舞踏会は裏切りの夜

柴田はつみ

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7 破られた仮面 懺悔

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リリアナが去ってからというもの、アルフレッドの心は荒れ果てていた。社交界は相変わらず華やかだったが、彼の目には全てが虚ろに見える。 

かつては、プレイボーイという仮面を被ることで得られる称賛が心地よかった。だが、今はその仮面が、リリアナを失った真の原因だとわかっている。



ある夜、アルフレッドは自室の書斎で一人、ウィスキーを傾けていた。そこに、彼の父であるリドリー公爵が静かに現れる。



「アルフレッド、最近の君は一体どうしたのだ。あのリリアナ嬢を失ってから、顔つきが変わってしまった」


公爵は、息子を厳しく見つめた。


アルフレッドは俯いたまま、絞り出すような声で答える。


「父上…私は、愚かでした。彼女を、ただの道具として見ていたのです。私の軽率な言葉が、彼女を深く傷つけた」


「今更か。彼女は、私たちが公爵家のためにと選んだ、聡明で美しい女性だった。君は、それを自ら手放したのだ」


「はい。そして、今になって気づいたのです。私が本当に求めていたのは、彼女のような、心から信頼できる存在だったと。あの日、私が心にもないことを言わなければ…」



アルフレッドは、初めて父の前で、自らの弱さと後悔を口にした。彼の心には、リリアナの静かな眼差しが焼き付いている。


もはや、彼女の瞳には自分への憧れも恋心もない。ただ、失望だけがあった。
数日後、アルフレッドはリリアナの屋敷を訪れた。


門前払いを覚悟していたが、メイド頭のエミリーが、彼の訪問をリリアナに伝えてくれた。そして、庭園で一人、本を読んでいるリリアナの元へ案内された。


「リリアナ…」


彼の声は、ひどく震えていた。


「アルフレッド様、何の御用でしょう。私たちには、もう話すことは何もないはずですわ」



リリアナは、本から目を離さず、冷たく言い放った。


「どうか、聞いてくれ。僕は…愚かだった。君の心を、弄んだ…本当に、申し訳ないと思っている」



アルフレッドは、リリアナの前に膝をついた。彼の仮面は、完全に剥がれ落ちている。


「君を失ってから、気づいたんだ。僕は、ずっと、誰かに愛されることを恐れていた。だから、プレイボーイの仮面を被って、君を傷つけた。君は、僕が初めて心から信じられた…光だったのに」



アルフレッドの言葉に、リリアナはゆっくりと顔を上げた。彼女の瞳は、もはや怒りも悲しみも宿していなかった。ただ、深く、静かな湖のようだった。



「アルフレッド様。お言葉は、ありがたく頂戴いたします。ですが、私はもう、過去を振り返るつもりはございません。私は、あなたに傷つけられた自分を乗り越え、新しい人生を歩み始めました。あなたへの許しは、私の心の中で、ゆっくりと育まれるでしょう。ですが…私たちの関係は、もう終わったのです」




リリアナはそう告げると、静かに立ち上がり、アルフレッドに背を向けた。



彼女の背中は、もう、彼が追いかけることのできない遠い場所へと向かっていた。


アルフレッドは、ただ一人、庭園に膝をついたまま、その背中を見つめるしかなかった。


彼の懺悔は、彼女の未来を変えることはできなかったのだ。
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