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11月14日(火)
康徳さんは椅子に腰掛けたままグッと上に身体を伸ばし、一気に脱力した。気持ちよさそうに声が漏れている。充実感に満ちた表情から、「一仕事終わりました」という気持ちが伝わってくる。
「行けた?」
「うん、行けた」
ほぼ鸚鵡返しに、力強い声が帰ってくる。今のところ、二ヶ月に一回やってくる山場。今回もなんとか無事に乗り越えたらしい。
「部数は一旦、刻んで700。来年一発目で1000部かな」
「いよいよ大台じゃん」
「だね」
私の感覚としては、今月末の第四号で一気に1000部でも大丈夫な気がするけど、主宰者、編集長としての判断、戦略があるのだろう。次で1000部でも十分順調だとも思う。
「部数を伸ばすより、次の目標の毎月刊行の方が大変なんだろうな」
康徳さんは、近くで遊んでいた映美に「ねー」と語りかけるも、彼女は何のことやらさっぱりと言った様子で、首を傾げて遊びに戻った。
「文章のストックはあるけど、一気に倍はキツいよね」
漫画や表紙イラストの期日、猶予も半分になるのも楽ではない。執筆以外の事務作業、その他の業務も倍になってしまうと、「部活っぽさ」は薄れて「お仕事」になっていく。それだけでなく、単純に康徳さんを取り巻く今の体制では、その業務を捌き切るのは無理がある。
「もう少しアマチュアの手作り感で行きたい気もするし、やるならちゃんと仕事にしたい気持ちもあるし、悩ましいよね」
「充分に人が集まってくるまでは、しばらく今のままがいいんじゃない?」
「芽衣はそう思う?」
康徳さんは「それも正しいよな」と頷いた。ウェブメディアもあって、紙媒体もある後発の同人誌としては悪くない成長をしているとは思うけど、いきなり大風呂敷を広げるのは時期尚早な気がする。
執筆陣もまだまだ「濃い」だけの人もいるし、埋もれている才能に届いていない気もするし。何より、編集が足りないように思う。康徳さんの色、雑誌として守りたい空気や方向性にいきなり合致する編集者なんて、そんなにいないだろう。
「色んな人に作家の取りまとめはしてもらってるけど、ちゃんと編集を育てないとダメなんじゃない?」
「そ~なんだけどさ、『マトモな編集』も難しいし、オレっぽい感覚の編集は、育てるのはキツいかな。波長が合う人と出会う方が早い気がする」
編集としてしっかり仕事をしてもらうには、他に充分な仕事も必要だし、と彼は補足した。既にできる人の中から、合う人を見つけていく、出会うには、しばらくは今のまま部数を伸ばす他ないように思う。
「鶏か卵か。部数か編集者か。こういうとき、大抵は鶏も卵も、だよね?」
康徳さんは一人で何か考えながら、「こいつは大変だ」と呟いた。
「でも、皆んなでやればいいんじゃない? 私も手伝うし」
今度は私が映美に「ねー」と笑いかけた。彼女は私につられて嬉しそうに笑う。
「最初からそのつもりだけど、皆んなでやるのも大変なんだぞ~」
彼は笑いながら言うと、手元の大きなノートを開いた。既に色んな書き込みがしてあるページをめくり、新しく何かを書き込んでいく。まずは自分なりのプランをまとめるらしい。真剣な表情で目を輝かせながら、縦横無尽にペンを走らせていた。
「行けた?」
「うん、行けた」
ほぼ鸚鵡返しに、力強い声が帰ってくる。今のところ、二ヶ月に一回やってくる山場。今回もなんとか無事に乗り越えたらしい。
「部数は一旦、刻んで700。来年一発目で1000部かな」
「いよいよ大台じゃん」
「だね」
私の感覚としては、今月末の第四号で一気に1000部でも大丈夫な気がするけど、主宰者、編集長としての判断、戦略があるのだろう。次で1000部でも十分順調だとも思う。
「部数を伸ばすより、次の目標の毎月刊行の方が大変なんだろうな」
康徳さんは、近くで遊んでいた映美に「ねー」と語りかけるも、彼女は何のことやらさっぱりと言った様子で、首を傾げて遊びに戻った。
「文章のストックはあるけど、一気に倍はキツいよね」
漫画や表紙イラストの期日、猶予も半分になるのも楽ではない。執筆以外の事務作業、その他の業務も倍になってしまうと、「部活っぽさ」は薄れて「お仕事」になっていく。それだけでなく、単純に康徳さんを取り巻く今の体制では、その業務を捌き切るのは無理がある。
「もう少しアマチュアの手作り感で行きたい気もするし、やるならちゃんと仕事にしたい気持ちもあるし、悩ましいよね」
「充分に人が集まってくるまでは、しばらく今のままがいいんじゃない?」
「芽衣はそう思う?」
康徳さんは「それも正しいよな」と頷いた。ウェブメディアもあって、紙媒体もある後発の同人誌としては悪くない成長をしているとは思うけど、いきなり大風呂敷を広げるのは時期尚早な気がする。
執筆陣もまだまだ「濃い」だけの人もいるし、埋もれている才能に届いていない気もするし。何より、編集が足りないように思う。康徳さんの色、雑誌として守りたい空気や方向性にいきなり合致する編集者なんて、そんなにいないだろう。
「色んな人に作家の取りまとめはしてもらってるけど、ちゃんと編集を育てないとダメなんじゃない?」
「そ~なんだけどさ、『マトモな編集』も難しいし、オレっぽい感覚の編集は、育てるのはキツいかな。波長が合う人と出会う方が早い気がする」
編集としてしっかり仕事をしてもらうには、他に充分な仕事も必要だし、と彼は補足した。既にできる人の中から、合う人を見つけていく、出会うには、しばらくは今のまま部数を伸ばす他ないように思う。
「鶏か卵か。部数か編集者か。こういうとき、大抵は鶏も卵も、だよね?」
康徳さんは一人で何か考えながら、「こいつは大変だ」と呟いた。
「でも、皆んなでやればいいんじゃない? 私も手伝うし」
今度は私が映美に「ねー」と笑いかけた。彼女は私につられて嬉しそうに笑う。
「最初からそのつもりだけど、皆んなでやるのも大変なんだぞ~」
彼は笑いながら言うと、手元の大きなノートを開いた。既に色んな書き込みがしてあるページをめくり、新しく何かを書き込んでいく。まずは自分なりのプランをまとめるらしい。真剣な表情で目を輝かせながら、縦横無尽にペンを走らせていた。
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