13 / 25
第七話 チルと海と魔物 1
しおりを挟む
「またか」
「にゃ?」
僕は目の前でふよふよ浮かぶ依頼書を手に取り、小さく息を吐いた。
依頼主はザギルモンド王国の国王ロスター。
最近やけに依頼が多いんだよなあ。なんでこの国だけ魔物が活発化しているのだろう?
あまり一国に肩入れすることは避けたいけれど、ことがことなので僕が出向くしかない。
それに、下心見え見えの国王は、城に行くたびに晩餐会やパーティにしつこく誘ってくるので、少し憂鬱だ。
「で、今度はなんだ?」
依頼内容に目を通した僕は、再び息を吐いた。
「チル?」
「ああ、ごめん。交易港に海の魔物が住み着いて困っているんだって」
「海!」
海の文字を目にして憂鬱な僕に対して、レオンはパァァッと目を輝かせた。練習中の治癒魔法までキラキラと光を増している。
「あれ、レオンは海、初めて?」
「ん! レオン、ずっと森で暮らしてた」
「そっか……うん、そうだね。僕は海に近付くのは苦手だけど、海自体は好きだよ。果てしなく広がっていて、水平線の向こうには何があるのか考えるだけで心が弾む」
「チル、海、苦手?」
レオンが心配そうに首を傾けている。僕は眉を下げて、安心させるようにレオンの頭を撫でた。レオンは嬉しそうに目を細めている。
「ちょっと事情があってね……まあ、行けばわかるよ」
森でずっと暮らしてきたレオンにとって、海は想像もつかないほど雄大だろう。
僕もレオンに海を見せてあげたいし、海を見て目を輝かせるレオンの顔が見たい。
「よし! サクッと依頼を片付けてしまおう。――うん、治癒魔法もかなり上達したね」
「えへへ」
僕は依頼書から目を離し、レオンが治癒してくれた腕を掲げて状態を確認する。今日は刀傷を治癒してもらったけれど、傷があったとは分からないほど綺麗に治癒できている。
レオンは、日々の頑張りの成果もあり、部分的な治癒は文句の付け所がないほどの技術を身につけた。最近は空間治癒魔法の感覚やコツを教え始めるまでになって、正直予想以上の適正に僕が一番驚いている。
僕はもう一度レオンの頭を撫で、そのままレオンの手を握って転移魔法を発動した。
「『転移』」
グニャンと身体が歪むいつもの感覚に耐え、依頼書を介して転移する。
「お」
転移先で依頼書の原本を所持していたのは、文官服を着たメガネの青年だった。
スラリと背が高く、短く切り添えられた金色の髪にルビーの瞳を有している。端正な顔立ちをしているが、大きな丸メガネがかなり目を引く。
「へえ、君か。久しぶりだね」
「……ご無沙汰しております」
僕との再会を喜ぶように頬を綻ばせ、深く頭を下げる青年の名前はエリック。僕が人間界に戻って間もない頃、野党に襲われているところを救い出した縁がある。数日だけだけど一緒に生活をして、少しだけ魔法の使い方も教えた。
「メガネ、ちゃんと機能しているようだね」
「ええ。とても助けられていますよ」
トントン、と自分のこめかみを突いて見せると、エリックは爽やかに笑ってメガネをクイッと持ち上げた。所作がいちいち優美なやつだ。
「で、今回の依頼は? 君が取り仕切っているの?」
「ええ。これでも優秀な文官として、城の業務の多くを任されておりますので」
「へえ! たった半年ですごいね……ん?」
「……むう」
久々の再会に少し心が浮ついていたら、ツン、と外套を後ろに引っ張られて振り向いた。
おっといけない。二人で盛り上がりすぎて、レオンを置いてきぼりにしてしまった。
ぷう、と頬を膨らませて拗ねた様子のレオンに詫びて、僕たちは問題の港に向かいながらエリックから概要を聞く。
「ここ半月ほど、港に近付く船が海の魔物に襲われる事件が続出しているのです。食料品を乗せた船ばかりが狙われており、海中から触手のようなものが伸びてきて、船ごと海の中に引きずり込まれるのです。魔物は食べ物に夢中で、今のところ怪我人以外、死者は出ておりませんが……」
「へえ、どうしたんだろう。お腹空いてるのかな」
船を沈めるほどの魔物が栄えた港に姿を現すなんて、随分と珍しい。魔王リヴァルドと同様に、海神アトラスとの約束で危険な魔物は人里に近付かないはずなんだけど。
まさか、また何か良からぬことでも企んでいるのか?
