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2.雨のホテル
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バーは地下にあり、雨の様子など分からない。何より到着した時には降ってもなかったのに。どれくらい降ってるのか気になり、店を出て上に向かう。
階段からはもう雨が注ぎ込んでいて、上がり切ってみると傘無しには歩けないし、あってもずぶ濡れになりそうなくらい、ひどく降っている。肩を落としながら店に戻ると、ママはスマホで天気の状況を見ていた。
『今晩大雨になるって予報してたの知らなかったの?』
『今朝は天気予報見れなかったんだよ』
自分のスマホで電車の情報を確認すると、やはり使う路線も止まっており、僕は頭を抱えた。まだ明日が休みだから良かったけど、どうやって帰るか。タクシーも捕まりそうにないし…
『あんたたちどうするの? 私は拓也のとこに行くからいいけど』
拓也さんはこの店のバーテンダーだ。すぐ近くに部屋を借りているらしく、たまにママは帰るのが億劫になると、泊まり込むらしい。一部の客の間では、二人はできてるんじゃないかと噂されている。
『もう泊まった方が早いだろうな』
学は呑気にドライフルーツを頬張りながら、そう言った。すると、ママはニヤリと笑う。
『あらあ。それなら一緒に泊まればいいじゃない! 部屋でまた飲めばいいでしょ! それならもう閉店してもいいわよね、客はあんたたちしかいないんだから』
その提案にギョッとして僕は抗議の声をあげたが、隣で学はそうだなと頷いていた。
『善は急げだな。俺がよく泊まるホテルが近くにあるから、電話しとくわ』
『は、はあ?』
ドキンと胸の鼓動が高まってしまったのは、気のせいだと思うことにした。
バーから歩いて十分くらいのところのホテルに着いた頃には、ママに借りた傘をさしていても、スーツがかなり濡れてしまった。
繁華街近くのホテルで、さらにみんなの帰宅の足が潰れているとあって、部屋はほぼ満室だったらしい。かろうじて残っていたのは、ダブルの部屋。
『せめてツインなかったのかなー』
僕は部屋についてジャケットを脱ぎながら呟くと学は仕方ないだろと言う。
『空いてただけでも良かっただろ』
おつまみにママがくれたドライフルーツとピーナッツをテーブルに置いたものの、雨に打たれてあまり飲む気はしない。
『先にシャワーしな。風邪ひくぞ』
『う、うん』
暖かいシャワーを浴びて体が暖かくなると、気持ちもホッとしてきてベッドにゴロンと仰向けになった途端、あくびが出た。学が浴びているシャワーの音を聞きながらぼんやりと天井を見る。
学と僕の関係ってなんだろう。ダブルベッドで一緒に寝て、そういう雰囲気になったらどうしよう。って期待してるのか?
僕は体を起こし、今度は枕に顔を埋めてうつ伏せになった。酒の力もあって、僕はそのまま眠りについてしまった。
『おい、風邪ひくぞ』
学の声が遠くから聞こえて、目を開けるとすぐそばにバスローブを着た彼の顔があった。いつもワックスで流している髪の毛が、風呂上がりでふわふわだ。いつもより幼く見えるのにそれでも僕より大人っぽい。僕は半分枕に顔を埋めたままぼんやりと考えていた。
小さなため息をついて学はそのままベッドに腰掛ける。僕はゆっくり体を起こし、学が横になれるように移動しようと背中をむけた、その時。
学が背後から僕を抱きしめた。僕は驚いてその体を退けようとするが、悔しいことに学の力には叶わない。
『ちょ……! この酔っぱらい!』
『酔ってない』
学は僕の顔を自分の方に向けて、じっと見つめてきた。その時僕は気づいた。あ、これは酔ってない目だと。それならどうして僕を抱きしめる? ベッドがあって目の前にネコがいるから? とりあえずやっちゃおう的な?
