141 / 278
第65話 チームが見たパーティの感想が… #1
しおりを挟む
「――それでトラウター、あんたはどうすべきだと思う?」
マリアベルがそう問うた相手、それはベルマリア家現当主のトラウター・ベルマリア――ララベルの夫でありアーシュの父親である。
「カルア君――私の甥にあたる彼を我が家に迎え入れるべきか否か。……正直私としては、彼とは直接の面識がない以上、彼の人格等による判断はつきかねます。ですが、お聞かせいただいた彼の生い立ちや境遇を考えると、我が家に迎え入れるべきではない――と思います」
その父の答えに、アーシュは思わず立ち上がる。
「なっ!? 何故なのお父様!? カルアはすっごくいい奴なのよ!? それに――」
「落ち着きなさいアーシュ」
そんな激昂しかけた娘に、トラウターは冷静さをもって応えた。
「――先ほど言った通り、問題は彼の人格等ではないんだよ」
そのトラウターの言葉に、今度はマリアベルからの問い掛け。
「なら、あんたが考えるその『問題』っていうのは何だい?」
今度は義母の瞳を真っ直ぐに見つめ、そして一つ頷いてから答えを返す。
「それは彼――カルア君の抱える『危機』というものに対する懸念です。リアベルさんが姿を隠す必要があった根本の原因、それがベルマリア家と彼の繋がりによるものだったとしたら? もしそうだった場合……我が家が彼を迎え入れる事が彼の死に繋がる、その可能性が否定出来ないのではないでしょうか」
聞いたばかりの話から無視できない可能性を見つけ出し、理路整然とそれを語るトラウター。愛する娘から『ついでに』呼ばわりされた彼は、しかしベルマリア家当主として相応しい能力の持ち主である。
その彼が提示した可能性――自らが思い至らなかったその可能性にマリアベルは唸った。
「確かにその可能性はあるね。そしてもしそれが『当たり』だとしたら……カルアとうちの関係を大っぴらにする事で、カルアの命に危険が迫るという事か」
マリアベルはしばし考え、そして結論を出した。
「よし、じゃあカルアを我が家に迎えるのは保留、カルアがベルマリア家の血縁である事は対外的には秘密とする。カルアを迎え入れるのは、『危機』を全て乗り越えてリアベルも帰ってきてからとしよう。みんな分かったね? トラウター、秘密保全を手配しな。ララベル、アーシュ、あんた達もこの事は口外禁止だ。特にアーシュ、学校では特に気を付けるんだよ? あんたの口にカルアの命が掛かってると考えな」
その決断に全員神妙な面持ちで頷く。
アーシュもカルアの命が掛かっていると言われれば、もう無理を言うつもりはない。
何より、数年間待てばいいだけなのだから。
「あたしもあの連中にきっちり口止めしとかなくちゃあね。しっかし一番心配なのが当の本人のカルアってのは……全く何とかならないもんかねえ」
ギルド本部インフラ技術室、室長室――
「それで室長、昨日のパーティはいかがでした?」
室長であるモリスにそう尋ねたのは、最近彼の秘書に加えて特殊付与担当という肩書きが付いたロベリー。
「うん、とってもスリリングで想定外だらけなパーティだったよ。すまないね、ロベリー君もチームカルアのメンバーなのに参加させてあげられなくって」
「かまいませんよ室長。私と室長が両方同時に留守にしたら、こっちが大変な事になっちゃいますからね。それに……スリリングで想定外だらけなパーティなんて、むしろ積極的に避けていきたいところですし」
ロベリーがそんな正直な心の内をぶっちゃけた後、モリスは昨日の一部始終――想定外に次ぐ想定外をそのロベリーに聞かせた。
「はあぁーー……」
聞き終えたロベリーから漏れ出た溜息にモリスは小さく微笑む。そんなモリスにロベリーは小さく首を振り、そして続く言葉を溜息に乗せる。
「それは何とも大変でしたねえ。まあカルアくんがパーティのメンバーに受け入れられたっていうのはよかったですけど、そのあと死んだはずの母親と突然再会して、自分の命の危険を伝えられて、さらにあの『ベルマリア家』の血縁だったとか……。これってお芝居とかだったら『盛り過ぎ』って批判されちゃうレベルですよ? カルアくん、相変わらずドラマチックに生きてますねえ」
その感想に内心吹き出し掛けたモリスだったが、それを表に出すことなく――だが押さえきる事は出来なかったようで、浮かぶ笑顔は先程より明らかに深まっている。
「本当だよねえ。いやあ、カルア君と出会ってからっていうもの、本当に毎日が充実してて楽しくって仕方がないよ。『家』にいた頃はこんな事絶対に考えられなかったからねえ」
「…………」
モリスの言葉に軽く引っ掛かりを覚えるロベリー。
「――そのご実家にはまだ何の連絡もしていないんですか? エピング家っていったら、かなりの名家じゃないですか。また催促のお手紙が来てましたよ?」
毎月のようにモリスの実家から届く、モリス宛の手紙――それを全く気にしていないモリスには、むしろロベリーの方が心配になってしまう。
「気にしない気にしない。もともとお互い縁を切るつもりで家を出たんだよ? それから自力で学校に入って、自力で今の地位を手に入れたんだ。今さら何を言ってきても聞くつもりはないし、僕も『エピング』を名乗るつもりはさらさら無いしね」
そう軽く言い放ち、そしてモリスは今日もまたいつものようにこの話を打ち切るのだ。
「さあ、もうこんなつまらない話はおしまい。ああ、それとロベリー君、カルア君に関しては今回もやっぱりチーム以外秘密って事でよろしくね」
