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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
32.花火と覚悟
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「おい、ルーフ。その手を離せ」
背後から殺気立つ声で話しかけられ、振り返るとルイが仁王立ちしていた。今にも攻撃魔法を放ちそうなルイの隣で、シロは止めた方がいいのか分からずあたふたしている。
「あ、ふい(あ、ルイ)。ひろほのはなひ、おはっはのか(シロとの話、終わったのか)?」
ルーフに頬をつねられたままのグレイが、ルイを見上げた。
「ああ。それよりルーフ、今すぐ離せ!」
「けっ」
ルーフが手を離すと、ルイは「ああっ、こんなに赤くなって!痛かっただろっ」とグレイの頬を両手で撫でた。
「全然痛くなかったから大丈夫だよ。ルイ、やっぱり花火2人で見たい。あっちに行こう」
グレイは立ち上がり、ルイの手を引っ張った。
「え…、ああ!もちろん!すぐ行こう!!」
ルイの顔が、ぱぁっと明るくなり嬉しそうにグレイの手を握る。
「さっさと行け。で、戻ってくんな」
ルーフは手でしっしっ、とやると、グレイが振り向いて(シロと2人っきりにしてやる!)と口を動かし、親指を立てた。
(…何、考えてんだ。あいつ)
ルーフが眉間に皺を寄せて睨んでいると、隣にシロがちょこんと座った。
「楽しい方たちですね」
「そうか?うざいだけだろ」
「あはは、ひどいなぁ」
夜空に花火が打ち上がり、パチパチと消えていく。
「随分、長い時間ルイと話していたな」
「…はい、色々教えていただきました。ルイさんは100年戦争時代、竜人聖騎士団長だったんですね。今は退いて、ただの商人だって言ってましたけど。でも今でもかなり強いと思います。話しているだけで強大な光魔力の持ち主だって感じました」
「へぇ、そうなんだ。俺にはただの色ボケ竜人にしか見えねぇけど」
「ははっ、確かにグレイさんとラブラブですもんね。…2人はルーフさんのおかげで出会えたって。だから感謝してるし、いつまでも元気でいてほしいって言ってました」
「俺はジジィかよ。心配されなくても元気だっつーの」
ルーフは寝転がり夜空を見上げた。深呼吸すると夜風の涼しい空気が肺を満たして気持ちいい。
ー…ぐすん。
鼻をすする音が聞こえた。
「…?」
シロを見ると顔を腕と膝の間に埋め、鼻をすすっている。これはおそらく…、いや、間違いなく…。
「は?なんで泣いてんの?」
ルーフはぎょっとして飛び起きた。
「…だって、ルーフさんは元気なのに…、ぼ、僕と関わったせい…で、聖剣の傷を…」
「あー、またその話かよー。だから大丈夫だって」
顔を埋めていたシロは、涙でぐちゃぐちゃになった顔でルーフを睨んだ。
「大丈夫じゃありません!ルイさんが言ってました。対魔族用の聖剣でできた傷は、魔族にとって時限爆弾抱えてるようなものだって。ある日突然、体を蝕んで死んでしまうって。…いや、それよりタチが悪い。気付かないうちに徐々に力を奪われて死ぬ事だってあるって。治療だって竜人聖騎士の医療施設じゃないと出来ないし…。それなのに…、完治する事もなくて…、ごめんなさい。全部、僕のせいです…」
シロはまた顔を埋めて鼻をすする。
ルーフは困って頭を掻いた。
(そもそも聖剣振り回したゲイルのせいだし、本当に体は大丈夫なんだけどな…。まあ、それじゃシロは納得しねぇか)
「…だったらシロが治療してくれよ」
そう言ってルーフは再び仰向けになって寝転んだ。
「え」
「お前、レニーじいさんの病院手伝ってるだろ?ついでにこの傷跡も治療してよ」
「無理ですよ!魔族や人間じゃ治療出来ないんですよ?レニー先生は魔族だし、僕なんて魔力のコントロールもままならないし…」
「今すぐにじゃなくてもいい。直接的でも間接的でもなんでもいい。だから過去を侘びたり悔いる必要はない。どうせ過去は変えられない。時間の無駄だ。もう過去の事で謝ったり泣くのはやめて、前を見ろ。変えられない過去で『今』苦しむくらいなら、変えられる未来のために『今』苦しめばいい。つか、お前の“ごめんなさい”は聞き飽きたんだよ!」
打ち上げ花火はクライマックスを迎え、様々な色や大きさの大輪が次々と咲いては消えていく。
皆、見事な花火に夢中になり歓声が上がる中、シロだけはルーフを見つめていた。
花火の音と共に心臓が高鳴り、シロは覚悟を決めた。
「…ルーフさん、好きです」
「はいはい。知ってるよ」
「好きです、貴方が。『恋愛的に好き』って事です。僕が一生貴方を守りたい」
「…ん?」
恋愛的に好き?
