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第7章 心の揺らぎ
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「王妃様…」
レオは、エラナの前に、そっと一枚の紙を差し出した。
「これは…?」
「聖女マリア様の、出生の秘密です」
エラナは、震える手で紙を受け取った。
そこに記されていたのは、マリアが、実は、アレンの亡き母、先代王妃の遠縁にあたる貴族の娘であるということ。
そして、幼い頃から病弱で、アレンが、彼女を救うために、聖女の称号を与え、特別な庇護下に置いていたという事実だった。
「どうして…どうして、陛下は、このことを、わたくしに話してくださらなかったの…」
エラナは、目頭を押さえた。
アレンは、ただ、国の、そして愛する人のために、心を痛めていただけだった。自分は、なんと愚かだったのだろう。
「王妃様…」
レオは、エラナの肩に、そっと手を置いた。
「…陛下は、王妃様を、信頼されていなかったのでしょう。いや…信頼する以前に、心を開くことを拒んでいらした。…それは、王妃様が、陛下に心を開いていなかったからではありませんか?」
レオの言葉に、エラナは、ハッとした。
確かに、自分は、この結婚を、ただの儀式としか考えていなかった。アレンの心に寄り添おうともせず、ただ、この結婚から抜け出すことばかりを考えていた。
「わたくしは…なんて、愚かだったの…」
エラナは、涙をこぼした。
その涙は、アレンへの後悔と、そして、レオへの申し訳なさからくるものだった。
「…レオ。あなたには、本当に、感謝しているわ。わたくしは、あなたの言葉で、目を覚まさせられた」
エラナは、涙を拭い、レオの目を見た。
「もう、大丈夫よ。わたくしは、もう、あなたに、何も頼まない。…これからは、わたくし自身の力で、陛下と向き合っていくわ」
レオは、エラナの決意に満ちた眼差しに、静かに頷いた。
「…かしこまりました。王妃様のご決意、承知いたしました。…ですが、もし、何かあった時には、いつでも、私を頼ってください」
レオは、そう言うと、深く頭を下げ、部屋を出ていった。
その日の夜、エラナは、アレンの部屋を訪れた。部屋の扉を叩くと、アレンの声が、冷たく響いた。
「…誰だ」
「陛下…わたくしです。エラナです」
部屋の中から、沈黙が返ってきた。
エラナは、もう一度、扉を叩こうとしたが、その手を止めた。
「…わたくしは、知りました。聖女マリア様のことを…」
エラナが、そう言うと、中から、扉が開いた。
アレンが、厳しい表情で立っていた。
「…何の用だ」
アレンの言葉に、エラナは、震える声で言った。
「…お詫びを、申し上げたくて。わたくしは、陛下を、疑っていました。聖女マリア様との関係を…」
アレンは、何も言わずに、エラナを部屋の中に招き入れた。そして、二人は、向かい合って座った。
「…なぜ、わたくしに、話してくださらなかったのですか?」
エラナは、震える声で尋ねた。
「…言う必要がないと、思ったからだ」
アレンは、静かに答えた。
「余は、お前との結婚を、ただの政略結婚としか考えていなかった。…お前も、そうだったのだろう?」
アレンの言葉に、エラナは、何も言い返せなかった。
「だが…」
アレンは、そこで言葉を止めた。
そして、エラナの目を、じっと見つめた。
「…だが、お前は、この結婚から、抜け出そうとしていた。…お前の護衛騎士と、二人で…」
アレンの言葉に、エラナの心臓が、激しく高鳴った。
「…違います! わたくしは、ただ、真実を知りたかっただけで…」
「…もう、いい」
アレンは、冷たく、エラナの言葉を遮った。
「…余は、お前を、信用できない。…お前は、余の妻ではない。…ただ、この国の王妃という、名ばかりの存在だ」
アレンは、そう言うと、立ち上がり、窓の外に目を向けた。
エラナは、その場に立ち尽くし、ただ、アレンの、遠ざかる背中を、見つめるしかなかった。
「…お前は、出て行け」
アレンの言葉が、冷たく、部屋に響いた。
エラナは、涙をこぼしながら、部屋を後にした。
もう、何かが、終わってしまった。
そう、エラナは、心の奥底で、感じていた。
レオは、エラナの前に、そっと一枚の紙を差し出した。
「これは…?」
「聖女マリア様の、出生の秘密です」
エラナは、震える手で紙を受け取った。
そこに記されていたのは、マリアが、実は、アレンの亡き母、先代王妃の遠縁にあたる貴族の娘であるということ。
そして、幼い頃から病弱で、アレンが、彼女を救うために、聖女の称号を与え、特別な庇護下に置いていたという事実だった。
「どうして…どうして、陛下は、このことを、わたくしに話してくださらなかったの…」
エラナは、目頭を押さえた。
アレンは、ただ、国の、そして愛する人のために、心を痛めていただけだった。自分は、なんと愚かだったのだろう。
「王妃様…」
レオは、エラナの肩に、そっと手を置いた。
「…陛下は、王妃様を、信頼されていなかったのでしょう。いや…信頼する以前に、心を開くことを拒んでいらした。…それは、王妃様が、陛下に心を開いていなかったからではありませんか?」
レオの言葉に、エラナは、ハッとした。
確かに、自分は、この結婚を、ただの儀式としか考えていなかった。アレンの心に寄り添おうともせず、ただ、この結婚から抜け出すことばかりを考えていた。
「わたくしは…なんて、愚かだったの…」
エラナは、涙をこぼした。
その涙は、アレンへの後悔と、そして、レオへの申し訳なさからくるものだった。
「…レオ。あなたには、本当に、感謝しているわ。わたくしは、あなたの言葉で、目を覚まさせられた」
エラナは、涙を拭い、レオの目を見た。
「もう、大丈夫よ。わたくしは、もう、あなたに、何も頼まない。…これからは、わたくし自身の力で、陛下と向き合っていくわ」
レオは、エラナの決意に満ちた眼差しに、静かに頷いた。
「…かしこまりました。王妃様のご決意、承知いたしました。…ですが、もし、何かあった時には、いつでも、私を頼ってください」
レオは、そう言うと、深く頭を下げ、部屋を出ていった。
その日の夜、エラナは、アレンの部屋を訪れた。部屋の扉を叩くと、アレンの声が、冷たく響いた。
「…誰だ」
「陛下…わたくしです。エラナです」
部屋の中から、沈黙が返ってきた。
エラナは、もう一度、扉を叩こうとしたが、その手を止めた。
「…わたくしは、知りました。聖女マリア様のことを…」
エラナが、そう言うと、中から、扉が開いた。
アレンが、厳しい表情で立っていた。
「…何の用だ」
アレンの言葉に、エラナは、震える声で言った。
「…お詫びを、申し上げたくて。わたくしは、陛下を、疑っていました。聖女マリア様との関係を…」
アレンは、何も言わずに、エラナを部屋の中に招き入れた。そして、二人は、向かい合って座った。
「…なぜ、わたくしに、話してくださらなかったのですか?」
エラナは、震える声で尋ねた。
「…言う必要がないと、思ったからだ」
アレンは、静かに答えた。
「余は、お前との結婚を、ただの政略結婚としか考えていなかった。…お前も、そうだったのだろう?」
アレンの言葉に、エラナは、何も言い返せなかった。
「だが…」
アレンは、そこで言葉を止めた。
そして、エラナの目を、じっと見つめた。
「…だが、お前は、この結婚から、抜け出そうとしていた。…お前の護衛騎士と、二人で…」
アレンの言葉に、エラナの心臓が、激しく高鳴った。
「…違います! わたくしは、ただ、真実を知りたかっただけで…」
「…もう、いい」
アレンは、冷たく、エラナの言葉を遮った。
「…余は、お前を、信用できない。…お前は、余の妻ではない。…ただ、この国の王妃という、名ばかりの存在だ」
アレンは、そう言うと、立ち上がり、窓の外に目を向けた。
エラナは、その場に立ち尽くし、ただ、アレンの、遠ざかる背中を、見つめるしかなかった。
「…お前は、出て行け」
アレンの言葉が、冷たく、部屋に響いた。
エラナは、涙をこぼしながら、部屋を後にした。
もう、何かが、終わってしまった。
そう、エラナは、心の奥底で、感じていた。
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