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神同人作家は陸くんを溺愛する
3/10 AM10:00
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【三月十日 十時】
「昨日よりはマシだけど、少し冷えるわね」
オフ会のメンバーで集合し、一般参加の列に並んでいる間はずっとおしゃべりしている。僕はサークルガイド片手にスペースを回る最終確認していると、隣から永田くんが話しかけてきた。
「あれ、最初に高西先生のところに行かないんですか?」
サークルガイドを覗き込んで永田くんは顔を真横に持ってくる。近いな、おい……
「うん。【キミノソラ】のユユカ先生の新刊完売しそうだし、撤退早いから一番にしてるんだ。高西先生はいつも新刊は完売しないように、たくさん準備してくれているし、壁サークルにしては撤退が遅いから、人が少なくなっていくようにしてる」
それに、その方がゆっくりお顔を拝見できるからと心の中で呟いた。
「へぇそうなんだ! さすが先輩! 俺は高西先生のとこ、二番目に行きます」
「……そっか」
「嫁の本も買わないと行けないから、忙しくて」
「嫁」
そそ、と笑顔を見せる永田くん。……ごめん、勝手に嫉妬して。
僕はカートを引いて慌ただしそうに歩いていくサークル参加者をぼんやりと見ていた。高西先生はもう入場したのかな。設営されてるのかな。
実は前回、奇跡が起きた。本を高西先生から受け取ったときに『何度か来てくれてるよね?』って言われたんだ。僕は慌てて頷き『はい』としか言えなくて。今思い出してもドキドキする。今日も僕だと分かってくれるだろうか。
はっ、ダメダメ。とにかくいまは、最終確認しておかないと。感情に浸るのは、戦いがひと段落してからだ!
「昨日よりはマシだけど、少し冷えるわね」
オフ会のメンバーで集合し、一般参加の列に並んでいる間はずっとおしゃべりしている。僕はサークルガイド片手にスペースを回る最終確認していると、隣から永田くんが話しかけてきた。
「あれ、最初に高西先生のところに行かないんですか?」
サークルガイドを覗き込んで永田くんは顔を真横に持ってくる。近いな、おい……
「うん。【キミノソラ】のユユカ先生の新刊完売しそうだし、撤退早いから一番にしてるんだ。高西先生はいつも新刊は完売しないように、たくさん準備してくれているし、壁サークルにしては撤退が遅いから、人が少なくなっていくようにしてる」
それに、その方がゆっくりお顔を拝見できるからと心の中で呟いた。
「へぇそうなんだ! さすが先輩! 俺は高西先生のとこ、二番目に行きます」
「……そっか」
「嫁の本も買わないと行けないから、忙しくて」
「嫁」
そそ、と笑顔を見せる永田くん。……ごめん、勝手に嫉妬して。
僕はカートを引いて慌ただしそうに歩いていくサークル参加者をぼんやりと見ていた。高西先生はもう入場したのかな。設営されてるのかな。
実は前回、奇跡が起きた。本を高西先生から受け取ったときに『何度か来てくれてるよね?』って言われたんだ。僕は慌てて頷き『はい』としか言えなくて。今思い出してもドキドキする。今日も僕だと分かってくれるだろうか。
はっ、ダメダメ。とにかくいまは、最終確認しておかないと。感情に浸るのは、戦いがひと段落してからだ!
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