「ええ分かってます室長。『いつもどおり』って事でしょ?」
「そうそう、いつも通りいつも通り。世は全てこともなしってね」
「違いますよ室長。いつも通り『ことがありまくり』ですって……」
マリアベルがそう問うた相手、それはベルマリア家現当主のトラウター・ベルマリア――ララベルの夫でありアーシュの父親である。
「カルア君――私の甥にあたる彼を我が家に迎え入れるべきか否か。……正直私としては、彼とは直接の面識がない以上、彼の人格等による判断はつきかねます。ですが、お聞かせいただいた彼の生い立ちや境遇を考えると、我が家に迎え入れるべきではない――と思います」
その父の答えに、アーシュは思わず立ち上がる。
「なっ!? 何故なのお父様!? カルアはすっごくいい奴なのよ!? それに――」
「落ち着きなさいアーシュ」
そんな激昂しかけた娘に、トラウターは冷静さをもって応えた。
「――先ほど言った通り、問題は彼の人格等ではないんだよ」
そのトラウターの言葉に、今度はマリアベルからの問い掛け。
「なら、あんたが考えるその『問題』っていうのは何だい?」
今度は義母の瞳を真っ直ぐに見つめ、そして一つ頷いてから答えを返す。
「それは彼――カルア君の抱える『危機』というものに対する懸念です。リアベルさんが姿を隠す必要があった根本の原因、それがベルマリア家と彼の繋がりによるものだったとしたら? もしそうだった場合……我が家が彼を迎え入れる事が彼の死に繋がる、その可能性が否定出来ないのではないでしょうか」
聞いたばかりの話から無視できない可能性を見つけ出し、理路整然とそれを語るトラウター。愛する娘から『ついでに』呼ばわりされた彼は、しかしベルマリア家当主として相応しい能力の持ち主である。
その彼が提示した可能性――自らが思い至らなかったその可能性にマリアベルは唸った。
「確かにその可能性はあるね。そしてもしそれが『当たり』だとしたら……カルアとうちの関係を大っぴらにする事で、カルアの命に危険が迫るという事か」
マリアベルはしばし考え、そして結論を出した。
「よし、じゃあカルアを我が家に迎えるのは保留、カルアがベルマリア家の血縁である事は対外的には秘密とする。カルアを迎え入れるのは、『危機』を全て乗り越えてリアベルも帰ってきてからとしよう。みんな分かったね? トラウター、秘密保全を手配しな。ララベル、アーシュ、あんた達もこの事は口外禁止だ。特にアーシュ、学校では特に気を付けるんだよ? あんたの口にカルアの命が掛かってると考えな」
その決断に全員神妙な面持ちで頷く。
アーシュもカルアの命が掛かっていると言われれば、もう無理を言うつもりはない。
何より、数年間待てばいいだけなのだから。
「あたしもあの連中にきっちり口止めしとかなくちゃあね。しっかし一番心配なのが当の本人のカルアってのは……全く何とかならないもんかねえ」
ギルド本部インフラ技術室、室長室――
「それで室長、昨日のパーティはいかがでした?」
室長であるモリスにそう尋ねたのは、最近彼の秘書に加えて特殊付与担当という肩書きが付いたロベリー。
「うん、とってもスリリングで想定外だらけなパーティだったよ。すまないね、ロベリー君もチームカルアのメンバーなのに参加させてあげられなくって」
「かまいませんよ室長。私と室長が両方同時に留守にしたら、こっちが大変な事になっちゃいますからね。それに……スリリングで想定外だらけなパーティなんて、むしろ積極的に避けていきたいところですし」
ロベリーがそんな正直な心の内をぶっちゃけた後、モリスは昨日の一部始終――想定外に次ぐ想定外をそのロベリーに聞かせた。
「はあぁーー……」
聞き終えたロベリーから漏れ出た溜息にモリスは小さく微笑む。そんなモリスにロベリーは小さく首を振り、そして続く言葉を溜息に乗せる。
「それは何とも大変でしたねえ。まあカルアくんがパーティのメンバーに受け入れられたっていうのはよかったですけど、そのあと死んだはずの母親と突然再会して、自分の命の危険を伝えられて、さらにあの『ベルマリア家』の血縁だったとか……。これってお芝居とかだったら『盛り過ぎ』って批判されちゃうレベルですよ? カルアくん、相変わらずドラマチックに生きてますねえ」
その感想に内心吹き出し掛けたモリスだったが、それを表に出すことなく――だが押さえきる事は出来なかったようで、浮かぶ笑顔は先程より明らかに深まっている。
「本当だよねえ。いやあ、カルア君と出会ってからっていうもの、本当に毎日が充実してて楽しくって仕方がないよ。『家』にいた頃はこんな事絶対に考えられなかったからねえ」
「…………」
モリスの言葉に軽く引っ掛かりを覚えるロベリー。
「――そのご実家にはまだ何の連絡もしていないんですか? エピング家っていったら、かなりの名家じゃないですか。また催促のお手紙が来てましたよ?」
毎月のようにモリスの実家から届く、モリス宛の手紙――それを全く気にしていないモリスには、むしろロベリーの方が心配になってしまう。
「気にしない気にしない。もともとお互い縁を切るつもりで家を出たんだよ? それから自力で学校に入って、自力で今の地位を手に入れたんだ。今さら何を言ってきても聞くつもりはないし、僕も『エピング』を名乗るつもりはさらさら無いしね」
そう軽く言い放ち、そしてモリスは今日もまたいつものようにこの話を打ち切るのだ。
「さあ、もうこんなつまらない話はおしまい。ああ、それとロベリー君、カルア君に関しては今回もやっぱりチーム以外秘密って事でよろしくね」
「ええ分かってます室長。『いつもどおり』って事でしょ?」
「そうそう、いつも通りいつも通り。世は全てこともなしってね」
「違いますよ室長。いつも通り『ことがありまくり』ですって……」
134
あなたにおすすめの小説
一流冒険者トウマの道草旅譚
黒蓬
ファンタジー
主人公のトウマは世界の各地を旅しながら、旅先で依頼をこなす冒険者。
しかし、彼には旅先で気になるものを見つけると寄らずにはいられない道草癖があった。
そんな寄り道優先の自由気ままなトウマの旅は、今日も新たな出会いと波乱を連れてくる。
35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~
月神世一
ファンタジー
紹介文
「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」
そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。
失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。
「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」
手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。
電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。
さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!?
森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、
罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、
競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。
これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。
……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!
極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――
銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」
世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。
魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。
彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。
一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。
構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。
彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。
「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」
暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。
管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。
これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。
※アルファポリスで先行で公開されます。
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた
Mr.Six
ファンタジー
仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。
訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。
「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」
そう開き直り、この世界を探求することに――
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
不死王はスローライフを希望します
小狐丸
ファンタジー
気がついたら、暗い森の中に居た男。
深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。
そこで俺は気がつく。
「俺って透けてないか?」
そう、男はゴーストになっていた。
最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。
その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。
設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる