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第75話 あなたはテンプレを信じますか? #1
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「おはよー! みんな見て! これがあたし達の遠征馬車よ!」
朝日を浴びたその馬車から満面の笑みを浮かべて降りてきたアーシュに……どこからツッコんだらいいんだろう。
困った僕がみんなを見回すと、みんなもやっぱり僕と同じちょっと困ったような表情で固まってた。そしてじっと僕を見つめるクーラ先生。
あ、はい。僕が何とかしろって事ですね。
「おはようアーシュ。それがアーシュが手配したっていう馬車?」
「ええ、そうよ。まあ手配って言うか、お祖母様に相談したら用意してくれたんだけど――」
先生! 犯人を特定しました!
「そっかぁ……それで、『あたし達の』っていうのはどういう事?」
「それがね、実はお祖母様に馬車の事を相談したら『あんた達がパーティを組むって聞いた時に作らせといたよ。こんな事もあろうかとね』だって。だからこの馬車は、あたし達オーディナリーダ専用馬車ってわけ」
なるほど、まずひとつめは解消。
じゃあ次いくよ?
「それでアーシュ、この馬車って……見るからに普通じゃないよね?」
「えっ、そう? 普通の箱形馬車に見えるけど?」
うーん、これってアーシュは気付いている? いない?
「ちなみにベルベルさんはこの馬車について何か説明とかしてた?」
「ああ、それだったら……ああそうそう、『ちょっと王宮に掛け合って、老朽化した最新鋭の軍用馬車の処分を請け負ってやったんだよ。有料でね』って言ってたかな」
ふーん……
『最新鋭』が何故か『老朽化』したのかぁ。
それを王宮から引き取ったのかぁ。
しかも処分料まで取ったのかぁ。
……ちょっとヒド過ぎない?
「それでね、その馬車を受け取った処分料で民間の馬車に見えるように改造したんだって。ちょうど再利用出来そうな馬車があったなんて、凄くラッキーだったわよね」
アーシュ、そこはもう少し疑った方が……
「でもこれ後で怒られたりとかしないのかな? 何だかすっごく心配なんだけど……」
「大丈夫よ。だって『ミレアのところで負荷実験中に中破して修理しきれなかった車両なんだよ。ま、もう今は完璧なコンディションだけどね』って言ってたから」
先生! 共犯者の存在を確認しました!
「『修理しきれなかった』けど『今は完璧なコンディション』って、もの凄く違和感が……」
「まあ正直そこはあたしも『何それ!?』って思ったけど……でもあたしは、お祖母様を信じる!」
そうか……そうだよね! 身内を疑うなんて最低の行為だった。僕も疑うのは止めて信じる事にするよ!
「お祖母様ならきっと、私達に火の粉が振り掛からないように上手く処理してくれたって!」
――って、その事は僕も全然疑ってないよぉーーっ!!
ふぅ……取り敢えず話を進めよう。
「ところでアーシュ、『民間の馬車に見えるように』ってのは絶対失敗してると思うよ?」
「え? そうかな……普通の馬車に見えるけど?」
そっかー、素で気付いてなかったかー。
「ええっと、馬車の足回りがゴツい金属製で木材も見るからに固くて頑丈っぽいし、あちこち金属で補強してるし、普通より窓が小さいし、窓と窓の間にある長細い穴みたいなのってきっと矢狭間だし、……それに何より全部の窓に太い鉄格子が付いてるし!!」
もう見るからに軍用馬車だよ! 逆にどの辺りを民間に寄せたのか教えてよ!!
「何よ、うちの遠出用の馬車もこんな感じよ? 普通でしょ?」
えっ、ホントに?
アーシュの家ではこれが普通……
みんな、外観についてはもう諦めるしかなさそうだよ? コレが普通みたいだから。
「さあ、外観はもう十分見たでしょ? そろそろ中に入るわよ!」
って、アーシュに手を引かれて馬車に入ったんだけど……
はは……
広めのテーブルを挟んて両側に向い合う、ゆったりとしたベンチシート。そこから目を上に向けると、高い天井と高級そうな照明具が目に入る。その天井といえば、一部が透き通っていて空が見える解放感たっぷり仕様。外から見た時は凄く小さかった筈の窓は、中からはかなり大きくてこちらも解放感たっぷり――ってこれ、鉄格子は見えないようになってるのかな?
