スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第43話 一部副音声でお送りしています? #2

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――『魔法の鞄とかってすごく便利ですから、【ボックス】も付与しました。何だか僕の【ボックス】って魔力の負担が少ないみたいなので、容量をでっかくする事が出来ました。だから多分大丈夫だと思いますけど、もし足りなくなったら言って下さいね。何とかしますから』

「は、ははは。【ボックス】も、って――ひとつの魔石にそんなに詰め込めるものなのかい? これはカルア君が凄いのかロベリー君の付与術が凄いのか……。どちらにしてもあのペンダントはもう『魔道具』とか呼べるレベルのものじゃないよ。ピノ君、あれ普段使い出来るかなあ。……ああ、守り石として渡されたって事は、普段から身に着けとかない訳にはいかないのか。あーあ、気の毒に」
「あのモリス、大事なところを見落としてますよ。カルア殿は『容量をでっかく』と言ってました。それってどれくらいの容量なんでしょうか?」
「っ!?」



――『エラシコ!?』

「逆方向へのフェイントに引っ掛かった――ってかい。また分かり難いところを……」
「ししょー、ここは拾わなくていいですよー」



――『こちらはですね、【通信】の機能が付いてます。えっと――これです、これが通信相手なんですけど』

「まさか、昨日見たばかりの通信具をもうコピーしたってのかい? とんでもないね!」
「ブレスレット型かぁ、それもいいなあ。次世代機の参考にさせてもらおうかな」


――『こんな感じで相手の顔を見ながら話をする事が出来ます。こちらにはほら、ピノさんの顔が映ってますよ。自分の顔じゃなくって他に見せたいものがある場合は、そう指示すれば相手にはそれが映ります。自分の見ているものを相手に見せたい時に使って下さいね。あと、応答する時の指示で何も見せないようにも出来ます』

「え?」
「モリス、あれあんたの通信具よりも性能がいいんじゃないかい? 実用面でもよく考えられてるみたいだしねえ」
「ははは、インフラ技術室長、カルア君に代わってもらおうかな……」


――『私が一番通信したい人、よね? カルア君、私の通信相手になってくれる?』
――『はっ、はい! よろこんで!!』

「「きゃぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」
「校長……」
「あははは、あの校長が乙女になっちゃったねぇ」


――『あ、はい。えっとですね、その首飾り、落としたり盗まれたりしないように、ピノさんの体から外れた瞬間にブレスレットの中に【収納】されるようになっています。ブレスレットにもボックスを付けておきましたから。あ、こちらも容量はでっかくしてありますから、よかったら使って下さいね』

「……」
「……」
「……」
「ブレスレットはペンダントの盗難対策グッズ、だそうですよモリス」
「ははは、ブレスレットの方だけでも途轍もない価値があるんだけど……分かってるのかな?」


――『カルア君、気にするところはそこじゃないの。そこじゃないのよぉぉ……』

「これは同意せざるを得ないですね」
「ピノ様、かわいそう」
「ふーん、ピノのやつ、昔あれだけ散々やらかしてきたってのに、カルアには随分と手を焼いてるじゃないか。それとも多少は常識が身に付いたって事かねえ。そうだったら少しは気が休まるってもんだが……。ところでミレア、あんたホントにこれからピノの事そう呼ぶ気なのかい……?」

「ははは……ああそうか、今回もまたこのパターンだったかぁ。確かに付与したそれぞれ一つ一つは想定内だからね。これはセンサーに引っ掛からなくっても仕方ない、けど……この複合っぷりがあのモヤモヤの正体だったって訳かぁ。いや、これはどうやって精度を高めたらいいんだろう? アルゴリズムを改良して正式版の通信具に反映させるには……?」

「はぁ……まあ取り敢えず終わったようだし、そろそろあたしの店に戻ろうかね」



――あ、みんな戻ってきた。
「ただいまー。カルア君どうだった? おっ、ピノ君が着けてるペンダント、あれが君のプレゼントって事なのかい?」
「はい、おかげでピノさんに渡す事が出来ました。モリスさん、ありがとうございました」
「あははは、そう素直にお礼を言われると心が痛むねえ」
「……え?」
「ああゴメン、こっちの話だから気にしないで」
「あ、はい」


