1 / 6
1.僕らの出会い
しおりを挟む
僕と彼が付き合いだして、一年が経過した。
出会いはゲイバー。田舎から上京し就職した僕は、ようやく自分がゲイであることをオープンに出来る環境になったから嬉しくて、週末にゲイバーに通うようになったんだ。
通い詰めて半年くらいした頃に、すっかり顔馴染みになったママさんから紹介されたのが、今の彼氏である地場学《ちばまなぶ》。
僕がカウンター席で飲んでいて、ママと話していると、席を一つ開けたところに座ったのが学で、気がついたママが突然彼に話しかけたのがきっかけ。
『マナちゃん相手してあげてよ。あんた小さい子好きでしょう』
ママの言う小さい子とは僕のことだ。一般男性より背が低いのがコンプレックスの僕。ママの表現にグサッときたが本当だから仕方ない。
低い身長とこの童顔、そして見た感じまんまのネコ。それが僕、沢田洋介《さわだようすけ》だ。
マナちゃん、と呼ばれた彼はやけに大人っぽい色気のあるやつだった。紺色のスーツに流した黒髪に、手にしたグラスが様になっている。風貌からしてみてもタチそのもので、ママは僕をネコと知ってたから、学を紹介してくれたのだろう。学は僕をチラッと見るとこう、呟く。
『……小さい子だからって全部が好みとは限らないけど』
口が悪いやつだなあ。それが学に抱いた第一印象だっだ。
だけど、あとからママに聞いたところ、学は以前から店で見かけていた僕のことを気になっていたらしく、色々ママに聞いてきていたらしい。それなら、愛想よくすればいいものを。あのころからひねくれてたんだなあ。
ママから学を紹介されたものの、第一印象の悪さから僕の方から近付くことはなかった。
『あんたが暇そうだから』
そう言いながら、学は店に来ると何故か僕の隣に座っていた。とにかく口が悪い。僕はムカッとしながらも、席を移動することなく飲んでいた。
学が僕の隣に来ることを拒否しなかったのは、単に好みの顔だったからだ。人は自分にないものに惹かれるという。まさに学は僕にないものだらけだった。身長、大人の雰囲気。時々見せる色香。すっと通った鼻筋にアーモンドの形をした目。何もかもが僕と逆だった。
毎回のように隣に座られたら、一緒に飲まないわけにはいかない。いつのまにか僕らは普通に会話をするようになっていた。
そこで気がついたのは、学は僕を全く甘やかさないってこと。僕のこの容姿のせいか、いままでの友人や彼氏は優しくて、甘やかせてくれる人ばかり。でも学は違っていたんだ。
会社の愚痴を静かに聞いてくれていたかと思えば、最後に学は辛辣なアドバイスをくれる。時には『それはお前がおかしいぞ』と一刀両断。はあ? と思うことも多いけど、彼の指摘は的を得ていた。
冷たくあしらう割には熱意を持って話を聞いてくれている彼。僕はだんだんと学が苦手ではなくなっていった。
うんうん、と何もかもを肯定してくれるのではなく、真剣に僕に向き合ってくれている学の姿勢が嬉しく思えた。
そして出会って半年ぐらい過ぎた頃には、ほぼ毎週、バーで会い一緒に飲んでいた。
『マナちゃん、この子ね、あんたが来ないと寂しそうなのよ』
ある日、ママがそう学に言うものだから僕は慌てて手を振った。
『ち、違うよっ』
『へぇー、随分可愛いこといってくれるじゃん』
ウイスキーの入ったグラスを傾けながら、学が笑う。僕は多分真っ赤になっていたのだろう。するとママは矛先を学に変えた。
『何言ってんの、マナちゃんだって、この子がいないと三十分もしないうちに帰っちゃうじゃないの』
『……へぇ、そうなんだ』
『たまたまだよ、ったく余計なことを』
ママはこうやって僕らをよく揶揄っていた。お互いに意識はしているものの、認めたくなくて。変な間柄にピリオドを打ったのはそれからしばらくして、夏の大雨の夜だった。
その日は朝、寝坊をしてしまい慌てていた。会社に行く支度をしながら、テレビはつけているだけで、いつもゆっくり見る天気予報を見れなかった。
家を出る時には晴れていたし、午後も雲が出始めたわりにはまだ雨の気配はしなかったから、僕は仕事を終えると傘も持たずに週末のバーへ。
『よぉ』
珍しく学が先に来ていて、店内を見渡すと金曜日だというのに、その日は人が少なかった。
『お疲れ、今日やけに人少ないね』
『給料前だからだろ』
学はそう答えて、オーダーしていたウイスキーを口にした。それから数時間、いつものように飲んで上機嫌に喋っていると、ママが突然あら大変と呟いた。
『電車、全線ストップしちゃってるわ』
『え? なんで』
『この雨じゃ、仕方ないわねぇ』
出会いはゲイバー。田舎から上京し就職した僕は、ようやく自分がゲイであることをオープンに出来る環境になったから嬉しくて、週末にゲイバーに通うようになったんだ。
通い詰めて半年くらいした頃に、すっかり顔馴染みになったママさんから紹介されたのが、今の彼氏である地場学《ちばまなぶ》。
僕がカウンター席で飲んでいて、ママと話していると、席を一つ開けたところに座ったのが学で、気がついたママが突然彼に話しかけたのがきっかけ。
『マナちゃん相手してあげてよ。あんた小さい子好きでしょう』
ママの言う小さい子とは僕のことだ。一般男性より背が低いのがコンプレックスの僕。ママの表現にグサッときたが本当だから仕方ない。
低い身長とこの童顔、そして見た感じまんまのネコ。それが僕、沢田洋介《さわだようすけ》だ。
マナちゃん、と呼ばれた彼はやけに大人っぽい色気のあるやつだった。紺色のスーツに流した黒髪に、手にしたグラスが様になっている。風貌からしてみてもタチそのもので、ママは僕をネコと知ってたから、学を紹介してくれたのだろう。学は僕をチラッと見るとこう、呟く。
『……小さい子だからって全部が好みとは限らないけど』
口が悪いやつだなあ。それが学に抱いた第一印象だっだ。
だけど、あとからママに聞いたところ、学は以前から店で見かけていた僕のことを気になっていたらしく、色々ママに聞いてきていたらしい。それなら、愛想よくすればいいものを。あのころからひねくれてたんだなあ。
ママから学を紹介されたものの、第一印象の悪さから僕の方から近付くことはなかった。
『あんたが暇そうだから』
そう言いながら、学は店に来ると何故か僕の隣に座っていた。とにかく口が悪い。僕はムカッとしながらも、席を移動することなく飲んでいた。
学が僕の隣に来ることを拒否しなかったのは、単に好みの顔だったからだ。人は自分にないものに惹かれるという。まさに学は僕にないものだらけだった。身長、大人の雰囲気。時々見せる色香。すっと通った鼻筋にアーモンドの形をした目。何もかもが僕と逆だった。
毎回のように隣に座られたら、一緒に飲まないわけにはいかない。いつのまにか僕らは普通に会話をするようになっていた。
そこで気がついたのは、学は僕を全く甘やかさないってこと。僕のこの容姿のせいか、いままでの友人や彼氏は優しくて、甘やかせてくれる人ばかり。でも学は違っていたんだ。
会社の愚痴を静かに聞いてくれていたかと思えば、最後に学は辛辣なアドバイスをくれる。時には『それはお前がおかしいぞ』と一刀両断。はあ? と思うことも多いけど、彼の指摘は的を得ていた。
冷たくあしらう割には熱意を持って話を聞いてくれている彼。僕はだんだんと学が苦手ではなくなっていった。
うんうん、と何もかもを肯定してくれるのではなく、真剣に僕に向き合ってくれている学の姿勢が嬉しく思えた。
そして出会って半年ぐらい過ぎた頃には、ほぼ毎週、バーで会い一緒に飲んでいた。
『マナちゃん、この子ね、あんたが来ないと寂しそうなのよ』
ある日、ママがそう学に言うものだから僕は慌てて手を振った。
『ち、違うよっ』
『へぇー、随分可愛いこといってくれるじゃん』
ウイスキーの入ったグラスを傾けながら、学が笑う。僕は多分真っ赤になっていたのだろう。するとママは矛先を学に変えた。
『何言ってんの、マナちゃんだって、この子がいないと三十分もしないうちに帰っちゃうじゃないの』
『……へぇ、そうなんだ』
『たまたまだよ、ったく余計なことを』
ママはこうやって僕らをよく揶揄っていた。お互いに意識はしているものの、認めたくなくて。変な間柄にピリオドを打ったのはそれからしばらくして、夏の大雨の夜だった。
その日は朝、寝坊をしてしまい慌てていた。会社に行く支度をしながら、テレビはつけているだけで、いつもゆっくり見る天気予報を見れなかった。
家を出る時には晴れていたし、午後も雲が出始めたわりにはまだ雨の気配はしなかったから、僕は仕事を終えると傘も持たずに週末のバーへ。
『よぉ』
珍しく学が先に来ていて、店内を見渡すと金曜日だというのに、その日は人が少なかった。
『お疲れ、今日やけに人少ないね』
『給料前だからだろ』
学はそう答えて、オーダーしていたウイスキーを口にした。それから数時間、いつものように飲んで上機嫌に喋っていると、ママが突然あら大変と呟いた。
『電車、全線ストップしちゃってるわ』
『え? なんで』
『この雨じゃ、仕方ないわねぇ』
11
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる