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最終章 姉妹の選択
本音と本音
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電話が終了すると、姉妹は揃ってスマートフォンの画面に釘付けだった。その目は大きく見開かれ、冷や汗のようなものが首筋を伝っている。
「ねぇ……最後のセリフ……聞こえた?」
ナナが恐る恐るルルの顔を覗く。
「う、うん。絶対に『双子』って言ってたよね……」
確かに魔女さんの師匠は『双子の魔法使い見習い』と言っていたが、魔女さんの話しだと師匠はこの世には居ないはず。なのにどうして、私達のことを知っているのだろうか。
「もしかしたら魔女さんの師匠さんって凄い人なのかも!」
少しだけ考えたルルは、そんな答えに辿り着いたらしい。
「確かに凄い人なのかも……」
一方のナナもルルの意見に同意らしく、顎に手を当てながら遠い目で床の方を眺めている。
するとルルは、何かを思い出したかのように口を開いた。
「魔女さんって本当の魔女じゃないんだよね?」
「うん、そう言ってたね」
「それでもあれだけ魔法が使えるってことは、本物の魔女はもっと色々な魔法が使えるのかな?」
「うーん、そうかもしれないよね……」
ということは、本物の魔女である師匠さんは魔女さんよりも多く魔法を使えるということだ。
あの魔女さんでさえ、ありとあらゆる魔法を使っていたのに、その上を行く魔女さんはどういった魔法を使うのだろうか。そうなことを延々と考えていると、またもルルが口を開いた。
「じゃあもしかしたらさ、魔女さんと私たちがこうやって過ごすことを予知した……とか?」
「そんなこと出来るのかなぁ」
「でもそうじゃないと最後のセリフは説明出来なくない?」
「確かにそうだけど……」
それでは魔女ではなく占い師の方が近いのではないだろうか。ナナはそう考えたが、魔法でも出来るのかと自己完結を終えた。
「そう思うと本物の魔女はレベルが違うんだね……なんか、魔女さんはまだ人間に近いかもだけど、師匠さんは人間離れしてるね」
見たことも無い師匠さんを思い浮かべながら、ナナは深々な声を発した。
「そうだね。さすが魔女さんに魔法を教えただけのことはあるよ」
何故だか偉そうなルルの言葉で、この話しに区切りが着いた。
姉妹は頭の中で魔女さんの師匠はどんな人だったのだろうと考えていると、部屋の中には静寂が訪れた。
その間にも、ルルが手に持っているスマートフォンの画面は光り続けている。それに気が付いたルルは、画面をナナへと見せるように顔の前に差し出した。
「この青い線の方向に行けば魔女さんが居るんだよね?」
画面には道を表しているのであろう白い道と、その周りには緑しかない。その上に自分達を表している赤色の矢印と、魔女さんの居場所に繋がる青い線が見られる。
「そう言ってたね」
ナナが頷きながら答えると、ルルは手を下ろしてスマートフォンの画面を覗き込む。
すると、指で画面をタッチしたり線をなぞり出した。
「お姉ちゃん、何してるの?」
「何か反応するのかなーって」
しかしルルがいくら画面を触っても、地図が変化を見せることはなかった。恐らく、画面は操作が出来ないのだろう。
「うーん、何にも出来ないね」
ルルはそう言うと画面の操作を止め、目の前に立つナナに向き直った。その真剣な眼差しに、ナナは少しだけ心臓をギクリとさせる。
「な、なに……?」
そんな言葉とは裏腹に、ナナの目はしっかりとルルを見ている。
「あのね? 洞窟の件でナナにはすごく迷惑を掛けたと思ってるんだよ」
「う、うん……」
「私の興味だけでナナのことを危険な目にあわせちゃって、すごく悪いなーって。それでね? 多分これからはもっと危ない目にあわなきゃいけないかもしれないの」