シロの言う「好き」は、ただの好き、だと思っていたルーフは、意味が分からず体を起こしてシロを見た。さっきまで泣いていたくせに、今は真面目な顔をして、赤い瞳は熱を持ち、真っ直ぐに自分を捉えている。
「聖剣の傷は、僕が絶対治します。今は居候だけど、僕が大人になったら、今度は僕がルーフさんを養います」
「え…いや、何、言ってんの?」
シロは、ぐいっと距離を詰め、戸惑うルーフの両手を握った。
「僕、もう決めました。過去はもう振り返りません。これからは貴方と歩む未来のために努力します。僕はまだ子供だけど、必ずルーフさんが惚れるような男になります。もうこの手は離しませんよ。覚悟しててくださいね、ルーフさん」
シロの不適な笑みを花火が照らす。
ルーフはどう反応すれば良いのか分からず「お、おお…」と曖昧な返事をした。
背後から殺気立つ声で話しかけられ、振り返るとルイが仁王立ちしていた。今にも攻撃魔法を放ちそうなルイの隣で、シロは止めた方がいいのか分からずあたふたしている。
「あ、ふい(あ、ルイ)。ひろほのはなひ、おはっはのか(シロとの話、終わったのか)?」
ルーフに頬をつねられたままのグレイが、ルイを見上げた。
「ああ。それよりルーフ、今すぐ離せ!」
「けっ」
ルーフが手を離すと、ルイは「ああっ、こんなに赤くなって!痛かっただろっ」とグレイの頬を両手で撫でた。
「全然痛くなかったから大丈夫だよ。ルイ、やっぱり花火2人で見たい。あっちに行こう」
グレイは立ち上がり、ルイの手を引っ張った。
「え…、ああ!もちろん!すぐ行こう!!」
ルイの顔が、ぱぁっと明るくなり嬉しそうにグレイの手を握る。
「さっさと行け。で、戻ってくんな」
ルーフは手でしっしっ、とやると、グレイが振り向いて(シロと2人っきりにしてやる!)と口を動かし、親指を立てた。
(…何、考えてんだ。あいつ)
ルーフが眉間に皺を寄せて睨んでいると、隣にシロがちょこんと座った。
「楽しい方たちですね」
「そうか?うざいだけだろ」
「あはは、ひどいなぁ」
夜空に花火が打ち上がり、パチパチと消えていく。
「随分、長い時間ルイと話していたな」
「…はい、色々教えていただきました。ルイさんは100年戦争時代、竜人聖騎士団長だったんですね。今は退いて、ただの商人だって言ってましたけど。でも今でもかなり強いと思います。話しているだけで強大な光魔力の持ち主だって感じました」
「へぇ、そうなんだ。俺にはただの色ボケ竜人にしか見えねぇけど」
「ははっ、確かにグレイさんとラブラブですもんね。…2人はルーフさんのおかげで出会えたって。だから感謝してるし、いつまでも元気でいてほしいって言ってました」
「俺はジジィかよ。心配されなくても元気だっつーの」
ルーフは寝転がり夜空を見上げた。深呼吸すると夜風の涼しい空気が肺を満たして気持ちいい。
ー…ぐすん。
鼻をすする音が聞こえた。
「…?」
シロを見ると顔を腕と膝の間に埋め、鼻をすすっている。これはおそらく…、いや、間違いなく…。
「は?なんで泣いてんの?」
ルーフはぎょっとして飛び起きた。
「…だって、ルーフさんは元気なのに…、ぼ、僕と関わったせい…で、聖剣の傷を…」
「あー、またその話かよー。だから大丈夫だって」
顔を埋めていたシロは、涙でぐちゃぐちゃになった顔でルーフを睨んだ。
「大丈夫じゃありません!ルイさんが言ってました。対魔族用の聖剣でできた傷は、魔族にとって時限爆弾抱えてるようなものだって。ある日突然、体を蝕んで死んでしまうって。…いや、それよりタチが悪い。気付かないうちに徐々に力を奪われて死ぬ事だってあるって。治療だって竜人聖騎士の医療施設じゃないと出来ないし…。それなのに…、完治する事もなくて…、ごめんなさい。全部、僕のせいです…」
シロはまた顔を埋めて鼻をすする。
ルーフは困って頭を掻いた。
(そもそも聖剣振り回したゲイルのせいだし、本当に体は大丈夫なんだけどな…。まあ、それじゃシロは納得しねぇか)
「…だったらシロが治療してくれよ」
そう言ってルーフは再び仰向けになって寝転んだ。
「え」
「お前、レニーじいさんの病院手伝ってるだろ?ついでにこの傷跡も治療してよ」
「無理ですよ!魔族や人間じゃ治療出来ないんですよ?レニー先生は魔族だし、僕なんて魔力のコントロールもままならないし…」
「今すぐにじゃなくてもいい。直接的でも間接的でもなんでもいい。だから過去を侘びたり悔いる必要はない。どうせ過去は変えられない。時間の無駄だ。もう過去の事で謝ったり泣くのはやめて、前を見ろ。変えられない過去で『今』苦しむくらいなら、変えられる未来のために『今』苦しめばいい。つか、お前の“ごめんなさい”は聞き飽きたんだよ!」
打ち上げ花火はクライマックスを迎え、様々な色や大きさの大輪が次々と咲いては消えていく。
皆、見事な花火に夢中になり歓声が上がる中、シロだけはルーフを見つめていた。
花火の音と共に心臓が高鳴り、シロは覚悟を決めた。
「…ルーフさん、好きです」
「はいはい。知ってるよ」
「好きです、貴方が。『恋愛的に好き』って事です。僕が一生貴方を守りたい」
「…ん?」
恋愛的に好き?
シロの言う「好き」は、ただの好き、だと思っていたルーフは、意味が分からず体を起こしてシロを見た。さっきまで泣いていたくせに、今は真面目な顔をして、赤い瞳は熱を持ち、真っ直ぐに自分を捉えている。
「聖剣の傷は、僕が絶対治します。今は居候だけど、僕が大人になったら、今度は僕がルーフさんを養います」
「え…いや、何、言ってんの?」
シロは、ぐいっと距離を詰め、戸惑うルーフの両手を握った。
「僕、もう決めました。過去はもう振り返りません。これからは貴方と歩む未来のために努力します。僕はまだ子供だけど、必ずルーフさんが惚れるような男になります。もうこの手は離しませんよ。覚悟しててくださいね、ルーフさん」
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