「ピノ様、そのペンダントすっごく似合ってる-」
「ありがとうございます……『ピノ様』?」
「うん、私の女子力アップのししょーになってもらいたいなあって。でも『ししょー』って呼ぶとししょーとどっちかわからなくなっちゃうから『ピノ様』にしたんだよ」
「女子力――ですか? えっと、師匠とか言われても、教えられる事とか無いので――」
「うん、気にしないで。技を盗む気概で頑張るから」
「あの、お断りする事は――」
「無理」
「えええぇぇ……」


「おや、ミレアさん、何か落としましたよ? ってこれ王宮魔法師の徽章じゃないですか! こんな大切なものを――」
「たいへーん。ありがとうございますオートカ先輩。あの、ひとつお願いがあるんですけど」
「えっと、な、なんでしょう」
「その……、つけてくれます?」
「「!?」」


「あれ、ししょー、この魔道具ってこれ単体で使うんでしたっけ?」
「ああそれかい? それだったらほら、このブレスレットと対になってるんだよ」
「そっかー、じゃあ、これも、つけてもらって……いいです?」
「「!!??」」


「ねえカルア君、私の気のせいかしら? なんだか……」
「多分間違いないと思います。これ絶対やられてますよ」
「そうよね、やっぱり……」

ピノさんと二人でギルマスに視線を向けると……
すっ
気まずそうな顔で目を逸らされた。
「「くっ、確定か!」」



さっきまで穏やかだった部屋の中には今、肌を刺す冷気が渦まいている。
その渦の中心はもちろん――

「それでベルベルさん? これは一体どういう事なのか、聞かせてくれますか?」
「おっ、落ち着きなピノ! モリスだ、モリスが言い出したんだよ!!」
「――へえ」
「ぼぼぼ僕がかい? いや、そう言われれば確かにその通りなんだけど、僕は付与の内容に問題があるんじゃないかって心配でね!? ほっ、ほら、実際その通りだっただろう!?」

「――で、ギルマスは止めてくれなかったんですか?」
「いっ、いや! 私とオートカ氏は反対していたのだが、その最中で強制的に転移されてだな――」
「ふーん。じゃあさっきの揶揄うような行動は?」
「我々は一切感知していない! 全てはあの二人の悪ふざけだ!!」

「――ベルベルさん? ミレアさん?」
「ひえっ! おっ、老い先短い年寄りを虐めるもんじゃないよ、ピノ!?」
「ご、ごめんなさぁーーい、ピノ様ぁぁぁ!!」

怒りに満ちていたピノさんの表情は、何かを我慢するような表情へと変わってゆき、そして泣く寸前の小さな子供みたいな表情になって――
「もう! もうっ!! みんな大ッキライ!! ふえーーーーーん……」
――冷気の消え失せた部屋の中心で泣き崩れた。

それからピノさんは泣き続け、そんなピノさんにみんなは必死に土下座して謝って……
そして僕も――
「ごめんなさいピノさん。ホントは晩御飯の後とかに渡すつもりだったのに、モリスさんの口車に乗せられちゃったから……。もっと注意してよく考えればよかったんです」
「えぐっ、ひっく……、カルア君は悪くないよー。それにこんなステキなプレゼントを……それなのに、この人達が――」
「「「「「すっ、すみませんでした、ピノ様!!!」」」」」


やがてようやく落ち着いたピノさんは、泣きやみ、そして――
「……わかりました、今回はもういいです。でも――でも次は無いですからね!!」
「「「「「はいっ!」」」」」



そしてその5分後……
「それでカルア君、あのペンダントへの付与だけどさあ……」
「ししょー、さっきのピノ様の冷気って、あれ魔法ですかね-」
「あれはあたしにも分からないんだよ。昔っから時々あってさ――」
「そう言えばこの間僕の研究室でもあったよ。あれは確かロベリー君が……」

そこにはまるで何事も無かったみたいにいつも通りのみんなの姿が。
ほんとにもう、この人たちは……ねえピノさん?

「「はあああぁぁぁ…………」」



▽▽▽▽▽▽
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