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最終章 姉妹の選択
ふたつのリンゴ
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青空の見えない曇り空の下、スマートフォンの画面に映る青い線を頼りに歩く。
砂利道を一歩一歩踏みしめるお揃いの黄色と青色の靴は、魔女さんが魔法で作ってくれた物だ。随分と長く履いているのに汚れが付かないのは、きっと魔法のおかげだろう。
「うー、やっぱり冬って寒いね」
「そりゃあそうだよ。昨日の夜も魔女さんが居ないからストーブ点けられなくて寒かった」
「もう、せっかく私が火の魔法を使って点けてあげようと思ったのに」
「家が燃えちゃうから絶対にダメ」
姉妹はそんな雑談をしながら、マップ上の青い線を辿りながら歩く。
そうやって歩き続けていると、あることに気が付く。
「ねぇねぇ、この道ってさ……」
ルルは目の前にある分かれ道を見て声を出した。この分かれ道は昨日も通った。そして姉妹は、何度も何度もこの道を歩いたことがある。
「うん、山の入口に向かうか村に向かうかの分かれ道だね……」
ナナがそう口に出したと同時に、分かれ道を前にして立ち止まった。
姉妹は揃ってスマートフォンの画面を覗き込むと、青い線は村の方へと向かって伸びていた。
「魔女さん、村に居るのかな?」
「うん、こっちの方向は村に行く道だよね」
魔法使いさんはあの後、魔女さんを家に連れて行ったのだろうか。
家に居る時も話したが、魔法使いさんの家に魔女さんが居るとなると少しだけ厄介だ。それでも、辿り着くまでが一苦労な洞窟と比べるとどっこいどっこいだが。
「もちろん、魔法使いさんの家だよね」
「だろうね」
ナナが短く返事を返すと、ルルの手に力が入った。
「お姉ちゃん?」
それに気が付いたナナが声を掛けると、ルルは眉をひそめて険しい表情を見せていた。
その顔は村の方向を向いていて、風になびく金色の髪がナナの瞳には神秘的に写る。
「今、私たちの力だけで魔女さんを助けようとしてるんだよね」
その言葉の意図が上手く掴めずに、ナナは目蓋をパチパチとさせた。
「うん、そうだけど」
口から出たのは思っていたよりも素っ気ない物だったが、ルルは満足したように小さく頷いて見せた。
「最初はさ、私たちが魔女さんに助けて貰ったんだよね。ママとパパに捨てられたあの日に」
「う、うん……」
「あれから私たち、少しは強くなったよね」
「うーん、どうだろう……魔法は使えるようにはなったけど……」
魔女さんと出会う前は、殴られたり叩かれたりしながらママやパパの機嫌を伺うだけだったが、今では一人の人を助け出そうとしている。そう考えると、魔女さんと出会ってから私たちは成長出来たのではなかろうか。
「絶対に強くなれたよ! だって私たちだけの考えで家を出て、魔女さんを助けに行くんだもん!」
「まあ、そうだけど」
「うん! だから私たちは強い! 魔女さんのことも絶対に助けられるよ!」
ルルは自分に言い聞かせるようにして大きな声を上げると、ナナの手を引きながら村へと向かう道に就いた。
スマートフォンの画面を見ても、道を間違った気配はなく、このまま進んで良いのだと思わせてくれた。
======
歩みを進めて行くと、あっという間に村へと辿り着いた。村の中はいつも通りの賑わいを見せており、姉妹を見つけた村人たちは気持ちのいい挨拶を送ってくれた。
「あらルルちゃんにナナちゃん、今日もおつかいに来たの?」
八百屋の前を通ると、お店の前に立っていたおばちゃんに声を掛けられた。その両手には真っ赤なリンゴが一つずつ握られていた。
「ううん! 今日は違う用事で来たの!」
魔法使いさんの名前は出さない方が良いのではと瞬時に判断したルルは、いつもの人懐っこい笑顔でそう答えた。するとおばちゃんも、満面の笑顔を見せてくれる。
「そうなのかい。今日も姉妹仲良くて良いねぇ」
「えへへ、すごく仲良しなの!」
繋いでいる手を高く上げて見せつけるルル。その隣では、ナナが照れたようにモジモジとしている。
そんな二人の姿に満足したおばちゃんは、口を大きく開いて笑った。
「いいわねぇ、仲が良いのはとても素晴らしいことよ。そんな二人には店に入りたてのリンゴをあげちゃおうかな」
おばちゃんはそう言うと、手に持っていたリンゴを姉妹に渡そうとする。しかしルルの手は、スマートフォンとナナの手でいっぱいだ。そんなルルを見たおばちゃんは、驚いたように目を開いた。
「あらルルちゃん、珍しいもの持ってるわねぇ」
