舞踏会は裏切りの夜

柴田はつみ

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9 王城の回廊そして出会い

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王妃様の侍女となったリリアナの生活は、目まぐるしくも充実したものだった。


膨大な書類の整理や外交官との応対、そして何より王妃様との知的な会話は、彼女の知性をさらに磨き上げていった。


ある日の午後、リリアナは王妃様から頼まれた書物を探しに、王城の図書館へと向かっていた。


窓から差し込む光が、磨き上げられた大理石の廊下を明るく照らしている。王城の静寂な空気に包まれ、リリアナは歩みを早めた。


そのとき、曲がり角を曲がったところで、誰かとぶつかってしまった。手から滑り落ちた書物が、床にばらばらと散らばる。


「申し訳ございません!」


リリアナは慌てて頭を下げ、散らばった本を拾い集めようとした。


「いや、こちらこそ。私が不注意だった」


耳元に響いたのは、深く、落ち着いた声だった。顔を上げると、そこに立っていたのは、一人の青年。深い碧色の瞳に、知性と威厳が宿っている。


「お怪我は?」


青年は、リリアナの顔をじっと見つめた。


そのまっすぐな視線に、リリアナはわずかに戸惑いを覚える。



「いいえ、大丈夫です。わたくしこそ、申し訳ございませんでした」



リリアナはそう言って、再び頭を下げた。


青年は、彼女の言葉を遮るように、静かに尋ねる。



「もしかして、そなたはリリアナ嬢か?」


その言葉に、リリアナは驚いて顔を上げた。なぜ、彼が自分の名を知っているのだろうか。


「はい、さようでございますが…」


「やはり。王妃様から、あなたのことを伺っていた。私は、この国の王太子、エドワードだ」


彼の言葉に、リリアナは再び息をのんだ。



目の前の青年が、次期国王となる王太子だとは、夢にも思わなかった。


「王太子殿下…! 大変失礼いたしました」


リリアナは、慌てて深く跪いた。エドワードは、そんな彼女に優しく語りかける。


「顔を上げてくれ。侍女として、そして一人の女性として、王妃様はあなたを高く評価されている。そのような方が、わたくしの不注意で怪我をしては申し訳が立たない」


リリアナが顔を上げると、エドワードは彼女の目を見て、静かに言った。


「あなたのことを、もっと知りたい。もしよければ、今度、ゆっくりと話す機会をいただけないか?」


彼の眼差しには、アルフレッドのような打算的な色合いはなかった。ただ、一人の人間として、リリアナという存在に興味を抱いている、そんなまっすぐな光が宿っていた。


リリアナは、舞踏会で受けた傷を乗り越え、新しい一歩を踏み出した。


そして今、彼女の目の前には、彼女の知性と人間性を尊重してくれる、新たな出会いが待っていた。


彼女の人生は、もはや過去に囚われることはない。
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