「うん……」
「だから、私が魔女さんを助けに行くから、ナナはお家で待ってても良いよ?」
話しを終えたルルはナナの答えを待つ。
ナナは何でいきなりそんな話しをするのだろうと首を傾げている。その表情はどこか不満げだ。
「お姉ちゃん、それは一番いやだ」
「え?」
「ナナだけがお家で留守番とか一番いや」
「だってだって、魔女さんが逃げられない相手なんだよ? 多分、私たちのことなんて蟻さんくらいにしか思ってないよ」
それを聞いていたナナは、大きなため息を吐いた。
「はぁ……それさ、お姉ちゃんが一人で行っても勝ち目ないよ」
「うぐ……それはそうだけど……」
口をモゴモゴとさせ続けるルルは、困った表情を見せている。この表情は、本当にルルが困っている時に見せるものだ。
憶測だが、ルルの私的な感情で危ない綱渡りをさせたり檻に閉じ込められたことに対して、負い目を感じているのだろう。そう考えたナナは、力強くルルの手を握った。
「ナナはお姉ちゃんの妹だよ? お姉ちゃんの気まぐれで振り回されるのなんて慣れっこだよ」
そのナナの力強い言葉に、ルルは目を丸くさせた。
「え、じゃあ私と一緒に戦ってくれるの?」
「もちろんだよ。お姉ちゃんはお姉ちゃんらしくナナを振り回してれば良いの――まあ、いやな時はいやって言うけど……」
自分の言葉に顔を赤くして照れているナナは、どんどんと声を小さくさせた。しかしルルはそんなことを気にした様子はなく、ナナへと思い切り抱き着く。
「嬉しい嬉しい! 私は良い妹を持った!」
「く、苦しいよお姉ちゃん……」
思いのほかルルの力が強く、苦しそうな声を上げるナナ。だがそんな力強い抱擁もすぐに終わり、ルルはナナの手を取った。
「よし! じゃあ早速魔女さんの元に向かおう! きっと私たちのことを待ってるよ!」
ルルはそう言うと、ナナの手をブンブンと振りながら、スマートフォンを片手に玄関へと歩み出した。
手を引かれるナナは嫌がる素振りを見せず、むしろ嬉しそうな顔つきでルルの横顔を見ていた。
「ねぇ……最後のセリフ……聞こえた?」
ナナが恐る恐るルルの顔を覗く。
「う、うん。絶対に『双子』って言ってたよね……」
確かに魔女さんの師匠は『双子の魔法使い見習い』と言っていたが、魔女さんの話しだと師匠はこの世には居ないはず。なのにどうして、私達のことを知っているのだろうか。
「もしかしたら魔女さんの師匠さんって凄い人なのかも!」
少しだけ考えたルルは、そんな答えに辿り着いたらしい。
「確かに凄い人なのかも……」
一方のナナもルルの意見に同意らしく、顎に手を当てながら遠い目で床の方を眺めている。
するとルルは、何かを思い出したかのように口を開いた。
「魔女さんって本当の魔女じゃないんだよね?」
「うん、そう言ってたね」
「それでもあれだけ魔法が使えるってことは、本物の魔女はもっと色々な魔法が使えるのかな?」
「うーん、そうかもしれないよね……」
ということは、本物の魔女である師匠さんは魔女さんよりも多く魔法を使えるということだ。
あの魔女さんでさえ、ありとあらゆる魔法を使っていたのに、その上を行く魔女さんはどういった魔法を使うのだろうか。そうなことを延々と考えていると、またもルルが口を開いた。
「じゃあもしかしたらさ、魔女さんと私たちがこうやって過ごすことを予知した……とか?」
「そんなこと出来るのかなぁ」
「でもそうじゃないと最後のセリフは説明出来なくない?」
「確かにそうだけど……」
それでは魔女ではなく占い師の方が近いのではないだろうか。ナナはそう考えたが、魔法でも出来るのかと自己完結を終えた。
「そう思うと本物の魔女はレベルが違うんだね……なんか、魔女さんはまだ人間に近いかもだけど、師匠さんは人間離れしてるね」