おばちゃんの視線は、ルルが手に持っているスマートフォンを捉えている。
「あ、これスマートフォンってやつらしい! ナナから教えて貰ったの!」
「あらナナちゃん、よくスマホのことを知ってるわねぇ」
「うん、読んでた本に出てきたから」
ナナが小さな声で言うと、おばちゃんは「はぇ~」と独特な感嘆の声を上げた。
「ナナちゃんは本を読むのが好きなのねぇ。それで二人はスマホを使って何をしているの?」
その質問にルルとナナは顔を合わせた。さすがに「魔女さんを助けに来た」とは言えない。どうしたものかとルルが頭を悩ませていると、ナナがおばちゃんの顔を見上げながら、空いている手を身振り手振りとさせながら話し始めた。
「えっとね、ひいじいさんが偶然持ってたのを貰って写真を撮って遊んでたの」
ナナが「だよね」と言いながらルルに尋ねたので、「うん!」と大きく頷いてみせる。
するとおばちゃんは、口紅をたらふく塗っている唇を吊り上げて笑みを作った。
「それは楽しそうね! 良い写真が撮れるといいわねぇ」
そう言いながら、着ていたエプロンのポケットからビニール袋を取り出すと、そこにリンゴを二つ入れてナナへと手渡した。
「わ! ありがとおばちゃん!」「ありがとうございますっ」
二人が元気よく返事をすると、おばちゃんは「良いのよ~」と頬に手を当てながら目を細めた。
「じゃ、私たちは写真撮りに行ってくるから、おばちゃんまた今度来るね!」
「はいよ、楽しみにしてるね」
ルルとナナは大きく手を振ると、おばちゃんはにこやかな笑みで手を振り返してくれた。
ルルは片手にスマートフォンを、ナナは片手にリンゴの入った袋を持っているが、もう片方の手はしっかりと繋いだままだ。
ゆっくりと歩き出した姉妹は、お互いに顔を合わせる。
「リンゴ、貰っちゃったね」
ルルが苦笑いを浮かべると、ナナも同じ表情を返した。
「うん、でも嬉しい」
「そうだね、後で食べようか」
そんな話しをしながらも、姉妹の足は魔法使いさんの家へと向う。
スマートフォンに示された青い線は、以前に魔法使いさんの家に行った時と同じルートで引かれていた。
大丈夫、きっと大丈夫だ。私たちなら魔女さんを助けられる。魔女さんを助けて、また三人で暮らすのだ。
八百屋から歩くこと約五分。姉妹の目の前には、魔法使いさんの家がそびえ立っていた。
砂利道を一歩一歩踏みしめるお揃いの黄色と青色の靴は、魔女さんが魔法で作ってくれた物だ。随分と長く履いているのに汚れが付かないのは、きっと魔法のおかげだろう。
「うー、やっぱり冬って寒いね」
「そりゃあそうだよ。昨日の夜も魔女さんが居ないからストーブ点けられなくて寒かった」
「もう、せっかく私が火の魔法を使って点けてあげようと思ったのに」
「家が燃えちゃうから絶対にダメ」
姉妹はそんな雑談をしながら、マップ上の青い線を辿りながら歩く。
そうやって歩き続けていると、あることに気が付く。
「ねぇねぇ、この道ってさ……」
ルルは目の前にある分かれ道を見て声を出した。この分かれ道は昨日も通った。そして姉妹は、何度も何度もこの道を歩いたことがある。
「うん、山の入口に向かうか村に向かうかの分かれ道だね……」
ナナがそう口に出したと同時に、分かれ道を前にして立ち止まった。
姉妹は揃ってスマートフォンの画面を覗き込むと、青い線は村の方へと向かって伸びていた。
「魔女さん、村に居るのかな?」
「うん、こっちの方向は村に行く道だよね」
魔法使いさんはあの後、魔女さんを家に連れて行ったのだろうか。
家に居る時も話したが、魔法使いさんの家に魔女さんが居るとなると少しだけ厄介だ。それでも、辿り着くまでが一苦労な洞窟と比べるとどっこいどっこいだが。
「もちろん、魔法使いさんの家だよね」
「だろうね」
ナナが短く返事を返すと、ルルの手に力が入った。
「お姉ちゃん?」
それに気が付いたナナが声を掛けると、ルルは眉をひそめて険しい表情を見せていた。
その顔は村の方向を向いていて、風になびく金色の髪がナナの瞳には神秘的に写る。
「今、私たちの力だけで魔女さんを助けようとしてるんだよね」
その言葉の意図が上手く掴めずに、ナナは目蓋をパチパチとさせた。
「うん、そうだけど」
口から出たのは思っていたよりも素っ気ない物だったが、ルルは満足したように小さく頷いて見せた。
「最初はさ、私たちが魔女さんに助けて貰ったんだよね。ママとパパに捨てられたあの日に」
「う、うん……」
「あれから私たち、少しは強くなったよね」
「うーん、どうだろう……魔法は使えるようにはなったけど……」