そんなことを思っているうちに学の顔が近づいてきた。
『セフレとかじゃないから』
一言、学はそう言うと俺にキスしてきた。そして学と一晩過ごし、お互い知らなかった連絡先を交換した。バーで会うだけの間柄だった僕たちは一日で友人を飛び越えて、恋人となったのだ。
***
それがちょうど一年前の話。一人暮らし同士だった俺らはさっさと同棲を始めた。
きっかけは、一緒に飲んでた学が珍しく酔って、呂律が怪しくなってとき、帰りのタクシーを拾う間に『一緒に家に帰るようになりたい』と何度も言ったから。
学は普段はクールでかなりの塩対応な奴だけど、酔いが回ると甘えだす。そのギャップに初めは戸惑ったが、直ぐに僕はニンマリした。
(何だよコイツ。僕のこと大好きなんじゃん)
階段からはもう雨が注ぎ込んでいて、上がり切ってみると傘無しには歩けないし、あってもずぶ濡れになりそうなくらい、ひどく降っている。肩を落としながら店に戻ると、ママはスマホで天気の状況を見ていた。
『今晩大雨になるって予報してたの知らなかったの?』
『今朝は天気予報見れなかったんだよ』
自分のスマホで電車の情報を確認すると、やはり使う路線も止まっており、僕は頭を抱えた。まだ明日が休みだから良かったけど、どうやって帰るか。タクシーも捕まりそうにないし…
『あんたたちどうするの? 私は拓也のとこに行くからいいけど』
拓也さんはこの店のバーテンダーだ。すぐ近くに部屋を借りているらしく、たまにママは帰るのが億劫になると、泊まり込むらしい。一部の客の間では、二人はできてるんじゃないかと噂されている。
『もう泊まった方が早いだろうな』
学は呑気にドライフルーツを頬張りながら、そう言った。すると、ママはニヤリと笑う。
『あらあ。それなら一緒に泊まればいいじゃない! 部屋でまた飲めばいいでしょ! それならもう閉店してもいいわよね、客はあんたたちしかいないんだから』
その提案にギョッとして僕は抗議の声をあげたが、隣で学はそうだなと頷いていた。
『善は急げだな。俺がよく泊まるホテルが近くにあるから、電話しとくわ』
『は、はあ?』
ドキンと胸の鼓動が高まってしまったのは、気のせいだと思うことにした。
バーから歩いて十分くらいのところのホテルに着いた頃には、ママに借りた傘をさしていても、スーツがかなり濡れてしまった。
繁華街近くのホテルで、さらにみんなの帰宅の足が潰れているとあって、部屋はほぼ満室だったらしい。かろうじて残っていたのは、ダブルの部屋。
『せめてツインなかったのかなー』
僕は部屋についてジャケットを脱ぎながら呟くと学は仕方ないだろと言う。
『空いてただけでも良かっただろ』
おつまみにママがくれたドライフルーツとピーナッツをテーブルに置いたものの、雨に打たれてあまり飲む気はしない。
『先にシャワーしな。風邪ひくぞ』
『う、うん』
暖かいシャワーを浴びて体が暖かくなると、気持ちもホッとしてきてベッドにゴロンと仰向けになった途端、あくびが出た。学が浴びているシャワーの音を聞きながらぼんやりと天井を見る。
学と僕の関係ってなんだろう。ダブルベッドで一緒に寝て、そういう雰囲気になったらどうしよう。って期待してるのか?
僕は体を起こし、今度は枕に顔を埋めてうつ伏せになった。酒の力もあって、僕はそのまま眠りについてしまった。
『おい、風邪ひくぞ』
学の声が遠くから聞こえて、目を開けるとすぐそばにバスローブを着た彼の顔があった。いつもワックスで流している髪の毛が、風呂上がりでふわふわだ。いつもより幼く見えるのにそれでも僕より大人っぽい。僕は半分枕に顔を埋めたままぼんやりと考えていた。
小さなため息をついて学はそのままベッドに腰掛ける。僕はゆっくり体を起こし、学が横になれるように移動しようと背中をむけた、その時。
学が背後から僕を抱きしめた。僕は驚いてその体を退けようとするが、悔しいことに学の力には叶わない。
『ちょ……! この酔っぱらい!』
『酔ってない』
学は僕の顔を自分の方に向けて、じっと見つめてきた。その時僕は気づいた。あ、これは酔ってない目だと。それならどうして僕を抱きしめる? ベッドがあって目の前にネコがいるから? とりあえずやっちゃおう的な?
そんなことを思っているうちに学の顔が近づいてきた。
『セフレとかじゃないから』
一言、学はそう言うと俺にキスしてきた。そして学と一晩過ごし、お互い知らなかった連絡先を交換した。バーで会うだけの間柄だった僕たちは一日で友人を飛び越えて、恋人となったのだ。
***
それがちょうど一年前の話。一人暮らし同士だった俺らはさっさと同棲を始めた。
きっかけは、一緒に飲んでた学が珍しく酔って、呂律が怪しくなってとき、帰りのタクシーを拾う間に『一緒に家に帰るようになりたい』と何度も言ったから。
学は普段はクールでかなりの塩対応な奴だけど、酔いが回ると甘えだす。そのギャップに初めは戸惑ったが、直ぐに僕はニンマリした。
(何だよコイツ。僕のこと大好きなんじゃん)
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