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幕間2:浜名湖SA
幕間2-1:浜名湖SA/仲間たち
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俺たちはトレーラーの中に居た。
貨物輸送の深夜便に偽装した大型トレーラー、その中に俺・フォーとエイトのおっさん、そして、俺とおっさんの仲間が何人か乗っていた。トレーラーを運転しているのはエイトのおっさんの子分格の一人だ。
トレーラーの中は偽装されて隠し客室が外部からはわからないようになっている。俺たちが長距離移動する際によくつかう車両だった。
俺たちは一路、東名道を走っていたが、静岡県の浜名湖SAの下り駐車場の片隅にトレーラーを横付けする。ドライバーの休憩のためだ。
ちなみに――
俺の率いるチーム『チーム4』は全員アバターだが、
おっさんの率いるチーム『エイト組』は必ずしもアバターではない。
ドライバーは素面の顔出しだったりする。
まぁ、アバターのメカニック体そのままではトレーラーを運転していて怪しまれるから仕方ないのだが――
「しかし大丈夫なのか? 顔出しで?」
俺が心配を口にすればエイトのおっさんは言う。
「変装はそこそこさせてる。免許も偽造を使わせて別人を装ってる。普通に移動しているだけなら問題は無い」
俺の不安をおっさんは一蹴する。長年の経験が有るらしく、警察に気取られずに車両を手配することなど、この人には造作も無い。そこいらがネット上でのデジタルデータでしか物事を動かせない俺なんかが真似できないところだ。
常々思う――
――この人、一体、今までに何をしてきたんだ?――
――と。
とは言え、アバターの向こうの本体素性は一切触れないのが俺たちサイレント・デルタのルールだ。
俺は、それ以上は追求せずに仲間たちに指示を出した。
「20分ほど休憩だ。トレーラーから降りるやつはアバターを立体映像偽装モードにしろ」
「オーケィ」
「わかったー」
今どきのティーンエージャーっぽい間延びした返事をするのは、今回同行させた俺の部下で――
――ID:434――、通称『3子』
――ID:464――、通称『6美』
――いずれもカモフラージュ技能に特化したアバターの保有者だ。勧誘したのは俺なのでアバターの中身は知っている。いずれも親とうまく行っていないギャル系の少女だ。
ふたりともアバターはシンプルなフィギュアロボットタイプで3子がベースカラーがライムイエロー、6美がパステルピンク、体型と身長はほぼ同じで同色の白いフード付きパーカーを愛用してる。ふたりとも気が小さくいつでも俺と一緒に居ようとする。だが、そのために努力が必要とあればどんな苦労も厭わない――そんな健気なところが気に入っていた。
「行くよ、6美」
「おっけー」
互いに合図しながらカモフラージュの立体映像偽装を作動させる。するとフード付きパーカーの中身は渋谷あたりでうろついてそうな年頃の女の子そのものの風貌になっていた。
「じゃ、リーダー」
「10分位で戻るね」
「おう」
そう言い残しながらトレーラーの後部ドアを開けてそっと出ていく。
それを見ていたエイトのおっさんが言う。
「フォー、お前も来い」
「あぁ」
おっさんは俺になにか話があるらしい。ここは素直についていくことにする。俺たちも同時にアバターの頭部を立体映像の偽装モードにして作動させる。俺が20位の若造で、エイトのおっさんが50過ぎくらいのいかつい風貌だった。禿頭にしてないのは本当にそうなのか、見栄を張っているだけなのかは分からないが。
振り返れば、エイトの配下の男たちが3人ほど残っている。トレーラーの中に設置された仮設のシートに腰掛けながら談笑していたが、俺の視線に気づいて話しかけてきた。
「俺達は気にせず行ってください」
「留守番必要でしょ?」
「そうそう」
エイト組のメンバーのアバターは親分であるエイトに習って物理機能化されている。
――ID:818―― 通称:いっぱち
――ID:858―― 通称:ごっぱち
――ID:878―― 通称:しち、または、しちはち
コイツらの場合、親分であるエイトが言いやすいように縮めた呼び方がそのまま通称になっていた。
818のいっぱちが頭部や全身各部にワイヤーリールが備わっている。
858のごっぱちが頭部が放電コイルで全身に放電ターミナルが装備されている。
878のしちは頭部が10徳ナイフのように折りたたみの特殊工具になっている。
いずれもそれぞれが一芸に秀でた武闘派だった。
エイトが彼らに告げる。
「行ってくるぞ」
「お気をつけて!」
「行ってらっしゃい!」
エイトの言葉にすぐに続いて子分たちの威勢のいい声がする。しつけられていると言うより信頼関係がはっきりしている。完全にヤクザの身内の親子関係のようだ。
事実、エイトのチーム運営はヤクザのそれそのものだった。エイトが親分でチームの部下は子分たちだ。だから誰ともなくエイトの率いる連中を『エイト組』と呼んでいるのだ。
俺も連中に右手で挨拶しながらトレーラーを降りれば、視界の片隅で奴らは会釈をしていた。連中にとって俺はオジキと言うところなのだろうか?
貨物輸送の深夜便に偽装した大型トレーラー、その中に俺・フォーとエイトのおっさん、そして、俺とおっさんの仲間が何人か乗っていた。トレーラーを運転しているのはエイトのおっさんの子分格の一人だ。
トレーラーの中は偽装されて隠し客室が外部からはわからないようになっている。俺たちが長距離移動する際によくつかう車両だった。
俺たちは一路、東名道を走っていたが、静岡県の浜名湖SAの下り駐車場の片隅にトレーラーを横付けする。ドライバーの休憩のためだ。
ちなみに――
俺の率いるチーム『チーム4』は全員アバターだが、
おっさんの率いるチーム『エイト組』は必ずしもアバターではない。
ドライバーは素面の顔出しだったりする。
まぁ、アバターのメカニック体そのままではトレーラーを運転していて怪しまれるから仕方ないのだが――
「しかし大丈夫なのか? 顔出しで?」
俺が心配を口にすればエイトのおっさんは言う。
「変装はそこそこさせてる。免許も偽造を使わせて別人を装ってる。普通に移動しているだけなら問題は無い」
俺の不安をおっさんは一蹴する。長年の経験が有るらしく、警察に気取られずに車両を手配することなど、この人には造作も無い。そこいらがネット上でのデジタルデータでしか物事を動かせない俺なんかが真似できないところだ。
常々思う――
――この人、一体、今までに何をしてきたんだ?――
――と。
とは言え、アバターの向こうの本体素性は一切触れないのが俺たちサイレント・デルタのルールだ。
俺は、それ以上は追求せずに仲間たちに指示を出した。
「20分ほど休憩だ。トレーラーから降りるやつはアバターを立体映像偽装モードにしろ」
「オーケィ」
「わかったー」
今どきのティーンエージャーっぽい間延びした返事をするのは、今回同行させた俺の部下で――
――ID:434――、通称『3子』
――ID:464――、通称『6美』
――いずれもカモフラージュ技能に特化したアバターの保有者だ。勧誘したのは俺なのでアバターの中身は知っている。いずれも親とうまく行っていないギャル系の少女だ。
ふたりともアバターはシンプルなフィギュアロボットタイプで3子がベースカラーがライムイエロー、6美がパステルピンク、体型と身長はほぼ同じで同色の白いフード付きパーカーを愛用してる。ふたりとも気が小さくいつでも俺と一緒に居ようとする。だが、そのために努力が必要とあればどんな苦労も厭わない――そんな健気なところが気に入っていた。
「行くよ、6美」
「おっけー」
互いに合図しながらカモフラージュの立体映像偽装を作動させる。するとフード付きパーカーの中身は渋谷あたりでうろついてそうな年頃の女の子そのものの風貌になっていた。
「じゃ、リーダー」
「10分位で戻るね」
「おう」
そう言い残しながらトレーラーの後部ドアを開けてそっと出ていく。
それを見ていたエイトのおっさんが言う。
「フォー、お前も来い」
「あぁ」
おっさんは俺になにか話があるらしい。ここは素直についていくことにする。俺たちも同時にアバターの頭部を立体映像の偽装モードにして作動させる。俺が20位の若造で、エイトのおっさんが50過ぎくらいのいかつい風貌だった。禿頭にしてないのは本当にそうなのか、見栄を張っているだけなのかは分からないが。
振り返れば、エイトの配下の男たちが3人ほど残っている。トレーラーの中に設置された仮設のシートに腰掛けながら談笑していたが、俺の視線に気づいて話しかけてきた。
「俺達は気にせず行ってください」
「留守番必要でしょ?」
「そうそう」
エイト組のメンバーのアバターは親分であるエイトに習って物理機能化されている。
――ID:818―― 通称:いっぱち
――ID:858―― 通称:ごっぱち
――ID:878―― 通称:しち、または、しちはち
コイツらの場合、親分であるエイトが言いやすいように縮めた呼び方がそのまま通称になっていた。
818のいっぱちが頭部や全身各部にワイヤーリールが備わっている。
858のごっぱちが頭部が放電コイルで全身に放電ターミナルが装備されている。
878のしちは頭部が10徳ナイフのように折りたたみの特殊工具になっている。
いずれもそれぞれが一芸に秀でた武闘派だった。
エイトが彼らに告げる。
「行ってくるぞ」
「お気をつけて!」
「行ってらっしゃい!」
エイトの言葉にすぐに続いて子分たちの威勢のいい声がする。しつけられていると言うより信頼関係がはっきりしている。完全にヤクザの身内の親子関係のようだ。
事実、エイトのチーム運営はヤクザのそれそのものだった。エイトが親分でチームの部下は子分たちだ。だから誰ともなくエイトの率いる連中を『エイト組』と呼んでいるのだ。
俺も連中に右手で挨拶しながらトレーラーを降りれば、視界の片隅で奴らは会釈をしていた。連中にとって俺はオジキと言うところなのだろうか?
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