僕は前科のある神様たちの顔を思い出し、少し警戒心を強めた。
「着きましたよ」
考え事をしている間に、目的地に着いたらしい。
人気の少ないゴツゴツとした岩場だ。
「港は人が多いので、足場が悪くてすみません」
「いや、ありがとう。僕としても人前で海に近付きたくないから助かるよ」
「はあ……」
僕の言葉に首を傾げるエリック。
そう、本当はなるべく海には近付きたくないんだよ……
とも言ってもいられないので、僕は二人に下がっているように伝えると、ため息を吐きながら海へと足を踏み出した。僕が進む先にはもう陸地はない。僕が足を踏み出したのは、そう、海面に向かってで――
「えっ、危なっ……」
背後で焦った声が聞こえるけれど、問題ない。
ひらりと後ろ手に手を振って大丈夫だと伝えると、僕はそのまま重心を前に移動した。
すると、ザバァァア! と勢いよく海水がうねり、海が真っ二つに割れた。その様子はまるで、主人に対して頭を垂れて跪き、道を譲るかのようだ。
僕はそのまま海底を歩いて海の中へと足を踏み入れていく。
思ったよりも水深が深くて、数歩進んだだけで滝のように流れる海水の壁を見上げるほどになった。
「さて、ここからだな」
僕は右手を広げて召喚魔法で杖を取り出す。あいつらを弾くには杖がちょうどいいんだよね。
足を止め、周囲を警戒しながら杖を構えていると、激しく流れる水音に紛れてビチビチビチッと魚が暴れる音がした。
来る――!
と身構えた次の瞬間、海水の壁から数えきれないほどの大小様々な魚が飛び出してきた。僕に突撃するように、それはもう勢いよく。身体を狙う魚もいるが、その多くは顔――口元に向かって飛び込むように猛進してくる。
「本当にっ、何度言ったら、分かるんだっ!」
僕は杖を素早く振り回して魚の軌道を逸らして海中に送り返していく。けれども、次々に飛び出してくるものだからキリがない。
「ああ、もう!――『鎮まれ』!」
ついに観念した僕は、海神アトラス直伝の魚類使役魔法で一喝した。
すると、ビシリと身体が固まったように魚たちの動きが止まり、ビチビチと飛び跳ねながら海中へと退散していった。
「はあ、まったく……」
海に来るたびにこれなんだから、参っちゃうよね。
どうして魚たちが嬉々として僕に突進してくるかと言うと、ことは海底界での修行時代に遡る。
僕はアトラスとの組手の合間に、魚たちとも魔法の特訓や使役魔法の練習で交流を深めていた。魚たちの主人であるアトラスと対等に接し、魚たちとも分け隔てなく触れ合っていたからか、いつの間にか随分と魚に慕われるようになっていった。
そして、僕を好きすぎる魚たちの要望は二極化していった。
僕ともっともっと遊びたい、特訓したい。
僕に食べてもらいたい。
前者はまだ相手になるけど、困ったのは後者だよね。
キラキラと目を輝かせては僕の口の中に飛び込もうとしてくる。
未調理の生きた魚を食べられるわけがないだろう! それ以前に友達として接してきたみんなを食べられるわけがない。
アトラスにどうにかしてくれと頼んだけれど、『ワハハ! 魚たちもチルの血肉になれるのならば本望だろう』と気楽に笑って流された。僕はあの時のことをまだ許していない。
おかげで人間界に戻ってからも、海の魚たちは僕を目にすると嬉々として飛び付いてくるようになったのだ。迷惑も甚だしい。
そういうわけで、僕は海に近付き難くなってしまった。
「さて……ねえ、君」
僕は周りを見渡し、ビチビチ飛び跳ねながら海の中へと戻ろうとしていた一匹の魚に声をかける。
「っ! っ!」
「分かった分かった、落ち着いて」
声をかけられて歓喜に打ちひしがれる魚を宥めながら、僕は本題を切り出した。
