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3.夜の出会い

2.悪役令嬢は男になる

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私は一旦ジルを外させ、引き出しの奥に隠していた魔法薬が入った小瓶と男性用の服を引っ張り出した。

小瓶の蓋を開けるとシナモンっぽい香りがした。
これは私が作った性別転換薬。

学園にある魔法薬学研究室にいる学生研究員のレイン・フォーターと共同開発した魔法薬だ。
市場には出回っていない私たちのオリジナル魔法薬だが、効力は抜群だ。

私は魔法薬を一気に飲み干した。



数分後、男の姿になった私は支度を整えてからジルを呼んだ。
ドアをノックする音が聞こえ、私は他の使用人にバレないように少し高い声で「どうぞ。」と返事をした。

「失礼します。」

手始めに普段生意気なジルを驚かせてやる。

「やあ。」

ソファで足を広げて座った私はジルに挨拶をした。

「なんですかその挨拶は、キーナさ…ま…。え、誰?」

ジルは固まって目を丸くした。

ふふっ、良い反応。

まあ、ジルが固まるのも無理もない。
ソファに座っているのは麗しきキーナ・ハンドリー公爵令嬢ではなく、くたびれた服に身を包み、焦茶色の短いボサボサ髪をした少年なんだから。

「ふふん、私よ。キーナ・ハンドリー。完璧な変装でしょう?この姿なら街の市民に見えるし、どこからどう見てもキーナ・ハンドリーとは気付かないでしょう。」

声も低くなっているため、さすがにこの話し方は気持ち悪い。私は咳払いしてから立ち上がり、くるっと回ってみせた。

「それに結構男前だろ?」

少し男性っぽい話し方を意識してみる。
うん、こっちの方が自然だわ。
気を付けて話さないと。

「な、な、なんで…、え、いや、どうやって…?え…今度は…なにを…企んでるんですか?」

目を丸くしたまま混乱しているジルだが、相変わらず毒舌は通常運転だ。

「企んでるって失礼ね。あ、いや失礼だぞ。
キーナ嬢の姿のままじゃ街を好き勝手に歩き回らないからな。この姿なら何をしていても怪しまれる事はないだろ?よしっ、ベリー王国の刺客を全員捕まえぞ。ジル、馬車を用意しろ。」

私はノリノリで男性の振る舞い方を真似して言ってみた。なにこれ、意外と楽しい。

「キーナ様、貴方はバカなんですか!?もう少し賢いと思っていましたが、流石にバカです!そもそも刺客を捕まえる事だって馬鹿げた話ですが、何で男になっちゃったんですか!?」

ジルはものすごい剣幕で畳み掛けてきた。

「もー、うるさいわね。魔法薬を飲んだの。私とレインが開発した異性転換薬よ。逆の性別になれる薬なの。すごいでしょ!まあ、効力時間は3時間程度しか保たないけどね。まさか髪の色まで変わるとは思わなかったわ。異性転換っていうより異性別人転換ね。」

「…はぁー、ありえねぇ。」

ジルは大きなため息をついて頭を抱え込んだ。

「レインって学生研究員のレイン・フォーター様ですか?」

「あら、知ってたの?レインは研究室に篭りっぱなしの地味な魔法薬学オタクだから、同じクラスでも存在を知らない人が多いのよ。さすがジルね。」

「念の為、エレメリア魔法学園に所属している生徒と教師は把握してます。レイン様ならプロの魔法薬師以上に魔法薬に詳しいお方なので薬に関しては問題ないと思いますが、研究室で2人きりはまずいですよ。」

「それは問題ないわ。レインとの事はアレン様も知ってるし、あの2人は友人だしね。さすがに開発した魔法薬の事までは知らないと思うけど。それより早く出掛けるわよ。時間がないんだから。」

玄関から堂々と出掛けるのは色々と面倒なので、私は1番大きな窓を開けて外へ飛び出した。

熱魔法で足元に風を起こし、私はふわりと着地した。

「待ってくださいよ!キーナ様っ!」

呆れながらジルもすぐに窓から飛び降り、魔法を使わずに猫のように着地した。ジルは身体能力もかなり高い。羨ましいわ。

私も男の姿で鍛えてたら身体能力高くなるかしら。今度試してみよう。
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