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8月6日(日)
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亀岡から山間を通り抜け、昨日も見たような川沿いの道をクネクネ進む。信号を越えてしばらく行くと、見通しの良い直線道路が見えてきた。車で実家まで行き来する時はよく通る道なのに、もう少し行ってサイゼリヤ、その先のコーナンぐらいまで行かないと見慣れた景色という感覚にならない。
「このまま、真っ直ぐで良いんだっけ?」
サイゼリヤの看板が左手前に見えてきたタイミングで、隣でハンドルを握る雄輔が口を開いた。次の信号を右折してもいいけど、まだ真っ直ぐ行ったルートの方が、私としては見慣れている。
「うん。まだ道なりで。業務スーパーが見えてくるから、その次の信号まではこのままで」
「りょーかい」
雄輔は軽い調子で返事をすると、私の注文通りに信号を直進する。右側にコーナンの看板が見えてきて、だんだん生活圏に戻ってきたって感じがしてくる。業務スーパーの前は日曜日の夕方だというのに、駐車場に入れない車が列をなしていた。それを横目に道なりにカーブを曲がると、次の信号が見えてくる。
「次は右折だっけ?」
「そう。手前の横断歩道をさらに右折ね。グルっと曲がって細い方」
「ほ~い」
雄輔は私に指示されるがまま、喫茶店の看板が置いてある細い道へ車を入れる。目の前に街の電気屋さんを見ながら、一方通行の狭い道を西へ進む。
「で、この後川沿いに出て、アルプラザでいいんだっけ?」
雄輔は左右の細道にも気をつけながら、前を見たまま言った。
「買い物してから、家まで送らなくて良いの?」
「そこまで付き合ってもらうのは、流石に気が引けるというか」
「別に良いよ。今から帰ったって、どうせ一人だし。お義兄さんにも、しばらく会ってないし」
「あれ、そうだっけ?」
月一ぐらいで康徳さんと共に、娘たちを連れて実家に帰ってるけど、雄輔は居なかったっけ。今年は牧人夫妻とやりとりする機会が多くて、実家との関係性も強くなってた気がしたけど、独身の末弟のことは記憶からすっぽり抜け落ちていたか。
「お義兄さんも忙しそうだし、邪魔になるならアルプラザで降ろして帰るけど」
雄輔は口を動かしながらハンドルを切った。車は川沿いの土手に出て、西国街道にぶつかる信号まで来た。左折すれば、すぐにアルプラザ。
カーナビの時計は、16時22分。今から折り返しで実家に帰っても、早くて18時。ここまで送ってもらったのに、降ろしてもらって適当に「さようなら」というのも可哀想か。
「ノンアルコールでも良いなら、晩ご飯ご馳走するけど?」
「え、いいの? ノンアルコールでも、何でも良いよ。じゃあ、駐車場に入れちゃうね」
雄輔は、アルプラザの裏口に回らず、駐車場の入り口へ向けて車を進めた。私はスマホを取り出して、実家宛に雄輔はうちで晩ご飯を食べてから帰る旨を伝え、康徳さん宛に雄輔の分も晩ご飯の頭数に入れてもらうよう、メッセージを送った。康徳さんからすぐに、「了解」の言葉が返ってくる。
雄輔はアルプラザの屋上駐車場へ車を止め、鼻歌まじりにシートベルトを外した。私は彼の嬉しそうな顔を見ながら、今晩の献立と、今から買わなきゃいけなかったリストとを頭に思い描いていた。
「このまま、真っ直ぐで良いんだっけ?」
サイゼリヤの看板が左手前に見えてきたタイミングで、隣でハンドルを握る雄輔が口を開いた。次の信号を右折してもいいけど、まだ真っ直ぐ行ったルートの方が、私としては見慣れている。
「うん。まだ道なりで。業務スーパーが見えてくるから、その次の信号まではこのままで」
「りょーかい」
雄輔は軽い調子で返事をすると、私の注文通りに信号を直進する。右側にコーナンの看板が見えてきて、だんだん生活圏に戻ってきたって感じがしてくる。業務スーパーの前は日曜日の夕方だというのに、駐車場に入れない車が列をなしていた。それを横目に道なりにカーブを曲がると、次の信号が見えてくる。
「次は右折だっけ?」
「そう。手前の横断歩道をさらに右折ね。グルっと曲がって細い方」
「ほ~い」
雄輔は私に指示されるがまま、喫茶店の看板が置いてある細い道へ車を入れる。目の前に街の電気屋さんを見ながら、一方通行の狭い道を西へ進む。
「で、この後川沿いに出て、アルプラザでいいんだっけ?」
雄輔は左右の細道にも気をつけながら、前を見たまま言った。
「買い物してから、家まで送らなくて良いの?」
「そこまで付き合ってもらうのは、流石に気が引けるというか」
「別に良いよ。今から帰ったって、どうせ一人だし。お義兄さんにも、しばらく会ってないし」
「あれ、そうだっけ?」
月一ぐらいで康徳さんと共に、娘たちを連れて実家に帰ってるけど、雄輔は居なかったっけ。今年は牧人夫妻とやりとりする機会が多くて、実家との関係性も強くなってた気がしたけど、独身の末弟のことは記憶からすっぽり抜け落ちていたか。
「お義兄さんも忙しそうだし、邪魔になるならアルプラザで降ろして帰るけど」
雄輔は口を動かしながらハンドルを切った。車は川沿いの土手に出て、西国街道にぶつかる信号まで来た。左折すれば、すぐにアルプラザ。
カーナビの時計は、16時22分。今から折り返しで実家に帰っても、早くて18時。ここまで送ってもらったのに、降ろしてもらって適当に「さようなら」というのも可哀想か。
「ノンアルコールでも良いなら、晩ご飯ご馳走するけど?」
「え、いいの? ノンアルコールでも、何でも良いよ。じゃあ、駐車場に入れちゃうね」
雄輔は、アルプラザの裏口に回らず、駐車場の入り口へ向けて車を進めた。私はスマホを取り出して、実家宛に雄輔はうちで晩ご飯を食べてから帰る旨を伝え、康徳さん宛に雄輔の分も晩ご飯の頭数に入れてもらうよう、メッセージを送った。康徳さんからすぐに、「了解」の言葉が返ってくる。
雄輔はアルプラザの屋上駐車場へ車を止め、鼻歌まじりにシートベルトを外した。私は彼の嬉しそうな顔を見ながら、今晩の献立と、今から買わなきゃいけなかったリストとを頭に思い描いていた。
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