「最近、この辺りに大きな海の魔物が出るって聞いたんだけど、何か知ってる?」
「っ! っ!」
「うんうん……ああ、なるほどなるほど。で、どこにいるか分かる? うん、ありがとう」
感涙しながら飛び跳ねまくる魚を突いて海に戻してやると、僕はレオンとエリックの元へと戻った。
僕が陸に上がると、ザパン! と二つに割れていた海が重力を取り戻したように元に戻った。その拍子に水の塊同士がぶつかって、大きな波が打ち寄せた。
「どうやら、その魔物ってのは沖合に見えるあの島を根城にしているらしい。その近くで船が座礁した時にたくさん食糧が落ちてきて、味をしめてしまったようだ」
「そ、そうなのですね……」
「チル……すごい。海、魔法?」
僕の報告に呆気に取られるエリックと、海が二つに割れたことに興味津々のレオン。目をキラキラ輝かせて、ピクピクと耳を動かしている。
「え? ああ、違うよ。あれは勝手に海が僕を通してくれているだけ。そんなことしなくても、別にいいのにね」
「そ、そう……」
空気を身体の周りに纏わせれば水中でも息ができるから困っていないのに、毎度僕が海に近付くと、どうぞどうぞと言うように海が道を譲るのだ。あわよくばそのまま海底界のアトラスの元まで……という魂胆まで透けて見える。もしかするとアトラスが裏で指示を出しているのかもしれない。
「ってことで、被害が出る前にサクッと片付けてくるね。エリックはレオンを連れて港で待ってて。よかったら辺りを案内してあげてよ」
「ちょ、一人で行くのですか?」
「ああ。島までの移動と、戦闘になった時のことを考えると僕一人の方がいい。エリック、レオンを頼んだよ」
僕はそう言うと、風を纏って海面ギリギリを猛スピードで飛んだ。
「にゃ?」
僕は目の前でふよふよ浮かぶ依頼書を手に取り、小さく息を吐いた。
依頼主はザギルモンド王国の国王ロスター。
最近やけに依頼が多いんだよなあ。なんでこの国だけ魔物が活発化しているのだろう?
あまり一国に肩入れすることは避けたいけれど、ことがことなので僕が出向くしかない。
それに、下心見え見えの国王は、城に行くたびに晩餐会やパーティにしつこく誘ってくるので、少し憂鬱だ。
「で、今度はなんだ?」
依頼内容に目を通した僕は、再び息を吐いた。
「チル?」
「ああ、ごめん。交易港に海の魔物が住み着いて困っているんだって」
「海!」
海の文字を目にして憂鬱な僕に対して、レオンはパァァッと目を輝かせた。練習中の治癒魔法までキラキラと光を増している。
「あれ、レオンは海、初めて?」
「ん! レオン、ずっと森で暮らしてた」
「そっか……うん、そうだね。僕は海に近付くのは苦手だけど、海自体は好きだよ。果てしなく広がっていて、水平線の向こうには何があるのか考えるだけで心が弾む」
「チル、海、苦手?」
レオンが心配そうに首を傾けている。僕は眉を下げて、安心させるようにレオンの頭を撫でた。レオンは嬉しそうに目を細めている。
「ちょっと事情があってね……まあ、行けばわかるよ」
森でずっと暮らしてきたレオンにとって、海は想像もつかないほど雄大だろう。
僕もレオンに海を見せてあげたいし、海を見て目を輝かせるレオンの顔が見たい。
「よし! サクッと依頼を片付けてしまおう。――うん、治癒魔法もかなり上達したね」
「えへへ」
僕は依頼書から目を離し、レオンが治癒してくれた腕を掲げて状態を確認する。今日は刀傷を治癒してもらったけれど、傷があったとは分からないほど綺麗に治癒できている。
レオンは、日々の頑張りの成果もあり、部分的な治癒は文句の付け所がないほどの技術を身につけた。最近は空間治癒魔法の感覚やコツを教え始めるまでになって、正直予想以上の適正に僕が一番驚いている。
