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6.お見通し
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「冬の国王ガーリブ、九番の息子サリーです」
「名前はそのままか」
「思いつかなくて」
それを聞いたシャリーフはフッと笑う。
「お前らしいな」
首を撥ねられてもおかしくないこのシーンで、シャリーフが笑うことにサリーは驚く。他の国の王子が身分を隠して怪しい薬を自国の王に持ってきていたと言うのに。
「もっと顔をよく見せろ」
「は、はあ」
被っていたシーツを渋々のけて、シャリーフと対峙する。するとシャリーフは手を伸ばしサリーの腕を掴んだ。
「顔も腕も真っ白だな。冬の国の民はみんなこんなに白いのか」
「日差しが弱いですし、全く日が届かない日もあります。夏の国の民の様に肌が焼けることはないです」
するっと腕をさするシャリーフ。ぞくっと震えるサリー。腕から離れたその手はそのまま首すじに触れて頬をさする。
「あ、あの」
まるで恋人の戯れのようなシャリーフの行動に戸惑うサリー。だがその甘さとは裏腹の質問をシャリーフはしてきた。
「肌を隠してまでこちらにきた理由は? ただのお使いではあるまい。あの様な薬まで持参して」
サリーはギュッと目を瞑る。これを言ってしまえば国際問題になるはずだ。下手すれば戦争にもなりかねない。恐らく父であるガーリブは出来損ないのサリーを擁護しないだろう。
妾の子など無用だ。戯言だとガーリブは切り捨ててしまうかもしれない、とサリーは覚悟した。
「……『レッドクリスタル』を、奪って、帰ろうとしてました」
それを聞き、シャリーフは眉を顰めた。頬をさすっていた指がぴたりと止まる。
「『レッドクリスタル』を?」
シャリーフの声にサリーはゆっくり頷いた。いよいよ首を撥ねられるか、と唇を噛むと今度はシャリーフが声を出して笑う。
「シャリーフ様?」
突然のことにサリーは面食らう。するとシャリーフは次の様に説明した。
『レッドクリスタル』が発掘されたのは随分と昔の話であること、魔法石は何十年も放置すると魔力が放電してしまうこと。そのため発掘された『レッドクリスタル』の魔力はあるところに蓄積され、いまはもう微弱な魔法しか石にないという。国宝扱いしていたのは、魔力を持っていた頃だけで、いまや王族の倉庫に眠るただの石だという。
「そ、そんな」
「国同士の情報もなんてこんなものさ。そうだ蓄積された魔力はどこにあると思う?」
「えっ、魔力を貯めるだなんて」
サリーはシャリーフの顔を見ながら回答に困っているときふと気づいた。夏の国の民の瞳は町人や使用人たちは黒か茶色が多い。ただシャリーフや他の王族の瞳は赤が混じった茶色だ。
「まさか、その瞳……」
「そうだ。王族一味の体に溜めたんだ。だから奪えない。というか、奪うなら戦争しかないだろうな。ガーリブ王はお望みか?」
「そんな訳ない……あの人は、そんなこと望んでなくて」
「本来なら国宝を奪うつもりでお前をここに送ったんだ。あらぬ非礼だし、父が聞いたら激昂するだろうな」
頬に触れていたシャリーフの手を取り、サリーは懇願する。
「……それだけは、言わないでくれ。俺だけを処刑してくればそれですむだろ?」
強く握る手に、シャリーフが自分の手を重ねた。
「安心しろ。私もいらない心配を父にかけたくない。それに、あの薬。ちゃんと効いたようだ」
「は? こんなに早く効くわけが…」
「父の足は昔の傷が疼く程度だ。それでもたまに痛むから足を引きずることがあってな。足の悪い使用人にあの薬を飲ませたら、良くなったと報告があったから父に飲ませた。すると、あっという間に効いたようだ」
王の足の状態が切断寸前というのはシャリーフの嘘だったようだ。サリーが何者で、何を企んでいるのかを調べようと、軟禁する時間を長くするためだった。
サリーはしてやられた、と唇を噛んだ。シャリーフという男は自分よりもはるかに賢くて洞察力がある。それに引き換え自分は何も考えていないな、と項垂れているとシャリーフは手を強く握ってきた。
「それでも父は足の痛みに悩むことがなくなって感謝している。だから、『レッドクリスタル』の件は他言しないことを誓う」
サリーは思わず顔を上げるとシャリーフが微笑んでいた。
あ、ありがとうございますっ! 俺、なんて言ったらいいか」
シャリーフの言葉にサリーはポタポタと涙を流した。
「成り行きとはいえ、ナージたちと仕事もしてくれてたし、あいつらもお前と仲良くなっている。ナージも言葉にしないがかなりお前を気に入っているはずだ」
グスッとサリーは鼻を啜りながら、涙が止まらない。ここで暮らしているうちに、この国にこのままいられたら、なんて思ったのは一度や二度ではない。ナージたちと、そしてシャリーフの側に居たいと思っていた。
「それにな、サリー」
ぎし、とシャリーフがベッドに腰掛けてきた。甘い香りが強く香ってくらくらする。
「この白い肌を俺のものにしたい」
「……はっ?」
握っていた手を伸ばし、耳たぶに口付けるとサリーは思わず身震いした。
「ちょ……ひゃっ」
「反応が良すぎるこの体、どうなってるのか、試したい」
「何言って……」
ぐい、とサリーの体をベッドに押し倒し、自分の下に組み敷いた。シャリーフの黒い長髪が顔に当たり、その逞しい褐色の筋肉質の腕にサリーはドキっとした。
「名前はそのままか」
「思いつかなくて」
それを聞いたシャリーフはフッと笑う。
「お前らしいな」
首を撥ねられてもおかしくないこのシーンで、シャリーフが笑うことにサリーは驚く。他の国の王子が身分を隠して怪しい薬を自国の王に持ってきていたと言うのに。
「もっと顔をよく見せろ」
「は、はあ」
被っていたシーツを渋々のけて、シャリーフと対峙する。するとシャリーフは手を伸ばしサリーの腕を掴んだ。
「顔も腕も真っ白だな。冬の国の民はみんなこんなに白いのか」
「日差しが弱いですし、全く日が届かない日もあります。夏の国の民の様に肌が焼けることはないです」
するっと腕をさするシャリーフ。ぞくっと震えるサリー。腕から離れたその手はそのまま首すじに触れて頬をさする。
「あ、あの」
まるで恋人の戯れのようなシャリーフの行動に戸惑うサリー。だがその甘さとは裏腹の質問をシャリーフはしてきた。
「肌を隠してまでこちらにきた理由は? ただのお使いではあるまい。あの様な薬まで持参して」
サリーはギュッと目を瞑る。これを言ってしまえば国際問題になるはずだ。下手すれば戦争にもなりかねない。恐らく父であるガーリブは出来損ないのサリーを擁護しないだろう。
妾の子など無用だ。戯言だとガーリブは切り捨ててしまうかもしれない、とサリーは覚悟した。
「……『レッドクリスタル』を、奪って、帰ろうとしてました」
それを聞き、シャリーフは眉を顰めた。頬をさすっていた指がぴたりと止まる。
「『レッドクリスタル』を?」
シャリーフの声にサリーはゆっくり頷いた。いよいよ首を撥ねられるか、と唇を噛むと今度はシャリーフが声を出して笑う。
「シャリーフ様?」
突然のことにサリーは面食らう。するとシャリーフは次の様に説明した。
『レッドクリスタル』が発掘されたのは随分と昔の話であること、魔法石は何十年も放置すると魔力が放電してしまうこと。そのため発掘された『レッドクリスタル』の魔力はあるところに蓄積され、いまはもう微弱な魔法しか石にないという。国宝扱いしていたのは、魔力を持っていた頃だけで、いまや王族の倉庫に眠るただの石だという。
「そ、そんな」
「国同士の情報もなんてこんなものさ。そうだ蓄積された魔力はどこにあると思う?」
「えっ、魔力を貯めるだなんて」
サリーはシャリーフの顔を見ながら回答に困っているときふと気づいた。夏の国の民の瞳は町人や使用人たちは黒か茶色が多い。ただシャリーフや他の王族の瞳は赤が混じった茶色だ。
「まさか、その瞳……」
「そうだ。王族一味の体に溜めたんだ。だから奪えない。というか、奪うなら戦争しかないだろうな。ガーリブ王はお望みか?」
「そんな訳ない……あの人は、そんなこと望んでなくて」
「本来なら国宝を奪うつもりでお前をここに送ったんだ。あらぬ非礼だし、父が聞いたら激昂するだろうな」
頬に触れていたシャリーフの手を取り、サリーは懇願する。
「……それだけは、言わないでくれ。俺だけを処刑してくればそれですむだろ?」
強く握る手に、シャリーフが自分の手を重ねた。
「安心しろ。私もいらない心配を父にかけたくない。それに、あの薬。ちゃんと効いたようだ」
「は? こんなに早く効くわけが…」
「父の足は昔の傷が疼く程度だ。それでもたまに痛むから足を引きずることがあってな。足の悪い使用人にあの薬を飲ませたら、良くなったと報告があったから父に飲ませた。すると、あっという間に効いたようだ」
王の足の状態が切断寸前というのはシャリーフの嘘だったようだ。サリーが何者で、何を企んでいるのかを調べようと、軟禁する時間を長くするためだった。
サリーはしてやられた、と唇を噛んだ。シャリーフという男は自分よりもはるかに賢くて洞察力がある。それに引き換え自分は何も考えていないな、と項垂れているとシャリーフは手を強く握ってきた。
「それでも父は足の痛みに悩むことがなくなって感謝している。だから、『レッドクリスタル』の件は他言しないことを誓う」
サリーは思わず顔を上げるとシャリーフが微笑んでいた。
あ、ありがとうございますっ! 俺、なんて言ったらいいか」
シャリーフの言葉にサリーはポタポタと涙を流した。
「成り行きとはいえ、ナージたちと仕事もしてくれてたし、あいつらもお前と仲良くなっている。ナージも言葉にしないがかなりお前を気に入っているはずだ」
グスッとサリーは鼻を啜りながら、涙が止まらない。ここで暮らしているうちに、この国にこのままいられたら、なんて思ったのは一度や二度ではない。ナージたちと、そしてシャリーフの側に居たいと思っていた。
「それにな、サリー」
ぎし、とシャリーフがベッドに腰掛けてきた。甘い香りが強く香ってくらくらする。
「この白い肌を俺のものにしたい」
「……はっ?」
握っていた手を伸ばし、耳たぶに口付けるとサリーは思わず身震いした。
「ちょ……ひゃっ」
「反応が良すぎるこの体、どうなってるのか、試したい」
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