盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶

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第四章 洞窟の中には

大きな檻の謎

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 洞窟内には明かりが点された。姉妹の目の前に現れたのは、魔女さんの家よりも大きな檻だった。
 この中にドラゴンが入っていたのだろうか。
 魔法使いさんの言っていたことを檻の大きさと照らし合わせれば、ここにドラゴンが閉じ込められていたとして間違いなさそうだ。

「これが探してた檻……」

 感慨深そうな声を上げながら、ルルは檻へと近づいて行く。

「待ってお姉ちゃん……!」

 走っていってしまったルルの背中をナナが追う。
 ルルはひと足早く檻へと辿り着き、大きな鉄の柵を両手で掴んでいる。そこへ遅れてナナが到着すると、興味深そうに檻を見上げたり鉄の柵を叩いたりしている。

「ナナ、何してるの?」

 珍しく好奇心旺盛なナナを見て、ルルは鉄の柵に登ろうとしながら声を掛けた。

「これ、ナナが確認したかった事なんだよね」

 ナナはそう言うと、鉄の柵の間を行ったり来たりし出した。
 これが確認したかったこと?  それだけのジェスチャーでは何も分からない。

「んー? どういうこと?」

 ルルは首を傾けながら、目の前をクルクルと行き来するナナを見続けている。

「これで何か気付かない?」

 ナナはそう言いながら檻の中へと入ったり出たりしている。

「わからないなぁ……」

「じゃあもしさ、お姉ちゃんがこの檻に閉じ込められたらどう?」

「どうって……嫌に決まってるでしょ」

「本当にそう?」

 ナナはそう言って足を止めると目を鋭くさせた。
 いや、本当にそうだ。誰でも檻に閉じ込められるのは嫌なのではないか。
 いつも元気な私だが、誰も居ない檻に閉じ込められるのはキツい。一日なら楽しいかもしれないが……。

「いや、本当に嫌だよ? ナナはいいの?」

 そんなことを聞くというのなら、ナナは閉じ込められても良いということなのだろうか。ルルはそう思って尋ねると、ナナは顎に手を当てて考え始めた。

「うーん。嫌だけど、捕まったら捕まったで大丈夫じゃない?」

「大丈夫とは?」

「だって簡単に出られるもん」

 どういうことだろう?  と思い首を傾げると、ナナはもう一度檻を出たり入ったりし始めた。出たり入ったり――。

「あー! 本当だ! 出たり入ったり出来る!」

「でしょ?」

 ナナの言う通り柵の間が広すぎて、大人でも二人は余裕に通れる程だ。こんな所に私が閉じ込められても、すぐに檻から出られるだろう。

「へー、そういうことかー、人間用では無いんだね」

 そう言いながらルルは、ナナと一緒になって檻から出たり入ったりし始めた。確かにこれは楽しいかもしれない……。

「ねえねえ、なんでナナはこれを確認したかったの?」

 ルル檻の中で立ち止まって聞くと、ナナも一緒に立ち止まった。

「この檻って何の動物を閉じ込めておこうと思ったんだろうね」

「こういう大きな動物じゃないの?」

「んー、今日出会った熊さんと鳥さんなら余裕で出れそうじゃない?」

「あー、確かに」

「他に大きな動物って何かいる?」

 ナナに尋ねられて頭を捻るルル。そう言われてみれば、大抵の動物であればこの柵を余裕ですり抜けてしまいそうな気がする。

「前に会ったケルベロスさんは?」

「ギリギリ通れるか通れないかくらい?」

「そうだよねー、じゃあ居ないのかなー」

 これ程に大きな動物は珍しいだろう。人間は勿論のこと、熊やケルベロスが通れるとなると、この檻は何を閉じ込めるために作られたのだろう。

「あ、そういうことか! ナナの言いたいことが分かった気がする!」

「ほんと?」

「うん! これは何のために作られた檻なんだろうってことだよね!」

「よく分かったね」

「えへへー、もっと褒めても良いんだよ!」

「いや、それはいいや」

「はい」

 とにかく、ナナの言いたいことは分かった。だがしかし、だから何だと言うのだろう。ナナの考えているその先が、ルルには分からなかった。

「ドラゴンの檻だからって何なの?」

 ルルは思ったことをそのまま聞いてみた。するとルルは、人差し指をピンと上げて話し始める。

「だってさ、ドラゴンって普通じゃそこら辺に居ないよね?」

「うん、見たことないね」

「だからさ、こんなドラゴン専用みたいな檻があるっておかしくない?」

「あー、そう言われてみればそうかも。最初からドラゴンが現れるって分かってたような作りだし……」

 ナナは顎に指を当てて考え始める。その姿はまるで探偵か何かだ。そして数拍を置いて顔を上げると、ナナは渋い表情をしながら説明を始めた。

「もしかしたらだけどね? この檻は誰かがドラゴンのために作った檻なんだよ。その人はもしかしたら、魔法か何かでドラゴンを生み出して、要らなくなったドラゴンをここに閉じ込めてた……とか?」

 それは考えが飛躍しすぎではないのか?
 でも、何だかんだでつじつまは合っている。

「うーん、それは何となく分かったんだけどさ、もしドラゴンを魔法で生み出せるなら消すことも出来るんじゃない?」

「そうかもしれないけど、もしかしたら閉じ込めなくちゃいけない理由があったのかも」

「そんな理由があるの?」

 その問いに少し頭を悩ませたナナがある考えに到達すると、生唾を喉に通して答えた。

「見せしめ……とかかな?」

「見せしめ……」

 ドラゴンを見せしめに閉じ込める? それはまた何のためだろう。そんなことをするよりも、魔法でドラゴンを消し去った方が早い気はするが……。

「でもでも、見せしめでドラゴンをここに入れたのだとしたらさ、その人って私たちも知ってるよね? ドラゴンを倒した人がここに閉じ込めるように言ったんだからさ」

 この檻を作った人が、ドラゴンをここに閉じ込めた人と同一人物ならば、私たちはその人を知っている。
 ドラゴンを閉じ込めた人――それはドラゴンを倒した人だ。

「「魔法使いさん……」」

 姉妹が声を合わせてその名を口にした途端、洞窟の中が真っ暗になった――。

「うわぁ! なになに! 暗い!」「停電……?」

 いきなり部屋から明かりが消え、目の前が何も見えなくなる。たいまつの火も消えてしまっているので、帰る時は明かりなしで帰ることになるのだろうか。
 そんなことを考えていると、階段から人が降りてくる足音が聞こえてきた。

 ――カツカツカツ。

 その足音はゆっくりと近づいてくる。
 そしてついに、姉妹たちの目の前で足音が止まる。
 暗がりに慣れてきた目が、その姿を薄らと捉える。それは、さっき名前を出した人物――魔法使いさんだった。姉妹は驚いて喉がヒュッとなった。
 そんなこともお構いなしに、魔法使いさんはゆっくりと口を開く。

「そこまで気が付いてしまったのなら、二人をここから出すことは出来ない。悪く思うな」

 聞き覚えのある声が姉妹の耳に届くと同時、魔法使いさんの手から光が溢れた。
 その瞬間、姉妹は風のような物で檻の中へと飛ばされ、今まで出たり入ったりしていた鉄の柵の間には見えない壁が出現した。
 それを叩いたり蹴ったりしてみるが、見えない壁がなくなることはなかった。
 そして十分も経つと、自分たちは閉じ込められたのだと理解することが容易に出来たのだった。
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