僕はもう一度レオンの頭を撫で、そのままレオンの手を握って転移魔法を発動した。
「『転移』」
グニャンと身体が歪むいつもの感覚に耐え、依頼書を介して転移する。
「お」
転移先で依頼書の原本を所持していたのは、文官服を着たメガネの青年だった。
スラリと背が高く、短く切り添えられた金色の髪にルビーの瞳を有している。端正な顔立ちをしているが、大きな丸メガネがかなり目を引く。
「へえ、君か。久しぶりだね」
「……ご無沙汰しております」
僕との再会を喜ぶように頬を綻ばせ、深く頭を下げる青年の名前はエリック。僕が人間界に戻って間もない頃、野党に襲われているところを救い出した縁がある。数日だけだけど一緒に生活をして、少しだけ魔法の使い方も教えた。
「メガネ、ちゃんと機能しているようだね」
「ええ。とても助けられていますよ」
トントン、と自分のこめかみを突いて見せると、エリックは爽やかに笑ってメガネをクイッと持ち上げた。所作がいちいち優美なやつだ。
「で、今回の依頼は? 君が取り仕切っているの?」
「ええ。これでも優秀な文官として、城の業務の多くを任されておりますので」
「へえ! たった半年ですごいね……ん?」
「……むう」
久々の再会に少し心が浮ついていたら、ツン、と外套を後ろに引っ張られて振り向いた。
おっといけない。二人で盛り上がりすぎて、レオンを置いてきぼりにしてしまった。
ぷう、と頬を膨らませて拗ねた様子のレオンに詫びて、僕たちは問題の港に向かいながらエリックから概要を聞く。
「ここ半月ほど、港に近付く船が海の魔物に襲われる事件が続出しているのです。食料品を乗せた船ばかりが狙われており、海中から触手のようなものが伸びてきて、船ごと海の中に引きずり込まれるのです。魔物は食べ物に夢中で、今のところ怪我人以外、死者は出ておりませんが……」
「へえ、どうしたんだろう。お腹空いてるのかな」
船を沈めるほどの魔物が栄えた港に姿を現すなんて、随分と珍しい。魔王リヴァルドと同様に、海神アトラスとの約束で危険な魔物は人里に近付かないはずなんだけど。
まさか、また何か良からぬことでも企んでいるのか?
僕は前科のある神様たちの顔を思い出し、少し警戒心を強めた。
「着きましたよ」
考え事をしている間に、目的地に着いたらしい。
人気の少ないゴツゴツとした岩場だ。
「港は人が多いので、足場が悪くてすみません」
「いや、ありがとう。僕としても人前で海に近付きたくないから助かるよ」
「はあ……」
僕の言葉に首を傾げるエリック。
そう、本当はなるべく海には近付きたくないんだよ……
とも言ってもいられないので、僕は二人に下がっているように伝えると、ため息を吐きながら海へと足を踏み出した。僕が進む先にはもう陸地はない。僕が足を踏み出したのは、そう、海面に向かってで――
「えっ、危なっ……」
背後で焦った声が聞こえるけれど、問題ない。
ひらりと後ろ手に手を振って大丈夫だと伝えると、僕はそのまま重心を前に移動した。
すると、ザバァァア! と勢いよく海水がうねり、海が真っ二つに割れた。その様子はまるで、主人に対して頭を垂れて跪き、道を譲るかのようだ。
僕はそのまま海底を歩いて海の中へと足を踏み入れていく。
思ったよりも水深が深くて、数歩進んだだけで滝のように流れる海水の壁を見上げるほどになった。
「さて、ここからだな」
僕は右手を広げて召喚魔法で杖を取り出す。あいつらを弾くには杖がちょうどいいんだよね。
足を止め、周囲を警戒しながら杖を構えていると、激しく流れる水音に紛れてビチビチビチッと魚が暴れる音がした。
来る――!