で、次に室内だけど……広い部屋は壁沿いに上着掛けと荷物置きがあって、奥に見えるのは……もしかしてキッチン?
目の前に視線を戻すと、広いテーブルは立派な一枚板みたいだ。シートもかなり良い品みたいで、程よい弾力は必要以上に体が沈まない丁度良さ。ってこれ、クッションいらなかったんじゃあ……
あれっ、壁に扉がある。開いてみると……
「……階段?」
「2階は寝室よ!」
……どうやら馬車での移動中はテントも要らないみたいだ。
「どう? 中々いいでしょ? やっぱり冒険者たるもの、自分達の馬車にもそれなりに気を使わなくっちゃね!」
はは、どこを民間に寄せたのかっていう疑問は、もう完全に解消したよ。
これ、内装を目一杯民間に寄せてきたんだ。それもベルマリア家基準の『民間』に。
外装は多分、王宮用の軍用車に見えないようにしたくらいなんじゃないかなあ?
それにしても――
「これ、『空間拡張』っていうのだよね。こうして見るのは初めてだけど、実際の大きさよりもこんなに広げられるなんて本当に凄いや!」
「そうね、これ正直うちの馬車よりも凄いわよ。あ、そう言えばお祖母様、モリスさんにも改造を手伝ってもらったって言ってたっけ。もしかしてこれの事かな」
「ああ、だったらこれ、絶対途中で楽しくなっちゃってやり過ぎたパターンだ……」
「荷重がかかる先は全部拡張した別の空間に寄せてあって、人や荷物をどれだけ積んでも馬と車両には全く負荷が掛からないんだって。それに車両の重量自体もある程度そっちに逃がしてあるから馬一頭だけでも曳けるらしわ。モリスさんって凄いわね」
「うん、凄い人なんだ。……色んな意味で」
朝日を浴びたその馬車から満面の笑みを浮かべて降りてきたアーシュに……どこからツッコんだらいいんだろう。
困った僕がみんなを見回すと、みんなもやっぱり僕と同じちょっと困ったような表情で固まってた。そしてじっと僕を見つめるクーラ先生。
あ、はい。僕が何とかしろって事ですね。
「おはようアーシュ。それがアーシュが手配したっていう馬車?」
「ええ、そうよ。まあ手配って言うか、お祖母様に相談したら用意してくれたんだけど――」
先生! 犯人を特定しました!
「そっかぁ……それで、『あたし達の』っていうのはどういう事?」
「それがね、実はお祖母様に馬車の事を相談したら『あんた達がパーティを組むって聞いた時に作らせといたよ。こんな事もあろうかとね』だって。だからこの馬車は、あたし達オーディナリーダ専用馬車ってわけ」
なるほど、まずひとつめは解消。
じゃあ次いくよ?
「それでアーシュ、この馬車って……見るからに普通じゃないよね?」
「えっ、そう? 普通の箱形馬車に見えるけど?」
うーん、これってアーシュは気付いている? いない?
「ちなみにベルベルさんはこの馬車について何か説明とかしてた?」
「ああ、それだったら……ああそうそう、『ちょっと王宮に掛け合って、老朽化した最新鋭の軍用馬車の処分を請け負ってやったんだよ。有料でね』って言ってたかな」
ふーん……
『最新鋭』が何故か『老朽化』したのかぁ。
それを王宮から引き取ったのかぁ。
しかも処分料まで取ったのかぁ。
……ちょっとヒド過ぎない?
