天使は甘いキスが好き

吉良龍美

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天使は甘いキスが好き

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 恵は俊彦を見てお辞儀をする。
「おはよう御座います」
「おはよう恵君。コーヒー飲む?」
 手に持ったカップを持ち上げて見せる。そういえば、コーヒーの良い香りがする。
「はい。頂きます」
 龍之介は壁掛け時計を見て、お昼近い事に気付いた。
「もうこんな時間か」
「え? うわ、俺外に四時間も居たんだ!?」
 龍之介は双眸を見開く。
「そんなに?」
「うん。夢中で気付かなかった」
 恵はへへと笑うと、龍之介は恵の手を引いて主寝室へ向かう。
「食事に出掛けよう。美味しいパスタ屋が在るんだ」
「俺は?」
 俊彦が聞く。が、龍之介は一瞥した。
「勝手に来たんだから、勝手に何か食え」
 俊彦は読み掛けの本を置き、立ち上がる。
「お邪魔ですいませんね」
「今頃解ったか」
 恵は二人を見比べてあれ? と首を傾げた。確かに俊彦は自分から、龍之介の元彼女である美加の浮気相手だと云っていたが、昨夜の二人を見ていて、仲はそんなに悪くは無いのだろうと、恵は思っていた。だが、今の会話ではどう見ても…。
「恵、君も着替えて。それはクリーニングに出すから」
「え? あ、はい」
 恵も慌てて龍之介の後に続く。ひとり残った俊彦は飲み掛けのコーヒーを、キッチンのシンクに流して捨てた。
「相変わらずだよな。龍之介は」
 昔から比べられていた。頭の良さも運動神経も。堪らなく苛立った。今も変わらない立場。だから腹いせに龍之介の当時恋人だった、美加を誘惑した。
 元々浮気性があったのか、龍之介をふり、俊彦に靡いたが結局美加は、龍之介が良いと別れを持ち出された。
 ーーーどいつもこいつも人を馬鹿にしやがって。
 階段から二人の声がする。見れば、二人が主寝室から着替えを済ませて、出掛ける支度をしている。
「俊彦さん行って来ます。何かお土産買って来ますね?」
「あぁ。楽しみにしてるよ。恵君は龍之介と違って優しいな」
 龍之介は車の鍵を手に、もう片方の手で恵の肩を抱き寄せる。
「少し遅くなるからな」
「はいはい。行ってらっしゃい」
 俊彦は愛想笑いをし、二人を見送った。
「…龍之介さん、俊彦さんの事まだ許せないの?」
 恵は美加との事を触れてみた。
「何かと俺と張り合う仕草は、昔からモロに出てたな。美加は元々浮気性な処があった。そこに付け込んで来たんだろう。それにもう過ぎた話だ」
 除雪車が朝一で通ったのか、両脇に雪がつみ上がっている。
「食事の後はステンドガラス細工を見に行こう。綺麗だから」
 龍之介は優しく、ハンドルを握りながら片手で恵の頬を撫でた。

 龍之介達が出掛けると、俊彦は携帯を取り出した。
「おい、龍之介の恋人って男かよ」
『恵って子供の事でしょ?』
「なんだ知ってんのか」
 電話の向こうで美加が舌打ちする。
『どうでも良いわ、龍之介の目を覚まさせてよ? やっぱり美加が一番だって、云わせるんだから』
 俊彦は面白そうに鼻で笑う。
『兎に角、あのガキを痛め付けて! 私から龍之介を寝盗るなんて、碌な奴じゃないわよっ』
「ま。俺に任せろよ。じゃあな」
 通話を切ると外へ出て行った。俊彦はまず恵が作った雪ダルマを、薪を割る斧で粉々に壊した。肩を荒く上下し、ついでとばかりに雪ウサギを靴底で踏み付ける。
「は、ざまあみろだ」
 ペッと唾を吐き捨てると、俊彦は斧を在った場所に戻し、部屋へ戻る。早く帰っておいでと、鼻歌を歌う俊彦は豪快に笑った。

 食事の後に教会で展示されている、ステンドガラス細工を見詰めて、恵は溜息を零す。
「職人さんて凄いな…」
「恵、こっちへおいで」
 龍之介に呼ばれて、恵は教会の厳かな光景に息を呑んだ。龍之介に導かれる様に、キリストの前に立つ。
「教会って綺麗だよね」
 光がステンドガラスの中を通り抜けて、教会の中心までキラキラと鮮やかなオブジェを作り出していた。
「恵、此処で誓いたかった」
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