舞踏会は裏切りの夜

柴田はつみ

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6 過去の残響 新たな道

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晩餐会で再会して以来、アルフレッドはリリアナのことが頭から離れずにいた。


社交界の誰もが、変貌した彼女に注目していた。男たちは、彼女の知性と落ち着いた物腰に惹かれ、女たちは、その洗練された美しさに嫉妬と憧れの眼差しを向けている。


以前の彼にとって、リリアナは取るに足らない存在だった。だが、今は違う。彼女の存在は、まるで喉に刺さった小骨のように、彼を苛んだ。


ある日、アルフレッドは画廊で偶然、リリアナの姿を見かける。彼女はルシアンと並び、熱心に絵画について語り合っていた。二人の間に流れる穏やかで親密な空気に、アルフレッドは焦燥感を覚えた。




「リリアナ、そこで何を?」


彼は思わず声をかけた。


リリアナは彼を振り返り、平然とした表情で答える。


「アルフレッド様。ご覧の通りですわ。ルシアン様から、新しい芸術について学んでいるのです」


ルシアンは、にこやかにアルフレッドに挨拶をした。


「リリアナ様は、この国の令嬢とは思えないほど、知的好奇心に溢れていらっしゃいます。彼女と話していると、私も刺激を受けますよ」


ルシアンの言葉に、アルフレッドの胸はざわついた。彼は、かつてリリアナを「地味で退屈」だと決めつけていた。だが、彼女は自分の知らない世界で、生き生きと輝いていたのだ。



「…リリアナ、少し、二人で話せないか」



アルフレッドはそう言って、彼女を画廊の外へと連れ出した。


「君は、どうしてしまったんだ? 以前の君は…」


「以前の私? アルフレッド様にとって都合の良かった、口数の少ない人形のことでしょうか?」


リリアナの言葉に、アルフレッドはたじろいだ。


「違う! 僕はただ、君と…」


「もう、私を都合の良い道具として扱うのはおやめください。私はもう、あの日の私ではありません」


リリアナは、静かに、そしてきっぱりと言い放った。


その様子を、遠くから見守っていたロバートが、そっとリリアナの元に近づく。



「リリアナ、もう大丈夫だ」


ロバートはアルフレッドを冷ややかに見つめた。


「公爵子息様。婚約者だったリリアナ様を侮辱したことを、もうお忘れになりましたか?」


ロバートの言葉に、アルフレッドは顔色を変えた。彼の言葉が、リリアナに聞かれていたことを知ったのだ。



リリアナは、ロバートとルシアンという二人の男性に支えられ、アルフレッドの前から去っていった。


彼女の背中は、もはや孤独ではなかった。そして、彼女の心は、かつての愛を求めて揺れ動くことはもうなかった。



残されたアルフレッドは、自分の軽率な言葉と、その代償の大きさを痛感していた。


彼は、本当の彼女を理解しようともせず、ただの「都合の良い女」として扱った。


その結果、彼は最も価値あるものを、永遠に失ってしまったのだ。


後悔の念が、彼の胸を激しく締め付けていた。
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