「それでね、その馬車を受け取った処分料で民間の馬車に見えるように改造したんだって。ちょうど再利用出来そうな馬車があったなんて、凄くラッキーだったわよね」
アーシュ、そこはもう少し疑った方が……
「でもこれ後で怒られたりとかしないのかな? 何だかすっごく心配なんだけど……」
「大丈夫よ。だって『ミレアのところで負荷実験中に中破して修理しきれなかった車両なんだよ。ま、もう今は完璧なコンディションだけどね』って言ってたから」
先生! 共犯者の存在を確認しました!
「『修理しきれなかった』けど『今は完璧なコンディション』って、もの凄く違和感が……」
「まあ正直そこはあたしも『何それ!?』って思ったけど……でもあたしは、お祖母様を信じる!」
そうか……そうだよね! 身内を疑うなんて最低の行為だった。僕も疑うのは止めて信じる事にするよ!
「お祖母様ならきっと、私達に火の粉が振り掛からないように上手く処理してくれたって!」
――って、その事は僕も全然疑ってないよぉーーっ!!
ふぅ……取り敢えず話を進めよう。
「ところでアーシュ、『民間の馬車に見えるように』ってのは絶対失敗してると思うよ?」
「え? そうかな……普通の馬車に見えるけど?」
そっかー、素で気付いてなかったかー。
「ええっと、馬車の足回りがゴツい金属製で木材も見るからに固くて頑丈っぽいし、あちこち金属で補強してるし、普通より窓が小さいし、窓と窓の間にある長細い穴みたいなのってきっと矢狭間だし、……それに何より全部の窓に太い鉄格子が付いてるし!!」
もう見るからに軍用馬車だよ! 逆にどの辺りを民間に寄せたのか教えてよ!!
「何よ、うちの遠出用の馬車もこんな感じよ? 普通でしょ?」
えっ、ホントに?
アーシュの家ではこれが普通……
みんな、外観についてはもう諦めるしかなさそうだよ? コレが普通みたいだから。
「さあ、外観はもう十分見たでしょ? そろそろ中に入るわよ!」
って、アーシュに手を引かれて馬車に入ったんだけど……
はは……
広めのテーブルを挟んて両側に向い合う、ゆったりとしたベンチシート。そこから目を上に向けると、高い天井と高級そうな照明具が目に入る。その天井といえば、一部が透き通っていて空が見える解放感たっぷり仕様。外から見た時は凄く小さかった筈の窓は、中からはかなり大きくてこちらも解放感たっぷり――ってこれ、鉄格子は見えないようになってるのかな?
で、次に室内だけど……広い部屋は壁沿いに上着掛けと荷物置きがあって、奥に見えるのは……もしかしてキッチン?
目の前に視線を戻すと、広いテーブルは立派な一枚板みたいだ。シートもかなり良い品みたいで、程よい弾力は必要以上に体が沈まない丁度良さ。ってこれ、クッションいらなかったんじゃあ……
あれっ、壁に扉がある。開いてみると……
「……階段?」
「2階は寝室よ!」
……どうやら馬車での移動中はテントも要らないみたいだ。
「どう? 中々いいでしょ? やっぱり冒険者たるもの、自分達の馬車にもそれなりに気を使わなくっちゃね!」
はは、どこを民間に寄せたのかっていう疑問は、もう完全に解消したよ。
これ、内装を目一杯民間に寄せてきたんだ。それもベルマリア家基準の『民間』に。
外装は多分、王宮用の軍用車に見えないようにしたくらいなんじゃないかなあ?
それにしても――
「これ、『空間拡張』っていうのだよね。こうして見るのは初めてだけど、実際の大きさよりもこんなに広げられるなんて本当に凄いや!」
「そうね、これ正直うちの馬車よりも凄いわよ。あ、そう言えばお祖母様、モリスさんにも改造を手伝ってもらったって言ってたっけ。もしかしてこれの事かな」
「ああ、だったらこれ、絶対途中で楽しくなっちゃってやり過ぎたパターンだ……」
「荷重がかかる先は全部拡張した別の空間に寄せてあって、人や荷物をどれだけ積んでも馬と車両には全く負荷が掛からないんだって。それに車両の重量自体もある程度そっちに逃がしてあるから馬一頭だけでも曳けるらしわ。モリスさんって凄いわね」
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