と身構えた次の瞬間、海水の壁から数えきれないほどの大小様々な魚が飛び出してきた。僕に突撃するように、それはもう勢いよく。身体を狙う魚もいるが、その多くは顔――口元に向かって飛び込むように猛進してくる。
「本当にっ、何度言ったら、分かるんだっ!」
僕は杖を素早く振り回して魚の軌道を逸らして海中に送り返していく。けれども、次々に飛び出してくるものだからキリがない。
「ああ、もう!――『鎮まれ』!」
ついに観念した僕は、海神アトラス直伝の魚類使役魔法で一喝した。
すると、ビシリと身体が固まったように魚たちの動きが止まり、ビチビチと飛び跳ねながら海中へと退散していった。
「はあ、まったく……」
海に来るたびにこれなんだから、参っちゃうよね。
どうして魚たちが嬉々として僕に突進してくるかと言うと、ことは海底界での修行時代に遡る。
僕はアトラスとの組手の合間に、魚たちとも魔法の特訓や使役魔法の練習で交流を深めていた。魚たちの主人であるアトラスと対等に接し、魚たちとも分け隔てなく触れ合っていたからか、いつの間にか随分と魚に慕われるようになっていった。
そして、僕を好きすぎる魚たちの要望は二極化していった。
僕ともっともっと遊びたい、特訓したい。
僕に食べてもらいたい。
前者はまだ相手になるけど、困ったのは後者だよね。
キラキラと目を輝かせては僕の口の中に飛び込もうとしてくる。
未調理の生きた魚を食べられるわけがないだろう! それ以前に友達として接してきたみんなを食べられるわけがない。
アトラスにどうにかしてくれと頼んだけれど、『ワハハ! 魚たちもチルの血肉になれるのならば本望だろう』と気楽に笑って流された。僕はあの時のことをまだ許していない。
おかげで人間界に戻ってからも、海の魚たちは僕を目にすると嬉々として飛び付いてくるようになったのだ。迷惑も甚だしい。
そういうわけで、僕は海に近付き難くなってしまった。
「さて……ねえ、君」
僕は周りを見渡し、ビチビチ飛び跳ねながら海の中へと戻ろうとしていた一匹の魚に声をかける。
「っ! っ!」
「分かった分かった、落ち着いて」
声をかけられて歓喜に打ちひしがれる魚を宥めながら、僕は本題を切り出した。
「最近、この辺りに大きな海の魔物が出るって聞いたんだけど、何か知ってる?」
「っ! っ!」
「うんうん……ああ、なるほどなるほど。で、どこにいるか分かる? うん、ありがとう」
感涙しながら飛び跳ねまくる魚を突いて海に戻してやると、僕はレオンとエリックの元へと戻った。
僕が陸に上がると、ザパン! と二つに割れていた海が重力を取り戻したように元に戻った。その拍子に水の塊同士がぶつかって、大きな波が打ち寄せた。
「どうやら、その魔物ってのは沖合に見えるあの島を根城にしているらしい。その近くで船が座礁した時にたくさん食糧が落ちてきて、味をしめてしまったようだ」
「そ、そうなのですね……」
「チル……すごい。海、魔法?」
僕の報告に呆気に取られるエリックと、海が二つに割れたことに興味津々のレオン。目をキラキラ輝かせて、ピクピクと耳を動かしている。
「え? ああ、違うよ。あれは勝手に海が僕を通してくれているだけ。そんなことしなくても、別にいいのにね」
「そ、そう……」
空気を身体の周りに纏わせれば水中でも息ができるから困っていないのに、毎度僕が海に近付くと、どうぞどうぞと言うように海が道を譲るのだ。あわよくばそのまま海底界のアトラスの元まで……という魂胆まで透けて見える。もしかするとアトラスが裏で指示を出しているのかもしれない。
「ってことで、被害が出る前にサクッと片付けてくるね。エリックはレオンを連れて港で待ってて。よかったら辺りを案内してあげてよ」
「ちょ、一人で行くのですか?」
「ああ。島までの移動と、戦闘になった時のことを考えると僕一人の方がいい。エリック、レオンを頼んだよ」
僕はそう言うと、風を纏って海面ギリギリを猛スピードで飛んだ。
10
あなたにおすすめの小説
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
愛しい義兄が罠に嵌められ追放されたので、聖女は祈りを止めてついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
グレイスは元々孤児だった。孤児院前に捨てられたことで、何とか命を繋ぎ止めることができたが、孤児院の責任者は、領主の補助金を着服していた。人数によって助成金が支払われるため、餓死はさせないが、ギリギリの食糧で、最低限の生活をしていた。だがそこに、正義感に溢れる領主の若様が視察にやってきた。孤児達は救われた。その時からグレイスは若様に恋焦がれていた。だが、幸か不幸か、グレイスには並外れた魔力があった。しかも魔窟を封印する事のできる聖なる魔力だった。グレイスは領主シーモア公爵家に養女に迎えられた。義妹として若様と一緒に暮らせるようになったが、絶対に結ばれることのない義兄妹の関係になってしまった。グレイスは密かに恋する義兄のために厳しい訓練に耐え、封印を護る聖女となった。義兄にためになると言われ、王太子との婚約も泣く泣く受けた。だが、その結果は、公明正大ゆえに疎まれた義兄の追放だった。ブチ切れた聖女グレイスは封印を放り出して義兄についていくことにした。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる