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7 あら、遂に私がマリサだとお認めになられました?

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「ほ、本当に? 本当にマリサ、なのか? そんなに美しかったなんて、そんな……言ってくれれば……。ド、ドレスだって、あ、合わないなら。い……言って、くれれば、良かったじゃな、いか……」

 あら、遂に私がマリサだとお認めになられました?
 ヘラヘラと締まりのない誤魔化し笑いと、言い訳にもならない言い訳を述べられて、この方は誠意と言う物を持ち合わせておられないのかしら。
 しかも、言えと仰られても、ねぇ?

「私が喋ると嫌な顔をされて、自分の許可なく喋るな、と怒られるじゃございませんか。それでも一度、それとなくサイズが合わない、とお伝えした事がありますのよ? その時、エリック様は、貰っておいて図々しい事を言うな、と……。サイズが合わないのは私の努力が足りないのだからドレスに合う体型になる様に努めようとは思わないのか、と。そう仰ったのですが、お忘れですの?」

 あんな体型になれ、なんて随分ご無体な事を仰るものだと大層呆れたのを覚えておりますわ。

 今になってご自分の発言を思い出されたのか、真っ赤だったお顔を真っ青に変えられたエリック様が、ダラダラと汗を掻きながら忙しなく目線をあちらこちらに走らせて、何やら一生懸命お考え中のご様子。

「な、何か、色々と行き違いがあったようだ。今度、縫製人と宝石商を連れて君の屋敷へ伺うよ。今までの誤解のお詫びに、君に似合う最高級のドレスと宝石を贈らせてくれ」

 あら、行き違いに誤解、という事にしようと言う事かしら?
 あれだけ考えた結果が、こんな幼稚なものだなんて、がっかりですわ。
 それに、考えが甘いです!

「あら! それはいけませんわエリック様!」
「な、なぜ? 私は、マリサの為なら贈り物に糸目は付けないよ? 欲しい物があるのなら遠慮なく言ってくれ」
「何を仰ってるのですか、エリック様。ミュラトール伯爵家では贈り物をするのは非常識なのでございましょう?」
「え?」
「以前、仰っていたではありませんか。贈り物をするのは相手の気を引こうする行為で浅ましい、と。私、いくら政略結婚とはいえ、それなりに誠意ある対応をするのは人として貴族として最低限のマナーだと思っておりましたの。ですから、毎年のお誕生日や季節の行事でのご挨拶や贈り物は欠かさず送って参りましたし、卒業や昇級など何か祝い事があれば、そちらもお祝いの品を送っておりました。でも、それが浅ましい行動だなんて思わなくって、お恥ずかしいわ……。どうりで、お礼状の一枚も頂けないはずですわ」

 はぁ……と頬に手を添えて愁いを込めた溜息を吐く私の足元では、エリック様が息も絶え絶えに喘いでいらっしゃいますわ。

 
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