十年越しの幼馴染は今や冷徹な国王でした

柴田はつみ

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第二章 冷たい再会

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王宮の謁見の間は、重厚な空気に溢れていた。

エラナは深々と頭を垂れ、国王アレンの入場を待つ。やがて、玉座の間に響く足音。それは、幼い頃に聞かせてもらった優しい子守唄とは似ても似つかない、冷たく響く音だった。



「顔を上げよ、エラナ」


その声もまた、記憶の中の温かみを失っていた。



エラナはゆっくりと顔を上げる。そこにいたのは、幼い頃に見た愛らしい面影を失った、威厳に満ちた男だった。


鋭い眼差しはエラナを射抜くようで、その唇は固く結ばれている。十年という歳月は、一人の少年を、手の届かない存在に変えていた。



「…アレン様」


エラナは精一杯の敬意を込めてそう呼んだ。しかしアレンは、その呼び方に眉をひそめた。



「もうアレンではない。陛下と呼べ」


その言葉に、エラナの胸は締め付けられた。


「…承知いたしました。陛下」



「うむ。お前との婚姻は、国のため、家のための大儀である。余は情など持ち合わせておらぬ。お前もそうだろう」




アレンの言葉は、氷のように冷たい。


それは、エラナの心の奥底に眠っていた、わずかな期待の光さえも消し去るものだった。



「…はい。わたくしも、そのようなおつもりで」



嘘だった。エラナは、本当はほんの少しだけ、昔のような関係に戻れるのではないかと期待していた。だが、その淡い希望は、今、完全に打ち砕かれた。



「結構だ。では、婚礼の準備を進めよ。余は忙しい。下がってよい」



アレンはそれだけ言うと、もうエラナには目もくれず、侍従に次の指示を出し始めた。エラナは、ただ虚ろな心で謁見の間を後にするしかなかった。



王宮の廊下を一人歩きながら、エラナは思う。


「これが…わたくしの未来。凍てついた宮殿で、愛のない結婚生活を送るということ…」



この結婚は、ただの儀式。二人の間に愛が生まれることなど、決してないのだろう。そして、エラナは決意した。



「いつか必ず、この結婚から逃れてみせる」


彼女の瞳には、ほんの少しの涙と、新たな決意だった。
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