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7.腹立たしさと希望(ルイ視点)
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「ルイ。俺、お前の事好きだ。お前を助けたい。」
わずか数分ほど話した直後、初対面の魔族に告白された。
正直、何を言っているのかとルイは腹立たしく思えた。
この魔族は、100年続く戦争の状況を理解していないのか。
ルイたち竜人がどんな思いで魔族と戦い、どれだけの犠牲を払ってきたか。
武器を捨て、話し合いで問題を解決するよう何度も魔族と交渉してきた。
人を襲うことをやめ、意味のない破壊をやめ、共に生きようと何度も投げかけた。
しかし、魔族の答えはいつもノーだった。
弱いから奪われるのだ、弱い者は死んで当然だ、と。
魔族は笑いながら破壊を楽しんだ。
それでも100年ほど前までは竜人の魔力の方が圧倒的に強く、魔族の暴動を止めることが出来ていた。
状況が変わったのは、新魔王の誕生だった。
先代の魔王は戦好きの荒くれ者で従者の魔族を引き連れては暴れ回っていたが、新魔王はドグライアス城でひっそりと暮らす大人しい魔王だった。
竜人たちは、これで魔族との関係も変わると期待した。
しかし、新魔王の誕生こそ悲劇の始まりだった。
新魔王の能力は、膨大な魔力を他の魔族に供給できる力だった。
結果、強力な魔力を得た魔族の暴走は激しくなり、ついに竜人と魔族の全面戦争が始まってしまったのだ。
ルイの本名は、ルインハルト・クラウド。
竜人の中でも歴史あるクラウド公爵家の三男で、聖騎士総括司令官の父から聖騎士のトップを目指すよう、小さい頃から厳しく教育されて育った。
元々聖騎士としての素質があったルイは、若くして聖騎士の師団長の座まで上り詰めた。
それは喜ばしい事ではなく、常に戦争の最前線に立ち戦い続けなければならなかった。
戦場は地獄のような景色だった。
恐怖や絶望の叫び声を何度も聞いた。
小さな命が絶えていく瞬間を何度も見てきた。
なぜこんな残酷なことが出来るのだろうかと魔族を呪った。
なぜ自分はこんな小さな命さえ助ける力がないのかと絶望した日もあった。
ドグライアス城に攻め入り、魔王を打てばこの悲劇も終わるのだろうか。
しかし、ドグライアス城は魔王の強力な魔力によって場所を特定する事さえ困難を極めていた。
そして今チャンスが訪れた。
一か月前、戦いの最中、仲間を守ろうとして魔族に捕まった。
捕まった竜人はすぐに殺すと聞いていたが、聖騎士師団長の捕獲に魔族は喜び、しばらく拘束して他の魔族に自慢しようと騒いで、ルイを拘束した。
拷問は耐えがたいものだったが、おかげで目的地のドグライアス城に入る事ができた。
そして目の前にはルイを助けたいという変わった魔族が現れた。
この魔族を使って魔王を探せるか。
竜人がどれだけ魔族を憎んでいるかも理解していないグレイに対して腹立たしさと同時に、うまく利用すれば魔王を倒せる希望が湧いた。
艶のない黒髮から見えるちょっとつり目の金色の瞳がルイを熱く見つめている。
体は貧相でいかにも魔力の少なそうな小さな魔族。
どんな意図があって好きだと言っているのか理解出来ないが、賭ける価値はあるだろう。
ルイの心は冷めたまま、グレイに優しく微笑んだ。
「ありがとう。嬉しいよ、グレイー…。」
わずか数分ほど話した直後、初対面の魔族に告白された。
正直、何を言っているのかとルイは腹立たしく思えた。
この魔族は、100年続く戦争の状況を理解していないのか。
ルイたち竜人がどんな思いで魔族と戦い、どれだけの犠牲を払ってきたか。
武器を捨て、話し合いで問題を解決するよう何度も魔族と交渉してきた。
人を襲うことをやめ、意味のない破壊をやめ、共に生きようと何度も投げかけた。
しかし、魔族の答えはいつもノーだった。
弱いから奪われるのだ、弱い者は死んで当然だ、と。
魔族は笑いながら破壊を楽しんだ。
それでも100年ほど前までは竜人の魔力の方が圧倒的に強く、魔族の暴動を止めることが出来ていた。
状況が変わったのは、新魔王の誕生だった。
先代の魔王は戦好きの荒くれ者で従者の魔族を引き連れては暴れ回っていたが、新魔王はドグライアス城でひっそりと暮らす大人しい魔王だった。
竜人たちは、これで魔族との関係も変わると期待した。
しかし、新魔王の誕生こそ悲劇の始まりだった。
新魔王の能力は、膨大な魔力を他の魔族に供給できる力だった。
結果、強力な魔力を得た魔族の暴走は激しくなり、ついに竜人と魔族の全面戦争が始まってしまったのだ。
ルイの本名は、ルインハルト・クラウド。
竜人の中でも歴史あるクラウド公爵家の三男で、聖騎士総括司令官の父から聖騎士のトップを目指すよう、小さい頃から厳しく教育されて育った。
元々聖騎士としての素質があったルイは、若くして聖騎士の師団長の座まで上り詰めた。
それは喜ばしい事ではなく、常に戦争の最前線に立ち戦い続けなければならなかった。
戦場は地獄のような景色だった。
恐怖や絶望の叫び声を何度も聞いた。
小さな命が絶えていく瞬間を何度も見てきた。
なぜこんな残酷なことが出来るのだろうかと魔族を呪った。
なぜ自分はこんな小さな命さえ助ける力がないのかと絶望した日もあった。
ドグライアス城に攻め入り、魔王を打てばこの悲劇も終わるのだろうか。
しかし、ドグライアス城は魔王の強力な魔力によって場所を特定する事さえ困難を極めていた。
そして今チャンスが訪れた。
一か月前、戦いの最中、仲間を守ろうとして魔族に捕まった。
捕まった竜人はすぐに殺すと聞いていたが、聖騎士師団長の捕獲に魔族は喜び、しばらく拘束して他の魔族に自慢しようと騒いで、ルイを拘束した。
拷問は耐えがたいものだったが、おかげで目的地のドグライアス城に入る事ができた。
そして目の前にはルイを助けたいという変わった魔族が現れた。
この魔族を使って魔王を探せるか。
竜人がどれだけ魔族を憎んでいるかも理解していないグレイに対して腹立たしさと同時に、うまく利用すれば魔王を倒せる希望が湧いた。
艶のない黒髮から見えるちょっとつり目の金色の瞳がルイを熱く見つめている。
体は貧相でいかにも魔力の少なそうな小さな魔族。
どんな意図があって好きだと言っているのか理解出来ないが、賭ける価値はあるだろう。
ルイの心は冷めたまま、グレイに優しく微笑んだ。
「ありがとう。嬉しいよ、グレイー…。」
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