盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶

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第三章 いざ!冒険へ!

黒いガサガサ

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 寄り道をした事によるタイムロスを取り戻そうと、姉妹は早足で山への入口までの道を歩いた。
 そして道を進むこと二十分、遂に山への入口へと到着したのだ。

「ここが山への入口って言われてるとこだね」

「少し暗くて怖い……」

 姉妹たちの目の前には、木々に囲まれた薄暗い山道が見えている。耳には、木々が風に揺れて擦れる音やうるさい虫の声が聞こえてくる。しかも、地面は湿っていて歩きづらそうだ。

「でも、洞窟がありそうな山だね!」

「どういうこと……」

「薄暗くてザワザワしてて!」

「分からなくはないけど……」

 ルルは今にでも山の中に入って行きそうな勢いだが、ナナは一歩引いたところで山の雰囲気に圧倒されている。

「もう入っちゃおうよ……ここで足踏みしてるとどんどん入りずらくなる……」

 熊の一件ですっかり怖がってしまったナナは、一刻も早く用事を済ませて帰りたくなっていた。もしかしたら山道にも、さっきのような魔法を使う動物が居るのかもしれない。そう思うと、山の中には入らずに村で買い物をして帰ってもよいのでは……という気持ちも出て来た。

「そうだね! はやく洞窟を確認して帰ろう!」

「う、うん……」

 姉妹はお互い向き合って頷くと、握る手にじわりと汗を滲ませながら山への入口に踏み込んだのだった。

 ======

 太陽を遮る木々。歩きづらい泥道。耳障りな虫の声。
 しかし姉妹は、歩む足を止めることは無い。
 というよりも、ここまで来たらもう後戻りは出来ないと思う。ここで戻れば、私たちは熊に襲われる為だけに外に出たようなものだ。
 でもそんなのは悔しいから、洞窟で檻を見て帰る。そう思いながら、山道を進んでいるのだ。

「洞窟、見えないね」

 ナナがポツリと呟いた。

「そうだね、でもまだ歩き始めて五分くらいだから、多分まだまだだよね」

「そうだよね、ナナ頑張る」

 こんなに歩きづらい山道でも、姉妹は息ひとつ切らしていない。もしかしたら、普段行っている魔法の練習で体力が付いたのかもしれない。

「うん、頑張ろう――」

 ルルがそう口にした時、それは二人の前に現れた。

「これ、動物……?」

「お姉ちゃん……これ、少し動いてるよ……」

 姉妹の目線の先には、動物と思われる大きな黒色の『なにか』が道を塞いでいた。

「こ、怖いよぉ……このままじゃ道を通れないじゃん……」

 ナナは怯えた声を出すと、完全にその場で足を止めてしまった。それにつられて、手を繋いでいたルルも足を止める。
 その気持ちはルルにも分かる。
 だって、道を大きく塞いでいるのにも関わらず、『それ』は地面の上でジタバタと暴れているのだ。しかも、ガサガサと嫌な音を鳴らしながら。

「本当にこのままじゃ通れないよね……」

 道の両脇には、姉妹の背丈よりも大きな草木が生えていて、一度足を踏み入れてしまえば二度と戻って来れなくなりそうだ。だから、この道を進むしか方法がない。

「お姉ちゃん、どうしよう……」

 ナナが心配気な声を上げる。
 道を塞いでいる『なにか』と姉妹の距離は、約五十メートルと言ったところだろうか。
 その『なにか』は、道の上でジタバタと暴れているだけで、姉妹たちに襲いかかる様子はない。
 そもそも、姉妹たちが居ることに気が付いていないのかもしれない。

「踏みつけながら行けないかな……」

「それは怖いから嫌だよ……」

 サイコパスみたいなことを言うルルを、至って真面目に返すナナ。
 ここで私たちの冒険は終わってしまうのか――。
 いや、それだけはダメだ。
 ルルは心の中でそう思って強く頷くと、繋いでいた手を解いた。

「お姉ちゃん……?」

 いきなり手を離されたナナが不安そうな表情を浮かべる。その不安をかき消すように、ルルは目に決意の色を灯した。

「私が様子を見てくるよ」

 その力強い声は本気だった。
 しかし、それを聞いたナナの表情には不安な色が濃くなるばかりだ。

「ダメだよ危ないよ……さっきのクマさんみたいに襲ってくるかもしれないよ……」

「だ、大丈夫だよ! その時はまた魔法を使ってやっつけるから!」

 ルルには火と雷の魔法がある。
 雷の魔法はまだ完璧では無いが、火の魔法なら五秒もあれば火を放つ事が出来る。

「いきなり襲われたら?」

 ナナはルルの魔法のことをよく分かっている。もしいきなり襲われれば、瞬時に魔法は唱えられないだろう。その時は……その時かもしれない。

「うっ……いや、多分大丈夫……避けるから……」

 そんな自信なんてない。だけど私が様子を見に行かなければ、ここで大幅な足止めを食らう。そして運が悪ければ、今日はここから進めないかもしれない。
 それよりは、少しでも行動した方がいい。ルルはそう思ったのだ。

「とにかく! 私が様子見てくるから!」

 ルルはそう言うと、ナナの返事も待たずに歩き出した。

「だ、ダメだよお姉ちゃん……」

 後ろから聞こえるナナの小さな声が、歩みを進めると共に段々と離れていく。道を塞ぐ『なにか』に近付いている証拠だ。
 その『なにか』に近づけば近づくほど、ガサガサという嫌な音が大きく聞こえてくる。
 そして、それとの距離が十メートルまで近付いた時、その嫌な音の正体が分かった。

「え、羽?」

 思わず声を上げたルルの目の前には、道の上で羽を羽ばたかせている大きな黒い鳥の姿があった。
 ガサガサという嫌な音は、鳥が羽を羽ばたかせている音だったのだ。
 しかし、何で羽をばたつかせているのに飛ばないのだろう。
 そう思いながも更に近付いてみると、黒い鳥と目が合った。

「ひっ……」

 ルルは目が合った瞬間に身の危険を感じて、火の魔法を唱えようとした。だが、黒い鳥はルルに襲いかかろうとはしない。

「カァァ」

 その代わりに、弱々しくマヌケそうな鳴き声を上げたのだ。ルルは聞いたこともない鳴き声に顔をしかめた。

「かぁ?」

 そんな鳴き声を上げる鳥に、ルルは恐る恐る近付いてみるのだった。
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