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50.出口までの距離(ルイ視点)

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グレイが吸血パックを飲み干すと、側にいるだけでグレイの体が熱くなるのを感じた。

「グレイ…?」

声をかけると、ゆっくりとグレイはルイを見つめた。
顔は紅潮し、瞳は金色から濃いオレンジ色へと変わり揺らめいている。
まるで欲情しているような表情だ。

ルイは思わず生唾を飲み込んだ。
グレイから目を離せない。

グレイに両手がスッと伸び、ルイの首に絡みついた。
体を引き寄せられ、首元にグレイの熱い息がかかる。

抱きついてきたグレイの細い腰に、無意識で手を回し自分の体に引き寄せた。

抱きしめるとグレイの吐息のかかった声で「…ルイ、ごめんな。」と聞こえた。
首元をグレイの熱い舌で舐められた。

突然の行為にルイの体がビクッと硬直した。

プスリ…。

小さな痛みが首元を走る。

「…っん、…っふ…っ」

グレイの色っぽい息遣いとともに身体中に魔力が行き渡るのを感じた。
ルイの体も熱を持ち、身体中から自分の脈拍を感じる。

なんだ、これ…。気持ちいい…。

ルイは今まで経験したことのない多幸感に包まれ、さらに強くグレイを抱きしめた。





「ルイ、終わったよ。」

グレイのいつも通りの声でルイは我に返る。
首に回されていたグレイの手は離れていった。
そんな動作に少し寂しさを覚えつつ、ルイもグレイから体を離した。

「ありがとう、グレイ。なんだかすごく幸せを感じたよ。気持ちよかった。」

ルイが思ったままの感想を言うと、グレイの顔がボッと赤くなる。

「な、な、なにいってんだ!!そ、それより体の調子はどうなんだよっ?」

言われてみると体の疲労感が全てなくなっていた。
ほとんど使い切った魔力も戻っている。

「ああ、かなり回復している。すごい、これがグレイの輸血か。」

そういえば、瀕死の状態で牢にいた時も死を覚悟して眠った瞬間があった。
しかし目を覚ませば目の前にはグレイがいて、しぶとく生きている自分に驚いたものだった。
あの時もグレイが輸血と治癒魔法をかけてくれたから生き長らえたんだな。

「ありがとう、グレイ。お前は私の命の恩人だ。」

「お、大げさだよ。それに一時的な回復だから時間がないんだ。さあ、もう行くぞ。」

グレイはプイッと前を向き螺旋階段を登り始めたので、ルイも後に続いた。

長い螺旋階段を抜けた先には古い扉があった。
グレイは扉をそっと開け、中の様子を見る。
どうやら城内への入口のようだ。

「見張りの魔族がいるけどジルドはいない。見つからないように俺に付いてきて。」

グレイはこっそり中に入り、人目に付かないように慎重に進んだ。
見張りの魔族たちは座り込んで話をしていたり居眠りしていたりと緊張感なく過ごしていたため、思っていたより簡単に城内へ侵入する事ができた。
しばらく廊下を進むと、大きな扉の前についた。
グレイは鍵を取り出し扉を開け、中に入った。

中はまた長い廊下が続いていたが、普段は使われていないような薄暗さと静けさがあった。

「この先に時計台があるんだ。そこから上空を目指せばすぐに結界を抜けられる。」

グレイが再び走り出そうとした時、ルイは殺気に気付き、右手でグレイを抱え竜の姿に変身して飛び立った。

「うわっ!!」

びっくりしたグレイは声をあげたが、先ほど2人がいた場所には炎が燃え広がっていた。

これはジルドの魔法だ。

ルイの視線の先にはジルドが現れていた。

「鬼ごっこはもう終わりだ。次は拷問の時間にしようぜ。」

大剣を持ったジルドが楽しそうに笑った。



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