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序章〜英雄譚の始まり〜
第1話 小さな災い
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若干12歳の少年、ライ・カムインの朝は早い。日の出とともに起床し、家畜の餌やり、手入れ、農作物の管理、収穫、家事など仕事は尽きない。
ごく稀に仕事が早く終わる日には村の友達と山菜採り、小動物狩りのために森に入る。
大抵、子供の能力では山菜を少し見つけるのが精一杯で、小動物はすぐに逃げられてしまう。運良く仕留めた日は家で肉という豪華な食事にありつくことができる。
「よし、今日の仕事終わりっと」
「お、俺もちょうど終わったところなんだ。クミアの森行こうぜ」
久しぶりに仕事を早く終えたライは、額の汗を拭っていると、少し遠くから声をかけられた。
「そういえば最近行ってなかったな。よし、まだ昼過ぎだし今日はクミアウサギ狙ってみるか」
「ライは地味に狩がうまいからな。頼りにしてるよ」
地味にってなんだよ⋯⋯。ライは少し不服そうに目を細めるが、大して気にすることでもないと森へ向かう準備を始めた。
森といってもクミアの森は小規模なので、肉食の動物や、魔物はほとんど存在しない。
そのため子供だけでも狩りが可能というわけだ。
稀に魔物が出没するが、村の大人たちが定期的に森を見回っているので、ここ数年大きな被害は出ていない。
「ライー、早くしろよ」
「あ、ごめんごめん、今いくよ」
荷物を詰め終え、足早に森へと向かう。ライの他、仲の良い友達二人の合計三人で狩りへ出かけた。
「そういえばよ、最近小動物が警戒心を強めて、中々住処から出て来ないらしいんだ」
「この前の台風影響かな、森にはあんまり影響ないはずだけどな」
「だから最近晩飯に肉でないのか。肉喰いてぇなぁ。」
一週間前に村を襲った台風は、農作物には甚大な被害を及ぼしたが、ここ数日で復旧作業が進み、いつも通りの生活に戻りつつある。
世間話をしながら歩を進めていると、森の入り口にたどり着いた。
「あまり奥にら入らないようにしよう、あと、小動物を見つけたら全員に知らせるように」
「「了解」」
「あと松明は持っているよな」
軽い会議を済ませ三方向へと散った。
しばらく進むと木の根元に青キノコを発見した。
一応食用のキノコではあるのだが、青色の見た目となんとも言えない匂いのせいで子供にはあまり好かれているものではない。
食卓に上がれば最後まで残る食材だ。
しかし、台風で食糧不足の為、仕方なく持ってきた羊皮の袋に数個詰めた。
他にも数種のキノコと山菜を採取したが、肝心のクミアウサギは見つからないまま時間が過ぎ、刻々と色が濃くなる夕焼けが見え始めた。
ライはクミアウサギこそ見つからなかったものの、十分な収穫が得られたので他の二人と合流しようと用意していた松明をかざす。
しばらくして遠くに赤く燃える松明の明かりを発見した。向こうもこちらに気づいたようで、小走りで近づいて来た。
「おーい、何か見つかったか?」
「いや何も。青キノコばっかりだ」
「あんなクソ不味いものよく食えるよな。大人達の気が知れないぜ。」
「まあまあ今時期は仕方ないさ」
ライは一人と合流し、成果を見せ合った。
互いに相手の持つ青キノコの多さに若干萎え、今日の夕食は期待しないことに決めた。
辺りは暗くなり始め、先ほどまで炎のように燃えていた夕焼けも見えなくなっていた。
その代わりに濃厚な夜の気配が山と山の境界線を消した。
二人の持つ二本の松明が暗闇の中、ゆらゆらと揺れて辺りを照らしている。
「タロットはとはまだ会ってないのか?」
「それがよ、森に来て別れたっきり見てないんだよ」
「奥地に入り込んだのかな、注意したのに」
「先に出ているのかも知れないな。そろそろ危ない時間帯だ。早く出よう」
クミアの森は肉食獣、魔物が少ないとは言え夜になれば活動が活発になる。
視界が効かない森の中は万が一の危険があるので森の出口へと向かった。
