スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第32話 ロベリーさんは甘い苺の香でした #1

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「という事でカルア君、こっちの魔石にもう一度付与してみてくれるかい? 内容はさっきと同じもので構わないから。ほら、僕さっき君の付与を見逃しちゃったからさ、どんな感じなのか見てみたいんだよ」

はは、結局見せる事になっちゃった……

「分かりました。やり方もさっきと同じでいいんですよね」
「うん、それで頼むよ」

『いや、イヤ、嫌よ! 私がやるところも見せたくないけど、他の誰かがアレをやるところも見たくない! ゼッタイ嫌ぁ!!』

「あの、モリスさん……? ロベリーさん、すっごく嫌がっているように見えますけど……いえ、何を言ってるのかは聞こえないんですけど。でも見るからにっていうか……」

「あっはっは、気にしなくっていいよカルア君。ロベリー君はほら、ちょっと恥ずかしがってるってだけだから。本気で止めたいんだったらこっちに来て無理やり止めるって。来ないんだから大丈夫大丈夫」

「ええっと……さっき僕が作った【結界】の魔道具、今何気なく作動させましたよね?」
「この結界、まさか音も遮断するなんてねえ。いや待てよ、空間自体が断絶されてるんだから、考えてみればそれも当然か。このあたりはどうするのがいいのかな? 音については遮断すべきか通すべきか。ううーん、危険が近付いている事に気付かないのは困るけど、音を攻撃に使う魔物もいるからねえ。これは悩ましいところだよ」

「いや、そうじゃなくって……」
「んふふ、大丈夫だよカルア君。むしろ彼女には付与する姿を見せてあげて欲しい。君さっきさ、彼女の付与を目立たないようにやってたでしょ? いくら僕がこっちに集中していたからって、アレをそのままやってたら絶対に気付いたはずさ。つまりそれを気付かないレベルまで目立たないように出来たって事だろ? 君が改良した彼女の付与術、あれはきっとロベリー君を救ってくれると思うんだ」

てっきり悪ふざけの嫌がらせかなんて思ったけど……そうか、ロベリーさんの事を思いやってのことだったんだ――ってホントにそうなんだよね? いつもの悪ふざけじゃないよね?
信じてますよ、モリスさん!
「やります!!」

僕は魔石の一つを手に取り、さっきと同じように額の前に持ってきた。その瞬間――
周囲の音、そしてロベリーさんの悲鳴みたいな声が耳に届いた。
モリスさん、結界を解除したみたいだ。

よし、じゃあさっきと同じできるだけ小さな声でっと。
「魔石くん、君は防御と攻撃の天才だ。外からの攻撃は空間の壁で防ぐし、中からの攻撃は【ゲート】で外へとすり抜ける。君って凄いんだ。大丈夫、やれるやれる! 君なら絶対出来るって!」
よし光った。今度も付与成功!

「え!?」
瞬間、その場に呆然と立ち竦んだロベリーさん。
大声で叫び続けて真っ赤になっていた顔は、やがて元の白さを取り戻し、そして暫くしたらまた赤くなって、それからその瞳が輝いて――

「カッコイイ……」

ん?

「ちょっとカルアくん! 何? 君何なの!? もの凄くカッコイイじゃない!!」

はい?

「ねえ、ちょっと、ロベリー?」
ピノさんも何だか困ったような顔。

「ふ、ふふ、ふふふふ……あはははははっ!」

わ、ちょっと!!
もの凄い勢いで突っ込んできたロベリーさんが――!!
え? 何で僕今抱きしめられてるの!?
ロベリーさん!?
あの、ちょっとロベリーさん!?

「君サイコーよカルアくん! ああ、どうしよう! 今日この場この時にこんなにも素晴らしい出会いが待っていたなんて!!」

ヒッ!
冷気が……物凄い冷気が……
発生源はもちろん――

ピノさん、ものすっごい顔で睨んでるよお!!
ちょっとロベリーさん!! お願い、正気に戻って!!
あれ絶対殺気だから!!
殺気が物理現象引き起こしてるから!!
死んじゃう! 僕達二人とも死んじゃうから!!

「ねぇカルアくん! 何、さっきの付与!? あれピノに教わった私の付与術よね!? すっごいじゃない! あれだったら絶対変じゃない! ううん、むしろカッコイイ!! 私の付与術、カッコイイ!!」

よかった。とりあえず抱きつくのはやめてくれた……
でも僕の両肩を掴んだままだから顔がとても近いけど。目を合わせられないくらい近いけど。
ん? 冷気……ちょっとだけ和らいだ?

「カルアくん、今のもう一度! もう一度やって見せて!! ほら早く!!」
「あ、はい」

もう一つ魔石を手にとって、付与。

「ふむふむ、小声でってのは試した事あったけど、その時は上手くいかなかったのよね。手で持って額に近付けてってあたりがポイントなのかしら? ちょっと私も試して――」

そう言ってロベリーさんは魔石を同じように額に近付け、小声で囁く。
「魔石さん、あなたって本当はとっても明るいひとなの。今までそれに気づかなかっただけ。明るいあなたってとっても魅力的よ。ほら、あなた今、わたしの魔力を受けてこんなに輝いているじゃない。ねえ気付いてる? 今のあなた、すっごく輝いてる。どう、本当の自分を出せた今の気持ちは? とっても晴れやかじゃない? だってほら、そんなに輝いてるんだもの」

魔石は一瞬光って……それから更に輝き始めた。
これはきっと、光属性が付与されたって事なんだろうな。
そしてロベリーさんの洗のぅ――じゃなくて説得が聞こえたのはきっと僕だけ。ちょっと離れていたらもう聞こえない。だから――

「やった、出来た!! うん、これだったら全然恥ずかしくない! むしろちょっと神秘的な感じにだって見えるかも! カルアくんありがとう!」

やってよかった。ロベリーさんすっごく嬉しそう!

「ピノぉー!! これよ! さっきの付与の姿、あの物語の『聖女の祈り』そのままだったわ。そうよ、この付与で私は『付与の聖女』になるのよ!!」

冷気はいつの間にか収まっている。
そしてロベリーさんは今度はピノさんに――

「ありがとうピノ! あなたがカルアくんを連れて来てくれたおかげよ! ピノ大好き!! ……ううう、ひっく……これで……これでまた、付与が出来るよぉ……ふえええぇぇん……」
やっぱり今度ももの凄い勢いで抱きつき、微動だにせず受け止めたピノさんの腕の中で涙を流し続けた。

よかった、いつものピノさんに戻ったみたいだ。
だから僕は――
ロベリーさんに抱きつかれた時に甘い苺のいい香りに包まれた、なんて絶対に口に出しちゃいけないんだ。

ピノさんは微笑みながらそっとロベリーさんの背中をさすりつづける。
そして僕にも優しく微笑みかけて……
「カルアくん」
「はいピノさん」

「さっきカフェで飲んでた苺ジャムの紅茶の香りですからね」
「ヒェッ!?」

ああ、ピノさんからは逃げられない……
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