見たことも無い師匠さんを思い浮かべながら、ナナは深々な声を発した。
「そうだね。さすが魔女さんに魔法を教えただけのことはあるよ」
何故だか偉そうなルルの言葉で、この話しに区切りが着いた。
姉妹は頭の中で魔女さんの師匠はどんな人だったのだろうと考えていると、部屋の中には静寂が訪れた。
その間にも、ルルが手に持っているスマートフォンの画面は光り続けている。それに気が付いたルルは、画面をナナへと見せるように顔の前に差し出した。
「この青い線の方向に行けば魔女さんが居るんだよね?」
画面には道を表しているのであろう白い道と、その周りには緑しかない。その上に自分達を表している赤色の矢印と、魔女さんの居場所に繋がる青い線が見られる。
「そう言ってたね」
ナナが頷きながら答えると、ルルは手を下ろしてスマートフォンの画面を覗き込む。
すると、指で画面をタッチしたり線をなぞり出した。
「お姉ちゃん、何してるの?」
「何か反応するのかなーって」
しかしルルがいくら画面を触っても、地図が変化を見せることはなかった。恐らく、画面は操作が出来ないのだろう。
「うーん、何にも出来ないね」
ルルはそう言うと画面の操作を止め、目の前に立つナナに向き直った。その真剣な眼差しに、ナナは少しだけ心臓をギクリとさせる。
「な、なに……?」
そんな言葉とは裏腹に、ナナの目はしっかりとルルを見ている。
「あのね? 洞窟の件でナナにはすごく迷惑を掛けたと思ってるんだよ」
「う、うん……」
「私の興味だけでナナのことを危険な目にあわせちゃって、すごく悪いなーって。それでね? 多分これからはもっと危ない目にあわなきゃいけないかもしれないの」
「うん……」
「だから、私が魔女さんを助けに行くから、ナナはお家で待ってても良いよ?」
話しを終えたルルはナナの答えを待つ。
ナナは何でいきなりそんな話しをするのだろうと首を傾げている。その表情はどこか不満げだ。
「お姉ちゃん、それは一番いやだ」
「え?」
「ナナだけがお家で留守番とか一番いや」
「だってだって、魔女さんが逃げられない相手なんだよ? 多分、私たちのことなんて蟻さんくらいにしか思ってないよ」
それを聞いていたナナは、大きなため息を吐いた。
「はぁ……それさ、お姉ちゃんが一人で行っても勝ち目ないよ」
「うぐ……それはそうだけど……」
口をモゴモゴとさせ続けるルルは、困った表情を見せている。この表情は、本当にルルが困っている時に見せるものだ。
憶測だが、ルルの私的な感情で危ない綱渡りをさせたり檻に閉じ込められたことに対して、負い目を感じているのだろう。そう考えたナナは、力強くルルの手を握った。
「ナナはお姉ちゃんの妹だよ? お姉ちゃんの気まぐれで振り回されるのなんて慣れっこだよ」
そのナナの力強い言葉に、ルルは目を丸くさせた。
「え、じゃあ私と一緒に戦ってくれるの?」
「もちろんだよ。お姉ちゃんはお姉ちゃんらしくナナを振り回してれば良いの――まあ、いやな時はいやって言うけど……」
自分の言葉に顔を赤くして照れているナナは、どんどんと声を小さくさせた。しかしルルはそんなことを気にした様子はなく、ナナへと思い切り抱き着く。
「嬉しい嬉しい! 私は良い妹を持った!」
「く、苦しいよお姉ちゃん……」
思いのほかルルの力が強く、苦しそうな声を上げるナナ。だがそんな力強い抱擁もすぐに終わり、ルルはナナの手を取った。
「よし! じゃあ早速魔女さんの元に向かおう! きっと私たちのことを待ってるよ!」
ルルはそう言うと、ナナの手をブンブンと振りながら、スマートフォンを片手に玄関へと歩み出した。
手を引かれるナナは嫌がる素振りを見せず、むしろ嬉しそうな顔つきでルルの横顔を見ていた。
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