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第69話 皆さんにお礼がしたくて、僕は… #3
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「色の付与? そんな事も出来たんだ……ロベリーから教わったの?」
「いえ。ちょっと試してみたら出来て。属性が付与出来るんなら色だって出来るんじゃないかな――って」
「へぇ、面白い! 今度ロベリーにも教えてあげたら?」
「そうですね。言ってみます」
「魔石って事は、やっぱり何か付与してるのよね?」
「はい、便利機能をいくつか。研ぐ必要が無いように刃先だけ【融解】【凝固】で整えるとか、汚れや切った物が貼り付かないように【分離】とか」
「これまで時空間魔法でやってた事を今回は錬成で実現したって事ね」
「はい。出来るだけシンプルにしてみたくって」
「うん、いいと思う」
ピノさんからも高評価。でもこれだけじゃないんだな。
「あとノルトのオリジナル錬成を応用して、刃を立てたらイメージ通りのカットができる機能を付けてみたんです!」
「え!? ……それって凄い事なんじゃないの?」
「ノルトのをちょっと変化させただけだから結構簡単に出来ましたよ。試してみてもらっていいですか?」
ピノさんは包丁を手に野菜と向き合う。
ジャガイモに刃を当てて『皮むき』――
ニンジンに刃を当てて『皮むき』――
玉ねぎに刃を当てて『皮むき』――
ジャガイモに刃を当てて『角切り』――
ニンジンに刃を当てて『角切り』――
玉ねぎに刃を当てて『ざく切り』――
ブロック肉に刃を当てて『角切り』――
「……あのカルア君? 私、刃を当てただけなんだけど……」
「やった! 成功です! ちゃんとイメージ通りでしたよね?」
「ええ、イメージ通りよ。でも……」
そこで言葉を止め、ピノさんは凄く真剣な表情で僕を見つめる。
「カルア君、これダメ。これは付けちゃいけない機能よ!」
えっ、どうして……?
「聞いてカルア君。これは私の意見なんだけど、何でも便利にするのって必ずしも正しい事じゃないって気がするの。確かに刃を当てただけで何でもイメージ通りに切れちゃうなんて、すっごく便利で素晴らしい機能だと思う。でも私がこれを使ってご飯を作った時、胸を張って『私が作りました』って言えない気がする。多分『最初から出来上がっていた料理をそのまま出した』みたいな気持ちになっちゃうと思うの」
ええっと……?
「例えばそう……カルア君が森に狩りに行った時に、突然目の前でフォレストブルが岩に頭をぶつけて死んじゃったとするでしょ。そのフォレストブルを持って帰ってきて、『僕が狩りました』って私に言える?」
「そ、そんな事絶対に言えません!」
「でしょ? それと同じなの」
そんな……
「多分これを貰った人も同じ気持ちになるんじゃないかな。それに、もしこれが当たり前の機能になっちゃうとね、世界中で『包丁で食材を切る』っていう技術が失われると思うの。そうしたらどうなると思う?」
どうって、それは……あ。
「ね? 世界中の誰も彼もがカルア君の包丁無しじゃ料理出来なくなっちゃう」
「それが『便利にする事が正しい事じゃない』っていう事――なんですね?」
「うん、分かってくれた?」
「はいピノさん、よく分かりました。僕は……みんなから『料理する事』を奪っちゃうところだったんですね」
そんな僕の言葉に、ピノさんはニッコリと笑って頷いた。
「多分だけど……これの行き着く先って『鍋の中に材料を入れるだけでカレヱライスが完成する』魔道具になると思うの。ねえカルア君、そんな魔道具……作れるんじゃない?」
……作れそう。
「はい、作れると思います」
「でしょ? もしその魔道具に材料を入れたのが私だとしても、それってもう『私の料理』とは言えないよね? それは味が良いだけの味気ない料理。だからね、やっぱり『便利』には超えちゃいけない一線がある――って、そう思うの」
それから僕は――
ピノさんに言われた通り包丁から錬成カットの機能を外して――
その包丁と鍋のセットを奥様方に配って――
使い方を見せたら狂喜乱舞されて――
そんな、とっても大事な事を考えさせられた――でもとっても楽しい夜でした。
ああそうそう、錬成カットした食材はそのままボックスに収納した。僕がいつか料理に使えるようにってね。
それからピノさんは改めてカレヱライスを作ってくれて――
それはやっぱりとても美味しい料理だって感じた。
翌日――
今日もピノさんに連れられてやって来たネッガーをギルマスと一緒に森へと送り届け、そこからまたまた錬成の時間。
今日作るのもまた鍋と包丁のセットなんだけど、昨日作ったのとはちょっと違う。だって――
今日のは、お世話になった冒険者のみんなへのプレゼントだからね。
一番の違いは携帯性。
鍋って嵩張るから持ち歩くのが大変なんだよ。だからこれもまた錬成の応用で変形する機能を付けたんだ。持ち歩く時は四角いブロックの形、料理する時は鍋の形にってね。
この機能はみんなの迷惑にはならないはず。魔法の鞄を使うみたいなものだし。
あと、水のお取り寄せはヒトツメの街の一番大きな井戸からにしておいた。
この機能は外す事も考えたんだけど、水は命に直結するから付ける事に決めたんだ。
包丁には一つだけ機能を追加した。包丁は解体にも使うんじゃないかって考えて、刃先の鋭さを調整出来る機能を付けたんだ。
解体って、切れ味が鋭い方がいい時とそうでない時がある。例えば皮を剥ぐ時とかは、鋭すぎると穴が空いちゃったり切り落としちゃったりするから。
