上 下
5 / 38
1.婚約破棄まであと6ヶ月

5.悪役令嬢は胸を張る

しおりを挟む
市民出身のメアリー・ブライトニーは村一番の才女だったらしく、今年からエレメリア魔法学園の特待生としてやって来た。

エレメリア学園は貴族が通う超エリート魔法学園。市民は逆立ちしたって入れないが、1学年に1人だけ成績優秀な市民出身の生徒が転入できる。
とは言え、実際は市民出身でも貴族並みに財力がある商家の子供が多い。
しかし、稀に強力な魔力を持った市民の子供もやって来る。
メアリー・ブライトニーはまさしく強力な光魔法の使い手らしい。

光魔法を使える者はフィルコート王国でも数えるほどしかおらず、その力は幸福と浄化を与えるとして重宝される。

ちなみに私は、国民の50%が該当する火魔法の使い手だ。水と風に弱く多様性が少ない。
せめて魔力が強ければよかったのだが、それも並み程度だ。

まあ、魔力では私の方が負けているかもしれないが、見た目なら自信がある。

私は元々人目を引くような美人ではないが、体を鍛えスタイルを磨き、美に対する時間とお金を費やし、今では『社交界の花』と言われるようになった。

見た目だけではなく、言葉遣いや所作も体に叩き込んだし、話題作りのために多くの知識と教養を身に付けた。
おかげで見た目だけではなく、内から出る『美』にも自信がある。
それだけの努力をしてきたのだ。



さあ、今日も胸を張るのよ。

私は髪をなびかせ歩き出す。



「わあ、キーナ様よ!今日も美しいわ。」

「見た目も髪も肌も姿勢も全て綺麗だわ。どうやったらあんなに美しく保てるのかしら。」

「おい、見ろよ!ハンドリー嬢だぜ。やっぱり美人だよなぁ。アレン王子が羨ましいよなぁ。」

ほらほらほら!
周りからは羨む声が聞こえる!!
みんなの羨望の眼差しは心地良い。

ジルはそんな私を呆れた目で見てくるがどうでもいい。
私が良い気分に浸りながら歩いてると、後ろからどよめきが聞こえた。

振り返れば人だかり。

私より目立つなんて誰かしら?

ちょっと背伸びをして覗いてみれば、絹のようなプラチナブロンドのサラサラストレートの長い髪、陶磁器のようなシミひとつない白い肌、大粒のブルーサファイアの様な瞳、守ってあげたくなる様な華奢で小柄な体型の女子生徒。

「うっわ、超絶美人。」

私は思わず本音が出た。
そんな私を見てジルが面白そうに笑った。

「あれがメアリー・ブライトニーですよ。」

「へ?」

死んでも口には出さないが、見た目でも彼女の方が断然美しかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪役令息の義姉となりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:21,918pt お気に入り:1,372

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

BL / 連載中 24h.ポイント:4,794pt お気に入り:2,711

何も知らない愚かな妻だとでも思っていたのですか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:326pt お気に入り:1,701

百鬼夜荘 妖怪たちの住むところ

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:852pt お気に入り:16

運命の番(同性)と婚約者がバチバチにやりあっています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,270pt お気に入り:29

愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:96

先輩。私が恋を証明できたら、好きになっていただけませんか?

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:256pt お気に入り:1

処理中です...