夜の空気が体を包み込み、不安感を募らせ、自然と足早になる。
「⋯走るか」
「⋯そうだな」
二人は森を後にする。
森は不穏な空気に包まれ、その姿を闇へと変えた。
ごく稀に仕事が早く終わる日には村の友達と山菜採り、小動物狩りのために森に入る。
大抵、子供の能力では山菜を少し見つけるのが精一杯で、小動物はすぐに逃げられてしまう。運良く仕留めた日は家で肉という豪華な食事にありつくことができる。
「よし、今日の仕事終わりっと」
「お、俺もちょうど終わったところなんだ。クミアの森行こうぜ」
久しぶりに仕事を早く終えたライは、額の汗を拭っていると、少し遠くから声をかけられた。
「そういえば最近行ってなかったな。よし、まだ昼過ぎだし今日はクミアウサギ狙ってみるか」
「ライは地味に狩がうまいからな。頼りにしてるよ」
地味にってなんだよ⋯⋯。ライは少し不服そうに目を細めるが、大して気にすることでもないと森へ向かう準備を始めた。
森といってもクミアの森は小規模なので、肉食の動物や、魔物はほとんど存在しない。
そのため子供だけでも狩りが可能というわけだ。
稀に魔物が出没するが、村の大人たちが定期的に森を見回っているので、ここ数年大きな被害は出ていない。
「ライー、早くしろよ」
「あ、ごめんごめん、今いくよ」
荷物を詰め終え、足早に森へと向かう。ライの他、仲の良い友達二人の合計三人で狩りへ出かけた。
「そういえばよ、最近小動物が警戒心を強めて、中々住処から出て来ないらしいんだ」
「この前の台風影響かな、森にはあんまり影響ないはずだけどな」
「だから最近晩飯に肉でないのか。肉喰いてぇなぁ。」
一週間前に村を襲った台風は、農作物には甚大な被害を及ぼしたが、ここ数日で復旧作業が進み、いつも通りの生活に戻りつつある。
世間話をしながら歩を進めていると、森の入り口にたどり着いた。
「あまり奥にら入らないようにしよう、あと、小動物を見つけたら全員に知らせるように」
「「了解」」
「あと松明は持っているよな」
軽い会議を済ませ三方向へと散った。
しばらく進むと木の根元に青キノコを発見した。
一応食用のキノコではあるのだが、青色の見た目となんとも言えない匂いのせいで子供にはあまり好かれているものではない。
食卓に上がれば最後まで残る食材だ。
しかし、台風で食糧不足の為、仕方なく持ってきた羊皮の袋に数個詰めた。
他にも数種のキノコと山菜を採取したが、肝心のクミアウサギは見つからないまま時間が過ぎ、刻々と色が濃くなる夕焼けが見え始めた。
ライはクミアウサギこそ見つからなかったものの、十分な収穫が得られたので他の二人と合流しようと用意していた松明をかざす。
しばらくして遠くに赤く燃える松明の明かりを発見した。向こうもこちらに気づいたようで、小走りで近づいて来た。
「おーい、何か見つかったか?」
「いや何も。青キノコばっかりだ」
「あんなクソ不味いものよく食えるよな。大人達の気が知れないぜ。」
「まあまあ今時期は仕方ないさ」
ライは一人と合流し、成果を見せ合った。
互いに相手の持つ青キノコの多さに若干萎え、今日の夕食は期待しないことに決めた。
辺りは暗くなり始め、先ほどまで炎のように燃えていた夕焼けも見えなくなっていた。
その代わりに濃厚な夜の気配が山と山の境界線を消した。
二人の持つ二本の松明が暗闇の中、ゆらゆらと揺れて辺りを照らしている。
「タロットはとはまだ会ってないのか?」
「それがよ、森に来て別れたっきり見てないんだよ」
「奥地に入り込んだのかな、注意したのに」
「先に出ているのかも知れないな。そろそろ危ない時間帯だ。早く出よう」
クミアの森は肉食獣、魔物が少ないとは言え夜になれば活動が活発になる。
視界が効かない森の中は万が一の危険があるので森の出口へと向かった。
夜の空気が体を包み込み、不安感を募らせ、自然と足早になる。
「⋯走るか」
「⋯そうだな」
二人は森を後にする。
森は不穏な空気に包まれ、その姿を闇へと変えた。
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