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我は何でも知っている(ドヤ
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「こ、これは…」
「す、すごいな…」
ミエーテル公爵家の早馬車を借り、ノロワレール家の前に降り立った私たちは、その様子を見て思わず絶句した。
豪華絢爛な佇まいで知られる侯爵邸は、蔦に覆い尽くされ、そこら中のガラスは割れ、カラスがけたたましく鳴き、見るからにどんよりと暗い雰囲気に包まれていた。
「呪われているな」
「呪われてますね」
諦めに近い眼差しで屋敷を仰ぎ見る私たち。一方のアーノルドはどこか満足げに鼻を鳴らした。
『ほう、我が留守にしている間に随分と暴れていたようだな。感心感心』
「感心、じゃない!と、とにかく中の様子を確認しましょう」
私たちは、もはや門の機能を果たしていない門から敷地内へ足を踏み入れた。事前にギュンター様がノロワレール家を訪問する旨を鳩を飛ばして知らせてくれているので、遠慮なくお邪魔させていただく。
「すみませーん、誰かいませんか?」
「…お、お待ちしておりました。ようこそお越しくださいました」
屋敷の中に入ると、顔面蒼白の侍女が出迎えてくれた。目の下には濃いクマができており、気苦労が計り知れる。
屋敷の中は、そこら中に窓ガラスの破片が散乱しており、廊下の壁にかけられていた絵画は引き裂かれ、花瓶は倒れて中の花と水をぶちまけている。豪奢でふわふわな絨毯にじんわりとシミが広がっていた。
そして、右を見ても左を見ても、ふよふよとこの世ならざる者たちが遊泳している。それはもう楽しそうに、私を見ては『やっほールウシェちゃん、元気?』と手を振って来る。私は思わず頭を抱えた。
「それで、レイナード殿はご無事ですか?」
「レイナード様は…うぅ、部屋まで案内いたします。直接ご自身で確認なさってください…」
ギュンター様がレイナード様の無事を確認すると、屋敷の侍女は瞳に涙を浮かべながら、片手で口元を覆い、よろける足取りでレイナード様の部屋まで案内をしてくれた。
「レイナード様、お客様でございます」
侍女はノックをしてそう言うと、静かに部屋のドアを開けた。恐る恐る中に踏み入ると、中はひどい有様だった。
本棚は倒れ、あちこちに本が散乱し、窓ガラスは割れてひゅうひゅう吹き込む風にカーテンが靡いている。
窓際に置かれた天蓋付きのベッドの真ん中で、布団を頭からかぶってガタガタ震えている人物がいた。レイナード様だ。
「だ、誰だ!!」
「わ、私です。ルウシェです」
「ギュンターもいます」
『アーノルドもおるぞ』
呑気に返事をするアーノルドを一瞥しつつ、私はギュンター様と共にレイナード様の元へと歩み寄る。
「ルウシェ…ルウシェか?」
レイナード様は布団を少しずらして顔を出した。目の下にはくっきりとクマができており、心なしが頬がこけている。髪もボサボサでいつもの麗しさが形を潜めている。
「ああ…ルウシェ、すまない…俺が悪かった…本当にすまなかった、勘弁してくれ…」
「はい?」
急にボロボロ泣きながら嘆願され、私は訳がわからずに首を捻った。
「声がするんだ。夜な夜な、『ルウシェを傷つけた罪許すまじ』『ルウシェの愛らしさが分からないお前は愚図だ』『ルウシェがいかに素晴らしい令嬢か』を何人も何人も入れ替わり立ち替わりやって来ては語っていくんだ…」
私は無言でジロリとアーノルドを睨んだ。アーノルドは何故か得意げな顔をして腕を組んでいる。『推しの布教をするのは騎士の務め』とか訳の分からないことを言っている。
「ああ…俺はずっとルウシェが空を眺めていたり、コソコソ何かと話しているのを奇妙な奴だと思って見ていたが、お前にはずっと…見えていたのだな」
ガタガタ震えるレイナード様の言葉に、私は肯定も否定もせずに困った笑みを浮かべた。さすがにこの三日間でこの世ならざる者の存在を思い知ったのだろう。
「ルウシェ、お前さえ良ければ婚約解消は撤回しよう。これまで通り俺の婚約者としてこの者たちから守ってくれ…ギャァァァ!!」
『この愚図は性懲りも無くなんと愚かなことを言うのか。やはり相応の苦しみを与えて葬ってしまおう』
「わぁぁ!!待って待って!!葬っちゃダメだってば!!」
目を泳がせながら再度婚約者となるよう迫ってきたレイナード様は、アーノルドによって部屋の端まで吹っ飛ばされてしまった。「痛い、痛いよぉ。怖いよぉ」と情けなくも頭を抱えてうずくまる姿は見ていられない。私はレイナード様の隣まで歩み寄ると、しゃがみ込んで語りかけた。
「レイナード様。私はあなたのような無節操なお方と再婚約なんてまっぴらごめんです。あなたは本当にご自身のことしか考えておりません。そもそも愛のない婚約だったのです。私たちの関係を改めて白紙に戻しましょう」
「なっ…そんな、ルウシェ、俺を見殺しにするのか!?」
「だから殺さないように説得してるでしょうが」
『我はいつでもやれるぞ』
何をだ。物騒なことを言うのはやめなさい。
私が睨みつけるとアーノルドは素知らぬ顔でそっぽを向いた。
『我が留守にしている間、他の霊達が家宅捜索をしていたのだが、書斎に溢れんばかりの領収書があったそうだ』
「はっ!?また声が聞こえる…毎夜毎夜聞こえる奴の声が…!」
『この男は入れ込んだ女子に高価な宝石やドレスを贈っていたようだ。家の金を無断で使ってな』
「なっ…なななな何を言う!?」
『婚約解消前、ルウシェと結婚すればレイミエール侯爵家の金も自分のものだと大笑いしている姿を見かけた者もいる』
「あばばばば…」
『ふん、次々と出るわ出るわ…埃まみれな男よ』
…ほほう。レイナード様は女だけでなくお金にも相当だらしがないと来ましたか。私の実家も邪な目で見ていたと。
私は氷のような眼差しで、地に伏して目をグルングルン泳がせているレイナード様を見下ろした。
『どうだ?どうだ?いいだろう?葬ろうぞ?呪い殺してしまおうぞ?』
「だからいくらレイナード様がクズでもそれだけはダメだってば!」
ウキウキと子供が玩具をねだるかのように身を弾ませるアーノルドに、私はピシャンと不可だと示す。すると、アーノルドは益々不服そうに唇を突き出した。
『そもそも我は、こやつとの婚約を好ましく思っていなかったのだ。常々言っていたであろう?』
「うぐぅ…でも、こんな私と婚約してくれる人なんて居なかったんだもの…」
そして少し拗ねたように文句を垂れてくる。結局アーノルドの言う通り、不誠実な婚約者であったので強くは言えないのがなんとも悔しい。
私が視線を落とすと、アーノルドは腕組みをして訳がわからないと首を振った。
『ルウシェのことを心から想い、大切にしてくれる男ならばよかろう。そう、そこの小童のようにな』
「「えっ!?」」
アーノルドが指を刺したのは、ベッドの傍で棒立ちになっていたギュンター様であった。私とギュンター様は見事にシンクロしてアーノルドに問い返した。
『む?気付いていなかったのか?こやつは昔からずっと…』
「わーーー!?」
アーノルドの発言に被せるようにギュンター様が叫んだ。こんな大声で叫ぶギュンター様は初めて見た。
というか。え?
「………え?もしかしてアーノルドの声が聞こえているのですか?」
私の問いかけに、ギュンター様はぎくりと肩を強ばらせ、ギギギと首を捻って私を見た。そして諦めたように脱力し、頭をかいた。
「…聞こえるどころか…ハッキリと見えているよ」
「ええっ!?なんで言ってくれなかったのですか!?」
「いや…見えるようになったのは最近だし、それに…受け入れたくなくて」
「ああ…」
遠い目をするギュンター様が哀れに思えて私はそれ以上何も言えなかった。居た堪れない空気が流れる中、一人陽気に笑っているのはアーノルドである。
『ふむ、ようやく見えるようになったか。我が長きに渡り働きかけて来た甲斐があったな』
「ちょっと待って?僕が見えるようになったのは…君のせい?」
『いかにも。共にルウシェを守る騎士として、対話が出来た方が良かろう』
「はぁぁぁぁぁ…」
「えっと…ごめんなさい?」
うんうん頷き満足げなアーノルドに対し、霊が見える体質となってしまったらしいギュンター様は、深く息を吐きながら膝から崩れ落ちてしまった。
私は慌ててギュンター様の元へ駆け寄ると、そっと背中に手を添えた。すると、ギュンター様は優しく私の手を取り握りしめた。顔を上げたギュンター様の瞳はどこか熱を帯びていて、至近距離で見据えられた私の心臓はどきりと大きく脈打った。
「……はぁ、本当、まさかアーノルド殿に僕の気持ちを言われてしまうなんて。もたもたしていた罰が当たったんだね。ノロワレール家との婚約の時もそうだ。僕がもっと早くに君に告白する勇気があれば、婚約解消という不名誉な傷もつけずに済んだし、他の男と並ぶ姿を見ずに済んだというのに」
「えっ…と?ギュンター様?」
いつもニコニコ優しい笑みを浮かべるギュンター様が、今は真剣な眼差しで私を見据えている。え、ちょ、そんないつもと違うお姿を見せられては調子が狂うのですが…!
頬に熱が集まっていくのが分かる。うわぁ、何だか恥ずかしくなってきた。
私が照れてしまって視線を落とすと、ギュンター様は私の顔を覗き込むように首を傾げた。えっ、なに、可愛いんですけど!っていうか美しっ!
半ばパニックに陥る私に追い打ちをかけるように、ギュンター様は口を開いた。
「ルウシェ、こんなムードも何もない場で申し訳ない。僕はずっと…初めて会ったあの日からずっと、君のことが好きなんだ」
「す、すごいな…」
ミエーテル公爵家の早馬車を借り、ノロワレール家の前に降り立った私たちは、その様子を見て思わず絶句した。
豪華絢爛な佇まいで知られる侯爵邸は、蔦に覆い尽くされ、そこら中のガラスは割れ、カラスがけたたましく鳴き、見るからにどんよりと暗い雰囲気に包まれていた。
「呪われているな」
「呪われてますね」
諦めに近い眼差しで屋敷を仰ぎ見る私たち。一方のアーノルドはどこか満足げに鼻を鳴らした。
『ほう、我が留守にしている間に随分と暴れていたようだな。感心感心』
「感心、じゃない!と、とにかく中の様子を確認しましょう」
私たちは、もはや門の機能を果たしていない門から敷地内へ足を踏み入れた。事前にギュンター様がノロワレール家を訪問する旨を鳩を飛ばして知らせてくれているので、遠慮なくお邪魔させていただく。
「すみませーん、誰かいませんか?」
「…お、お待ちしておりました。ようこそお越しくださいました」
屋敷の中に入ると、顔面蒼白の侍女が出迎えてくれた。目の下には濃いクマができており、気苦労が計り知れる。
屋敷の中は、そこら中に窓ガラスの破片が散乱しており、廊下の壁にかけられていた絵画は引き裂かれ、花瓶は倒れて中の花と水をぶちまけている。豪奢でふわふわな絨毯にじんわりとシミが広がっていた。
そして、右を見ても左を見ても、ふよふよとこの世ならざる者たちが遊泳している。それはもう楽しそうに、私を見ては『やっほールウシェちゃん、元気?』と手を振って来る。私は思わず頭を抱えた。
「それで、レイナード殿はご無事ですか?」
「レイナード様は…うぅ、部屋まで案内いたします。直接ご自身で確認なさってください…」
ギュンター様がレイナード様の無事を確認すると、屋敷の侍女は瞳に涙を浮かべながら、片手で口元を覆い、よろける足取りでレイナード様の部屋まで案内をしてくれた。
「レイナード様、お客様でございます」
侍女はノックをしてそう言うと、静かに部屋のドアを開けた。恐る恐る中に踏み入ると、中はひどい有様だった。
本棚は倒れ、あちこちに本が散乱し、窓ガラスは割れてひゅうひゅう吹き込む風にカーテンが靡いている。
窓際に置かれた天蓋付きのベッドの真ん中で、布団を頭からかぶってガタガタ震えている人物がいた。レイナード様だ。
「だ、誰だ!!」
「わ、私です。ルウシェです」
「ギュンターもいます」
『アーノルドもおるぞ』
呑気に返事をするアーノルドを一瞥しつつ、私はギュンター様と共にレイナード様の元へと歩み寄る。
「ルウシェ…ルウシェか?」
レイナード様は布団を少しずらして顔を出した。目の下にはくっきりとクマができており、心なしが頬がこけている。髪もボサボサでいつもの麗しさが形を潜めている。
「ああ…ルウシェ、すまない…俺が悪かった…本当にすまなかった、勘弁してくれ…」
「はい?」
急にボロボロ泣きながら嘆願され、私は訳がわからずに首を捻った。
「声がするんだ。夜な夜な、『ルウシェを傷つけた罪許すまじ』『ルウシェの愛らしさが分からないお前は愚図だ』『ルウシェがいかに素晴らしい令嬢か』を何人も何人も入れ替わり立ち替わりやって来ては語っていくんだ…」
私は無言でジロリとアーノルドを睨んだ。アーノルドは何故か得意げな顔をして腕を組んでいる。『推しの布教をするのは騎士の務め』とか訳の分からないことを言っている。
「ああ…俺はずっとルウシェが空を眺めていたり、コソコソ何かと話しているのを奇妙な奴だと思って見ていたが、お前にはずっと…見えていたのだな」
ガタガタ震えるレイナード様の言葉に、私は肯定も否定もせずに困った笑みを浮かべた。さすがにこの三日間でこの世ならざる者の存在を思い知ったのだろう。
「ルウシェ、お前さえ良ければ婚約解消は撤回しよう。これまで通り俺の婚約者としてこの者たちから守ってくれ…ギャァァァ!!」
『この愚図は性懲りも無くなんと愚かなことを言うのか。やはり相応の苦しみを与えて葬ってしまおう』
「わぁぁ!!待って待って!!葬っちゃダメだってば!!」
目を泳がせながら再度婚約者となるよう迫ってきたレイナード様は、アーノルドによって部屋の端まで吹っ飛ばされてしまった。「痛い、痛いよぉ。怖いよぉ」と情けなくも頭を抱えてうずくまる姿は見ていられない。私はレイナード様の隣まで歩み寄ると、しゃがみ込んで語りかけた。
「レイナード様。私はあなたのような無節操なお方と再婚約なんてまっぴらごめんです。あなたは本当にご自身のことしか考えておりません。そもそも愛のない婚約だったのです。私たちの関係を改めて白紙に戻しましょう」
「なっ…そんな、ルウシェ、俺を見殺しにするのか!?」
「だから殺さないように説得してるでしょうが」
『我はいつでもやれるぞ』
何をだ。物騒なことを言うのはやめなさい。
私が睨みつけるとアーノルドは素知らぬ顔でそっぽを向いた。
『我が留守にしている間、他の霊達が家宅捜索をしていたのだが、書斎に溢れんばかりの領収書があったそうだ』
「はっ!?また声が聞こえる…毎夜毎夜聞こえる奴の声が…!」
『この男は入れ込んだ女子に高価な宝石やドレスを贈っていたようだ。家の金を無断で使ってな』
「なっ…なななな何を言う!?」
『婚約解消前、ルウシェと結婚すればレイミエール侯爵家の金も自分のものだと大笑いしている姿を見かけた者もいる』
「あばばばば…」
『ふん、次々と出るわ出るわ…埃まみれな男よ』
