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sideフィーナ
なかよし大作戦!
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無事に初夜を迎えた両親は、気恥ずかしそうにしながらも互いの気持ちを信じて関係を深めていっている。
私はというと、ちょっとした援護射撃は日常茶飯事で、毎日萌えを浴びさせてもらっている。
お父様を見送りに出た時に、少しの悪戯心もあって、口にチューすればいいのにって言ったら本当にしてくれて、耳を真っ赤にするお父様も、はわわと両頬を抑えて蹲るお母様も可愛すぎて心臓が潰れるかと思ったわ。
膝をついて動けなくなった私を呆れたようにクロエが抱き抱えて部屋に運んでくれた。
部屋に入るや否や、バタン、とベッドに仰向けに倒れた私をクロエが心配そうに覗き込んでくる。
「お嬢様。大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。危うく尊死するところだったけど」
「尊死……?」
「ええ。尊すぎて死にそうってこと。お父様とお母様が幸せそうに微笑みあってるだけで……うっ、心臓が」
先ほどの映像が脳内でフラッシュバックして心臓がギュッとなった。尊い。
「お嬢様は面白い表現をなさいますね」
私の行動を咎めずに見守ってくれているクロエには、本当に感謝している。
貴族令嬢にふさわしくないと厳しく躾けられてもおかしくない行動をしている自覚はある。
あ、もちろん必要な勉強はしているわよ。両親の顔に泥を塗るわけにはいかないもの!!
「お嬢様の行動を咎めるつもりも止めるつもりもありませんが――」
「え? 何?」
おっと、珍しくクロエが真剣な顔でこちらを見ている。
そしてそっと差し出されたのは、鏡だった。
何? 鏡がどうしたの? と目で訴えながらもとりあえず受け取った。
そして促されるがままに鏡を覗き込むと――
……これはいかん。
鏡の中にいたのは、だらしなく頬を緩ませてちょっぴり涎を垂らしている不審な幼女だった。
うん。いくらフィーナが美少女だからって、ニヤニヤしながら涎垂らすのはいただけない。
最愛のパパンとママンに余計な心配もかけたくない。
「よし。表情筋を鍛えるわよ」
この日から私は朝昼晩と鏡に向かって、大きく口を開けたり、イーッと目一杯頬を伸ばしたり、とにかく心の声が顔に出ないように特訓を始めた。
クロエは相変わらずスンとした顔で見守ってくれている。本当によくできたメイドだわ。
◇◇◇
ある日、クロヴィスお父様が街の視察帰りにケーキを買って帰ってきた。
中庭のガゼボで三人で遅めのおやつタイムを取ることになった。
私は絶対に二人の間には座らない。対面に座る。
少し寂しそうな顔をされるけれど、「フィーは、おとうたまとおかあたまがなかよしなところをみるのがしあわせなのです」と微笑むと、頬を染めながらも好きな席に座ることを許される。
こうした時、極力私は気配を消すようにしている。
二人が二人だけの世界に入り込めるようにだ。
今も、お父様は美味しそうにケーキを食べるお母様に釘付けだ。
私はそんな二人の様子に釘付けなんだけど。鍛え抜かれた表情筋で頬が緩みそうになるのを必死に防ぐ。
「ふ……アネット、クリームがついているぞ」
「えっ!? お、お恥ずかしい……取れましたか?」
「いや……失礼」
夢中でケーキを食べていた無邪気なお母様の頬にクリームがついてしまったらしい。
お父様は愛おしげに微笑むと、親指の腹でお母様の頬についたクリームを拭ってパクリと食べてしまった。
お母様は「えっ!?」と真っ赤に顔を染めているけれど……
「ぐうう、そこは舌でぺろっと舐めるところでしょうが……!!」
「なっ!?」
「へっ!?」
「あっ……うふふ、なんちゃって?」
思わず拳を握りしめながら漏らした本音が聞こえてしまったようだ。いけないいけない。
お父様もお母様も顔を真っ赤にして視線を合わせては逸らしてを繰り返している。
お父様って拳で照れ顔を隠す癖があって、たまらなく萌える。
お母様は言わずもがな可愛いの塊で、お父様を前にした時に乙女の顔をするのが最高に萌える。
「くぅ、堪らん……」
「堪りませんね……」
今度は二人に聞こえないように声を振り絞った。
すると、背後から同意する声が落ちてきたので振り向くと、クロエが僅かに天を仰いで合掌していた。
私とずっと一緒に過ごしているからか、最近のクロエはどうにも私の影響を如実に受けているように見える。萌えは万国共通だものね。分かるわ。こちら側へようこそ。
私はというと、ちょっとした援護射撃は日常茶飯事で、毎日萌えを浴びさせてもらっている。
お父様を見送りに出た時に、少しの悪戯心もあって、口にチューすればいいのにって言ったら本当にしてくれて、耳を真っ赤にするお父様も、はわわと両頬を抑えて蹲るお母様も可愛すぎて心臓が潰れるかと思ったわ。
膝をついて動けなくなった私を呆れたようにクロエが抱き抱えて部屋に運んでくれた。
部屋に入るや否や、バタン、とベッドに仰向けに倒れた私をクロエが心配そうに覗き込んでくる。
「お嬢様。大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。危うく尊死するところだったけど」
「尊死……?」
「ええ。尊すぎて死にそうってこと。お父様とお母様が幸せそうに微笑みあってるだけで……うっ、心臓が」
先ほどの映像が脳内でフラッシュバックして心臓がギュッとなった。尊い。
「お嬢様は面白い表現をなさいますね」
私の行動を咎めずに見守ってくれているクロエには、本当に感謝している。
貴族令嬢にふさわしくないと厳しく躾けられてもおかしくない行動をしている自覚はある。
あ、もちろん必要な勉強はしているわよ。両親の顔に泥を塗るわけにはいかないもの!!
「お嬢様の行動を咎めるつもりも止めるつもりもありませんが――」
「え? 何?」
おっと、珍しくクロエが真剣な顔でこちらを見ている。
そしてそっと差し出されたのは、鏡だった。
何? 鏡がどうしたの? と目で訴えながらもとりあえず受け取った。
そして促されるがままに鏡を覗き込むと――
……これはいかん。
鏡の中にいたのは、だらしなく頬を緩ませてちょっぴり涎を垂らしている不審な幼女だった。
うん。いくらフィーナが美少女だからって、ニヤニヤしながら涎垂らすのはいただけない。
最愛のパパンとママンに余計な心配もかけたくない。
「よし。表情筋を鍛えるわよ」
この日から私は朝昼晩と鏡に向かって、大きく口を開けたり、イーッと目一杯頬を伸ばしたり、とにかく心の声が顔に出ないように特訓を始めた。
クロエは相変わらずスンとした顔で見守ってくれている。本当によくできたメイドだわ。
◇◇◇
ある日、クロヴィスお父様が街の視察帰りにケーキを買って帰ってきた。
中庭のガゼボで三人で遅めのおやつタイムを取ることになった。
私は絶対に二人の間には座らない。対面に座る。
少し寂しそうな顔をされるけれど、「フィーは、おとうたまとおかあたまがなかよしなところをみるのがしあわせなのです」と微笑むと、頬を染めながらも好きな席に座ることを許される。
こうした時、極力私は気配を消すようにしている。
二人が二人だけの世界に入り込めるようにだ。
今も、お父様は美味しそうにケーキを食べるお母様に釘付けだ。
私はそんな二人の様子に釘付けなんだけど。鍛え抜かれた表情筋で頬が緩みそうになるのを必死に防ぐ。
「ふ……アネット、クリームがついているぞ」
「えっ!? お、お恥ずかしい……取れましたか?」
「いや……失礼」
夢中でケーキを食べていた無邪気なお母様の頬にクリームがついてしまったらしい。
お父様は愛おしげに微笑むと、親指の腹でお母様の頬についたクリームを拭ってパクリと食べてしまった。
お母様は「えっ!?」と真っ赤に顔を染めているけれど……
「ぐうう、そこは舌でぺろっと舐めるところでしょうが……!!」
「なっ!?」
「へっ!?」
「あっ……うふふ、なんちゃって?」
思わず拳を握りしめながら漏らした本音が聞こえてしまったようだ。いけないいけない。
お父様もお母様も顔を真っ赤にして視線を合わせては逸らしてを繰り返している。
お父様って拳で照れ顔を隠す癖があって、たまらなく萌える。
お母様は言わずもがな可愛いの塊で、お父様を前にした時に乙女の顔をするのが最高に萌える。
「くぅ、堪らん……」
「堪りませんね……」
今度は二人に聞こえないように声を振り絞った。
すると、背後から同意する声が落ちてきたので振り向くと、クロエが僅かに天を仰いで合掌していた。
私とずっと一緒に過ごしているからか、最近のクロエはどうにも私の影響を如実に受けているように見える。萌えは万国共通だものね。分かるわ。こちら側へようこそ。
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