「二年だけの公爵夫人~奪い合う愛と偽りの契約~」二年間の花嫁 パラレルワールド

柴田はつみ

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序章 契約のはじまり

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 冬の陽光が、高い天窓から静かに降り注いでいた。
 白薔薇と百合がふんだんに飾られた大広間は、柔らかな香りに満ちている。
 列席者たちの笑い声やグラスが触れ合う澄んだ音が、ゆるやかに空気を揺らしていた。

 私は花嫁席に座り、笑みを形だけに整えていた。
 胸の奥では、どうしようもないほど心臓が早鐘を打っている。

――二年だけの結婚。

 この日を境に、私は公爵アランの妻となる。けれど、それは永遠ではない。
 彼には将来を誓い合った女性がいる。だから私は、ただの仮初めの妻。
 二年後、この席を去る運命だ。

 それでも……少しの間だけでいい。
 彼の隣に座れることが、ずっと夢だったから。

 隣にいるアランは、礼儀正しく穏やかな微笑みを保ったまま、周囲の来賓へ視線を向けていた。
 彫刻のように整った横顔。銀糸の髪が光を受け、淡く輝く。
 けれど、一度も私を見ようとはしない。

 距離のある優しさ――それが、今の私と彼の距離そのものだった。

「……おめでとう、エリシア」

 低く落ち着いた声が、耳元で囁かれた。
 振り向けば、そこに立っていたのは義兄のレオニード。
 血の繋がりはないが、幼い頃から私を守ってくれた人。
 だが今、その青い瞳は兄妹に向けるものとは違う熱を帯びている。

「ありがとうございます、義兄さま」

 礼を述べようとした瞬間、彼の手が私の手を包み込んだ。
 婚礼の場にしては、あまりにも長く、強く。

「……幸せになれるのか?」

 低く抑えられた声。探るような眼差しに、私は息を詰めた。
 二年契約の結婚など、彼には知らせていない。
 なのに、すべてを見透かしているかのようだった。

「もちろんだ」

 横から、鋭くも静かな声が割って入る。
 アランだ。
 彼は手にしたグラスを軽く傾けながら、涼やかな笑みをレオニードへ向けている。
 その瞳の奥には、氷の刃のような光が宿っていた。

「彼女は私の妻だ、レオニード卿。あなたが心配することではない」
「そうか。だが……“本当に”大切にできるのかは、見させてもらう」

 二人の笑みは形だけ。視線は正面からぶつかり合い、火花が散る。
 一瞬、大広間の空気が張り詰めたように感じられた。
 だが、周囲の人々は気づかず、音楽と談笑が続いている。

 私は小さく息を呑み、視線を落とした。
 この瞬間から、二人の男の間で何かが始まってしまったのだと、直感でわかった。

 契約結婚――ただ静かに終わるはずだった二年間は、
 この日から確実に、波立ち始めた
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