…ほほう。レイナード様は女だけでなくお金にも相当だらしがないと来ましたか。私の実家も邪な目で見ていたと。
私は氷のような眼差しで、地に伏して目をグルングルン泳がせているレイナード様を見下ろした。
『どうだ?どうだ?いいだろう?葬ろうぞ?呪い殺してしまおうぞ?』
「だからいくらレイナード様がクズでもそれだけはダメだってば!」
ウキウキと子供が玩具をねだるかのように身を弾ませるアーノルドに、私はピシャンと不可だと示す。すると、アーノルドは益々不服そうに唇を突き出した。
『そもそも我は、こやつとの婚約を好ましく思っていなかったのだ。常々言っていたであろう?』
「うぐぅ…でも、こんな私と婚約してくれる人なんて居なかったんだもの…」
そして少し拗ねたように文句を垂れてくる。結局アーノルドの言う通り、不誠実な婚約者であったので強くは言えないのがなんとも悔しい。
私が視線を落とすと、アーノルドは腕組みをして訳がわからないと首を振った。
『ルウシェのことを心から想い、大切にしてくれる男ならばよかろう。そう、そこの小童のようにな』
「「えっ!?」」
アーノルドが指を刺したのは、ベッドの傍で棒立ちになっていたギュンター様であった。私とギュンター様は見事にシンクロしてアーノルドに問い返した。
『む?気付いていなかったのか?こやつは昔からずっと…』
「わーーー!?」
アーノルドの発言に被せるようにギュンター様が叫んだ。こんな大声で叫ぶギュンター様は初めて見た。
というか。え?
「………え?もしかしてアーノルドの声が聞こえているのですか?」
私の問いかけに、ギュンター様はぎくりと肩を強ばらせ、ギギギと首を捻って私を見た。そして諦めたように脱力し、頭をかいた。
「…聞こえるどころか…ハッキリと見えているよ」
「ええっ!?なんで言ってくれなかったのですか!?」
「いや…見えるようになったのは最近だし、それに…受け入れたくなくて」
「ああ…」
遠い目をするギュンター様が哀れに思えて私はそれ以上何も言えなかった。居た堪れない空気が流れる中、一人陽気に笑っているのはアーノルドである。
『ふむ、ようやく見えるようになったか。我が長きに渡り働きかけて来た甲斐があったな』
「ちょっと待って?僕が見えるようになったのは…君のせい?」
『いかにも。共にルウシェを守る騎士として、対話が出来た方が良かろう』
「はぁぁぁぁぁ…」
「えっと…ごめんなさい?」
うんうん頷き満足げなアーノルドに対し、霊が見える体質となってしまったらしいギュンター様は、深く息を吐きながら膝から崩れ落ちてしまった。
私は慌ててギュンター様の元へ駆け寄ると、そっと背中に手を添えた。すると、ギュンター様は優しく私の手を取り握りしめた。顔を上げたギュンター様の瞳はどこか熱を帯びていて、至近距離で見据えられた私の心臓はどきりと大きく脈打った。
「……はぁ、本当、まさかアーノルド殿に僕の気持ちを言われてしまうなんて。もたもたしていた罰が当たったんだね。ノロワレール家との婚約の時もそうだ。僕がもっと早くに君に告白する勇気があれば、婚約解消という不名誉な傷もつけずに済んだし、他の男と並ぶ姿を見ずに済んだというのに」
「えっ…と?ギュンター様?」
いつもニコニコ優しい笑みを浮かべるギュンター様が、今は真剣な眼差しで私を見据えている。え、ちょ、そんないつもと違うお姿を見せられては調子が狂うのですが…!
頬に熱が集まっていくのが分かる。うわぁ、何だか恥ずかしくなってきた。
私が照れてしまって視線を落とすと、ギュンター様は私の顔を覗き込むように首を傾げた。えっ、なに、可愛いんですけど!っていうか美しっ!
半ばパニックに陥る私に追い打ちをかけるように、ギュンター様は口を開いた。
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