのドレス、全て胸の部分が窮屈でしたのよ。それなのにウエストの部分がガバガバで、着るのに大変苦労致しましたの。コルセットでウエストでなく胸を締め付けて……今思い出しても辛かったですわ。だから、あのようなストレートな体型の方がお好みなのかと思っておりましたけど、違いましたの?」
私のドレスの胸元から覗くふくよかな丸みを不躾にも直視されながら、なんて事を口にされるのかしら。品性を疑いますわ。
普通、女性にドレスを贈る時はサイズをキチンと確認されるか、縫製人を寄越して作らせるのが常ですのにそれもせず、ましてやサイズが合っていない物を贈るなど紳士として言語道断。
誰かの為に作ったドレスを別の誰かに間違えて贈った、と取られても致し方ないほどあり得ない事ですわ。
私の嫌みを乗せた指摘に顔を真っ赤に染めたエリック様が「ちがっ、ちが」と仰ってますけど。でしたら、あのドレスはなんだったのかしら?
無事にエリック様との婚約を解消でき、晴れ晴れとした気分で迎えた初めての夜会で、昔からのご友人達と談笑しておりましたのに。
「ごきげんよう、エリック様。何かご用でしょうか?」
空気もタイミングも読まないエリック様が私達の輪に突如割り込んで来られて、折角の楽しい気分が台無しですわ。
ご友人の御令嬢達も不躾なエリック様の登場に眉を顰めておられるのがお分かりにならないのかしら?
皆様のシラケた視線なんて感じないのか、はたまた見えていらっしゃらないのか、徐に片膝を突いたエリック様が芝居がかった仕草で私に手を差し伸べて来られた。
「貴女の為に、婚約を解消して参りました。これで、私は堂々と貴女にこの胸の内を打ち明ける事が出来る。月光の君よ、一目貴女を見た瞬間から私の心は貴女に囚われてしまいました。どうかお願いです。私の妻となり、この私に貴女の為に一生を捧げる事をお許し頂けないでしょうか」
「お断り致しますわ」
「え?」
そんなに私が即答でお断りしたのが信じられないのですの?
鳩が豆鉄砲を食らったかの様な顔で、私を凝視されてますけど、まさか了承されると思ってらしたの? 信じられませんわ。
「そもそも出来ませんわよ? つい先日、私とエリック様は婚約を解消したばかりではございませんか。一度婚約を解消したからには、簡単に縁を結び直す事が出来ないのをご存じ無いのですか?」
「な……なにを言って……。それは、マリサ嬢との話で……貴女とは関係のない話……」
「だから、私がそのマリサですわ。元エリック様の婚約者のマリサ・ロメーヌ・デシャネルだと、申しておりますの。いくら私に興味が無いからと言って、婚約者を婚約者と気付かずに求婚されるだなんて、私ビックリいたしましたのよ?」
「い、いやいや。……なぜ、そんな嘘を……。だ、だって、あの女と貴女では全然違うじゃないですか。は、ははは、貴女がそんな冗談を仰るなんて……」
あら嫌だ、信じて下さらないなんて。
「え? ご自分の元婚約者のお顔もご存知ないんですの?」
「しかも、あの女ですって……元とはいえ婚約者に、なんて粗暴な。怖いわ」
「マリサ様、大丈夫ですか? お父様を呼んで参りましょうか?」
「以前から失礼な方だとは思っておりましたが、ここまでとは……」
ご友人の皆様が口々にエリック様を非難され、信じられない物を見る目で見てらっしゃいますけど、そうですわよね。普通、分からないなんてあり得ないですものね。
でも、それも無理からぬ事かしら。
「エリック様がお化粧はファンデーションと口紅以外はお認めにならなかったでしょ? 地味な私がベタベタ塗った所でみっともないだけだって仰って。だからエリック様とお会いする時はほとんどお化粧しておりませんでしたの……なのに、化粧も覚えず恥ずかしいだなんて、酷いじゃありませんか」
「え……な、な。わ、私は、そんな事」
「仰いましたわよ」
今更、無かった事にしないで下さいまし? 屈辱的な事って、言われた方はしっかりと覚えておりますものよ。
「体つきだって! 全然違うじゃないか! あの女は女性らしい曲線もない寸胴なスタイルで、自堕落な生活が見て取れる見た目なんですよ!」
「エリック様が数回贈って下さったドレスがございましたでしょ? エリック様いわく堅苦しくて地味な、あのドレスですわ。あのドレス、全て胸の部分が窮屈でしたのよ。それなのにウエストの部分がガバガバで、着るのに大変苦労致しましたの。コルセットでウエストでなく胸を締め付けて……今思い出しても辛かったですわ。だから、あのようなストレートな体型の方がお好みなのかと思っておりましたけど、違いましたの?」
私のドレスの胸元から覗くふくよかな丸みを不躾にも直視されながら、なんて事を口にされるのかしら。品性を疑いますわ。
普通、女性にドレスを贈る時はサイズをキチンと確認されるか、縫製人を寄越して作らせるのが常ですのにそれもせず、ましてやサイズが合っていない物を贈るなど紳士として言語道断。
誰かの為に作ったドレスを別の誰かに間違えて贈った、と取られても致し方ないほどあり得ない事ですわ。
私の嫌みを乗せた指摘に顔を真っ赤に染めたエリック様が「ちがっ、ちが」と仰ってますけど。でしたら、あのドレスはなんだったのかしら?
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