魔女さんと出会う前は、殴られたり叩かれたりしながらママやパパの機嫌を伺うだけだったが、今では一人の人を助け出そうとしている。そう考えると、魔女さんと出会ってから私たちは成長出来たのではなかろうか。
「絶対に強くなれたよ! だって私たちだけの考えで家を出て、魔女さんを助けに行くんだもん!」
「まあ、そうだけど」
「うん! だから私たちは強い! 魔女さんのことも絶対に助けられるよ!」
ルルは自分に言い聞かせるようにして大きな声を上げると、ナナの手を引きながら村へと向かう道に就いた。
スマートフォンの画面を見ても、道を間違った気配はなく、このまま進んで良いのだと思わせてくれた。
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歩みを進めて行くと、あっという間に村へと辿り着いた。村の中はいつも通りの賑わいを見せており、姉妹を見つけた村人たちは気持ちのいい挨拶を送ってくれた。
「あらルルちゃんにナナちゃん、今日もおつかいに来たの?」
八百屋の前を通ると、お店の前に立っていたおばちゃんに声を掛けられた。その両手には真っ赤なリンゴが一つずつ握られていた。
「ううん! 今日は違う用事で来たの!」
魔法使いさんの名前は出さない方が良いのではと瞬時に判断したルルは、いつもの人懐っこい笑顔でそう答えた。するとおばちゃんも、満面の笑顔を見せてくれる。
「そうなのかい。今日も姉妹仲良くて良いねぇ」
「えへへ、すごく仲良しなの!」
繋いでいる手を高く上げて見せつけるルル。その隣では、ナナが照れたようにモジモジとしている。
そんな二人の姿に満足したおばちゃんは、口を大きく開いて笑った。
「いいわねぇ、仲が良いのはとても素晴らしいことよ。そんな二人には店に入りたてのリンゴをあげちゃおうかな」
おばちゃんはそう言うと、手に持っていたリンゴを姉妹に渡そうとする。しかしルルの手は、スマートフォンとナナの手でいっぱいだ。そんなルルを見たおばちゃんは、驚いたように目を開いた。
「あらルルちゃん、珍しいもの持ってるわねぇ」
おばちゃんの視線は、ルルが手に持っているスマートフォンを捉えている。
「あ、これスマートフォンってやつらしい! ナナから教えて貰ったの!」
「あらナナちゃん、よくスマホのことを知ってるわねぇ」
「うん、読んでた本に出てきたから」
ナナが小さな声で言うと、おばちゃんは「はぇ~」と独特な感嘆の声を上げた。
「ナナちゃんは本を読むのが好きなのねぇ。それで二人はスマホを使って何をしているの?」
その質問にルルとナナは顔を合わせた。さすがに「魔女さんを助けに来た」とは言えない。どうしたものかとルルが頭を悩ませていると、ナナがおばちゃんの顔を見上げながら、空いている手を身振り手振りとさせながら話し始めた。
「えっとね、ひいじいさんが偶然持ってたのを貰って写真を撮って遊んでたの」
ナナが「だよね」と言いながらルルに尋ねたので、「うん!」と大きく頷いてみせる。
するとおばちゃんは、口紅をたらふく塗っている唇を吊り上げて笑みを作った。
「それは楽しそうね! 良い写真が撮れるといいわねぇ」
そう言いながら、着ていたエプロンのポケットからビニール袋を取り出すと、そこにリンゴを二つ入れてナナへと手渡した。
「わ! ありがとおばちゃん!」「ありがとうございますっ」
二人が元気よく返事をすると、おばちゃんは「良いのよ~」と頬に手を当てながら目を細めた。
「じゃ、私たちは写真撮りに行ってくるから、おばちゃんまた今度来るね!」
「はいよ、楽しみにしてるね」
ルルとナナは大きく手を振ると、おばちゃんはにこやかな笑みで手を振り返してくれた。
ルルは片手にスマートフォンを、ナナは片手にリンゴの入った袋を持っているが、もう片方の手はしっかりと繋いだままだ。
ゆっくりと歩き出した姉妹は、お互いに顔を合わせる。
「リンゴ、貰っちゃったね」
ルルが苦笑いを浮かべると、ナナも同じ表情を返した。
「うん、でも嬉しい」
「そうだね、後で食べようか」
そんな話しをしながらも、姉妹の足は魔法使いさんの家へと向う。
スマートフォンに示された青い線は、以前に魔法使いさんの家に行った時と同じルートで引かれていた。
大丈夫、きっと大丈夫だ。私たちなら魔女さんを助けられる。魔女さんを助けて、また三人で暮らすのだ。
八百屋から歩くこと約五分。姉妹の目の前には、魔法使いさんの家がそびえ立っていた。
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