日帰りだったら狩った魔物は貸し出し用の魔法鞄に入れるだけだけど、野営する時には食材にするから、きっと重宝するはず。
みんな喜んでくれるといいなあ。
「いえ。ちょっと試してみたら出来て。属性が付与出来るんなら色だって出来るんじゃないかな――って」
「へぇ、面白い! 今度ロベリーにも教えてあげたら?」
「そうですね。言ってみます」
「魔石って事は、やっぱり何か付与してるのよね?」
「はい、便利機能をいくつか。研ぐ必要が無いように刃先だけ【融解】【凝固】で整えるとか、汚れや切った物が貼り付かないように【分離】とか」
「これまで時空間魔法でやってた事を今回は錬成で実現したって事ね」
「はい。出来るだけシンプルにしてみたくって」
「うん、いいと思う」
ピノさんからも高評価。でもこれだけじゃないんだな。
「あとノルトのオリジナル錬成を応用して、刃を立てたらイメージ通りのカットができる機能を付けてみたんです!」
「え!? ……それって凄い事なんじゃないの?」
「ノルトのをちょっと変化させただけだから結構簡単に出来ましたよ。試してみてもらっていいですか?」
ピノさんは包丁を手に野菜と向き合う。
ジャガイモに刃を当てて『皮むき』――
ニンジンに刃を当てて『皮むき』――
玉ねぎに刃を当てて『皮むき』――
ジャガイモに刃を当てて『角切り』――
ニンジンに刃を当てて『角切り』――
玉ねぎに刃を当てて『ざく切り』――
ブロック肉に刃を当てて『角切り』――
「……あのカルア君? 私、刃を当てただけなんだけど……」
「やった! 成功です! ちゃんとイメージ通りでしたよね?」
「ええ、イメージ通りよ。でも……」
そこで言葉を止め、ピノさんは凄く真剣な表情で僕を見つめる。
「カルア君、これダメ。これは付けちゃいけない機能よ!」
えっ、どうして……?
「聞いてカルア君。これは私の意見なんだけど、何でも便利にするのって必ずしも正しい事じゃないって気がするの。確かに刃を当てただけで何でもイメージ通りに切れちゃうなんて、すっごく便利で素晴らしい機能だと思う。でも私がこれを使ってご飯を作った時、胸を張って『私が作りました』って言えない気がする。多分『最初から出来上がっていた料理をそのまま出した』みたいな気持ちになっちゃうと思うの」
ええっと……?
「例えばそう……カルア君が森に狩りに行った時に、突然目の前でフォレストブルが岩に頭をぶつけて死んじゃったとするでしょ。そのフォレストブルを持って帰ってきて、『僕が狩りました』って私に言える?」
「そ、そんな事絶対に言えません!」
「でしょ? それと同じなの」
そんな……
「多分これを貰った人も同じ気持ちになるんじゃないかな。それに、もしこれが当たり前の機能になっちゃうとね、世界中で『包丁で食材を切る』っていう技術が失われると思うの。そうしたらどうなると思う?」
どうって、それは……あ。
「ね? 世界中の誰も彼もがカルア君の包丁無しじゃ料理出来なくなっちゃう」
「それが『便利にする事が正しい事じゃない』っていう事――なんですね?」
「うん、分かってくれた?」
「はいピノさん、よく分かりました。僕は……みんなから『料理する事』を奪っちゃうところだったんですね」
そんな僕の言葉に、ピノさんはニッコリと笑って頷いた。
「多分だけど……これの行き着く先って『鍋の中に材料を入れるだけでカレヱライスが完成する』魔道具になると思うの。ねえカルア君、そんな魔道具……作れるんじゃない?」
……作れそう。
「はい、作れると思います」
「でしょ? もしその魔道具に材料を入れたのが私だとしても、それってもう『私の料理』とは言えないよね? それは味が良いだけの味気ない料理。だからね、やっぱり『便利』には超えちゃいけない一線がある――って、そう思うの」
それから僕は――
ピノさんに言われた通り包丁から錬成カットの機能を外して――
その包丁と鍋のセットを奥様方に配って――
使い方を見せたら狂喜乱舞されて――
そんな、とっても大事な事を考えさせられた――でもとっても楽しい夜でした。
ああそうそう、錬成カットした食材はそのままボックスに収納した。僕がいつか料理に使えるようにってね。
それからピノさんは改めてカレヱライスを作ってくれて――
それはやっぱりとても美味しい料理だって感じた。
翌日――
今日もピノさんに連れられてやって来たネッガーをギルマスと一緒に森へと送り届け、そこからまたまた錬成の時間。
今日作るのもまた鍋と包丁のセットなんだけど、昨日作ったのとはちょっと違う。だって――
今日のは、お世話になった冒険者のみんなへのプレゼントだからね。
一番の違いは携帯性。
鍋って嵩張るから持ち歩くのが大変なんだよ。だからこれもまた錬成の応用で変形する機能を付けたんだ。持ち歩く時は四角いブロックの形、料理する時は鍋の形にってね。
この機能はみんなの迷惑にはならないはず。魔法の鞄を使うみたいなものだし。
あと、水のお取り寄せはヒトツメの街の一番大きな井戸からにしておいた。
この機能は外す事も考えたんだけど、水は命に直結するから付ける事に決めたんだ。
包丁には一つだけ機能を追加した。包丁は解体にも使うんじゃないかって考えて、刃先の鋭さを調整出来る機能を付けたんだ。
解体って、切れ味が鋭い方がいい時とそうでない時がある。例えば皮を剥ぐ時とかは、鋭すぎると穴が空いちゃったり切り落としちゃったりするから。
日帰りだったら狩った魔物は貸し出し用の魔法鞄に入れるだけだけど、野営する時には食材にするから、きっと重宝するはず。
みんな喜んでくれるといいなあ。
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