神同人作家は陸くんを溺愛する。

柏木あきら

文字の大きさ
6 / 53
神同人作家は陸くんを溺愛する

3/10 PM13:00

しおりを挟む
【三月十日 十三時】

いよいよ高西ユウ先生のスペースに足を向けることにした。もうすでに肩にかけているトートバッグはかなり、重い……。

他の作家さんのスペースを回っている間に、何回か高西先生のスペースを横目で見てた。朝一はやっぱり長蛇の列で、売り子さんも忙しそうだった。そんな売り子さんの真ん中で笑顔を絶やさずに立っていたのは高西先生だった。頭ひとつ背が高くて僕には後光すら見えたのだ。
三巡目したくらいには列はだいぶ少なくなっていて、いま確認するとちょうどスペースの前にはお客さんは二人。しかも三人いる売り子さんは一人しかいない。もしかしたらゆとりができたから買い物にでたのかな。今ならゆっくり高西先生と話ができるかも。

もう六回もお会いしてるのに、いまだにスペースが近くなると回れ右してしまいそう。スペースにたどり着くと、ちょうど後ろを向いていた先生がこちらを振り返った。
黒の革ジャンにグレーアッシュから金髪に変わった髪。キリッとした眉に切れ長の一重の目が涼しそうな印象。

ああ僕は完璧に今、同人作家ではなく個人としてあなたに会いにきている。

ギュッと拳を握り、思い切って話しかけた。
「あの、新刊の番外編てまだありますか」
「はい。まだありますよ! 」
ニコニコと笑う先生。見本誌の下にある新しい本を取り出して僕に見せる。すると……
「あ! いつもきてくれる子だ!」
そんなことを突然言ってきたので、僕は固まってしまった。え、ええ?
「今日も来てくれたんだね」
パクパク口を開けたものの、声が出ない。隣にいた別のお客さんはいつの間にかいなくなっていた。しばらくして僕は慌てて財布を取り出しお金を先生に渡す。
「ありがとう」
「そっ、それとこれを」
カバンの中から取り出した封筒。昨日永田くんが出した封筒と同じくらい分厚いものは、高西先生へのファンレターだ。
「わあ! ずっしり!嬉しいな。……ねぇもし違ってたらごめんだけどさ、今朝花の写真撮ってなかった?」
な、何故分かったんだ? 先生、エスパーなの?
僕が頷くとやっぱり、と嬉しそうに笑う。
「そのグリーンのジャンパー、俺持っててさ!【ブロッソ】の限定販売のやつだよね。だから目についたんだ」
ヒェッ、同じ服持ってるとか、もう僕倒れてしまいそう……
「そ、そうです!【ブロッソ】のジャンパーです。取り扱い店舗、地元にないからオンラインでしか買ったことないですけど」
「んー、表参道に直営店あるんだけとね。オンラインにないのも取り揃えてあるよ」
表参道! 地方民にはレベル高すぎるよ……。

そのあとも高西先生は【ブロッソ】の推しドコロを熱弁して、僕もつい乗ってしまった。ああこんなにお話できるなんて!
「ユウ先生、盛り上がってらっしゃるところ申し訳ないんですがお客さんが……」
隣にいた売り子さんがおずおずと会話に入ってくる。振り向くと僕の後ろには三人くらい新刊を手にしたお客さんがいて慌てて僕はその場を去ろうとした。
「ごめんごめん」
と、高西先生は手元にあった名刺に何かを書いて、先程買った新刊と一緒に僕に手渡してきた。
「ありがとう、またね」
手渡された名刺には、ボールペンでこう書いてあった。 

『あとでSNSのDM下さい!もっと話したいです』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~

四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。 ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。 高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。 ※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み) ■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

竜人息子の溺愛!

神谷レイン
BL
コールソン書店の店主レイ(三十七歳)は、十八歳になったばかりの育て子である超美形の竜人騎士であるルークに結婚を迫られていた。 勿論レイは必死に断るがルークは全然諦めてくれず……。 だが、そんな中で竜国から使者がやってくる。 そしてルークはある事実を知らされ、レイはそれに巻き込まれてしまうのだが……。 超美形竜人息子×自称おじさん

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です ※小説家になろうにも公開してます

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...