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天使は甘いキスが好き
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恵と女性が振り返る。
「龍君!」
女性が龍之介に抱き付いた。
ーーーなんで? あの人が此処に!?
突然遣って来た龍之介に、女性が泣きながら喚く。
「龍君、ごめんなさいっ私龍君が好きなの、また元みたいに、やり直しましょうよ!」
恵は呆然と立ち尽くした。店内の客達は興味しんしんだ。
「何度も云うが、平気で俺の親戚と浮気して、元に戻ろうなんて、どっちが恥知らずだ?」
「え~? あの女の人が悪いんじゃん!? よく平気であの子に恥知れずだなんて云えるよね」
何処からか、美加の悪口が聞こえ始めた。
「頭可笑しいのはあの女だよ」
女性とカップルで来ていた男性が云う。
「俺、あぁ云う女嫌いっつうか何様!? 女王様か?」
「そこまで云ったら…ねぇ? でもなんだか高飛車な女よね。わ、こっち睨んだ! こわ~い」
美加は真っ赤になって、怒りを恵にぶつけ様として、右手を振り上げた。
ーーーぶたれるっ。
恵は双眸をギュウッと閉じた。が、来る筈の痛さが来ない。恵はそうっと眼を開けると、龍之介の手が、美加の腕を掴んでいた。
「何よ! 皆して私を馬鹿にしてっ」
龍之介の頬を叩いて、颯爽と店を出た。恵はビックリ眼で立ち尽くし、ウエイターがお絞りに氷を包んで、龍之介にどうぞと手渡した。龍之介がありがたいとそれを受け取る。
「ありがとう。助かるよ。あの人意外と怪力でね」
店内がドッと笑いの渦になる。龍之介は恵の向かい側に座った。
「…あの、大丈夫ですか?」
「あぁ。ちょっと痛むけどね。それより…」
「あああぁぁっ! バニラが、チョコが…溶けてる!」
恵はがっくりとして椅子に座る。客達が可愛いと笑う。
「新しいのを。後、アメリカンコーヒーを」
龍之介は通りがかった、ウエイトレスに追加で注文した。
「…あの、その節は花をありがとう」
「あぁ。毎日いろんな花を持って行ったが、おばあ様に嫌われたからかな。捨てると恵が泣くからと、ナースステーションに届けてたよ。来ないで欲しいとも云われたけど、そうは行かない。俺のせいで君が危ない目に遭ったんだ」
恵はパフェを取替えに来てくれたウエイトレスに、お礼を云う。
「毎日来てくれていたなんて。俺知らなかった」
「仕方ないさ。全身打撲だ。俺も昔車事故で腰を打ってね。軽い打撲だったんだけど、マジかってぐらい痛かった。ほら、また溶けちゃうよ?」
恵はハッとして、パフェを食べ始める。
「訊いて良いですか? え…と南川さん」
龍之介は悲しそうな眼で、恵を見詰める。
「前みたいに、龍之介さんじゃ、駄目かな? 君にそう呼ばれると、心が和む」
恵はバニラアイスをスプーンで口に入れたまま、紅くなる。
「りゅ…のすけ、さん?」
龍之介が微笑んで、頷く。
ーーーうわぁ。カッコイイなこの人。メールでしか連絡出来なかったから。本人の声だ。
声のトーンが低く、微かにタバコの香りがする。
「あれ? そういえば、お父さん! もう俺を置いて何処まで電話しに」
「そのお父さんから呼ばれたんだよ」
「…え?」
「恵に会って欲しい。話をして遣って欲しいって」
恵は驚いた。十和子に龍之介の事を大反対されたのに。太一は応援してくれる。
「普通の親なら反対するよね?」
「…あぁ、まあね」
龍之介は口篭もる。浮気が原因で、恵には哀しい思いをさせたと、太一から聞かされた。だから反対出来ないのだろう。
「お父さんは運命だって云ってた」
「運命?」
「うん、お前が信じて愛したならそれは運命だって」
「運命か…そういえば、腕はどう? 夜は眠れてる?」
「あ。うん、今は痛み止めと夜は睡眠薬飲んでるんだ」
「……睡眠薬?」
龍之介が双眸を細めた。
「うん…時々知らない男の人が、夢の中なんだけど…追い掛けて来て俺の腕を掴むんだ。先生にその夢の話したら、睡眠薬出してくれて」
恵はパフェを頑張って食べる。龍之介は顔を強張らせた。それを誤魔化すかのように龍之介はもう一本のスポーンで、恵のパフェを横から食べる。恵は頬を染めて美味しい? と訊く。
「うん。美味しいな」
「龍君!」
女性が龍之介に抱き付いた。
ーーーなんで? あの人が此処に!?
突然遣って来た龍之介に、女性が泣きながら喚く。
「龍君、ごめんなさいっ私龍君が好きなの、また元みたいに、やり直しましょうよ!」
恵は呆然と立ち尽くした。店内の客達は興味しんしんだ。
「何度も云うが、平気で俺の親戚と浮気して、元に戻ろうなんて、どっちが恥知らずだ?」
「え~? あの女の人が悪いんじゃん!? よく平気であの子に恥知れずだなんて云えるよね」
何処からか、美加の悪口が聞こえ始めた。
「頭可笑しいのはあの女だよ」
女性とカップルで来ていた男性が云う。
「俺、あぁ云う女嫌いっつうか何様!? 女王様か?」
「そこまで云ったら…ねぇ? でもなんだか高飛車な女よね。わ、こっち睨んだ! こわ~い」
美加は真っ赤になって、怒りを恵にぶつけ様として、右手を振り上げた。
ーーーぶたれるっ。
恵は双眸をギュウッと閉じた。が、来る筈の痛さが来ない。恵はそうっと眼を開けると、龍之介の手が、美加の腕を掴んでいた。
「何よ! 皆して私を馬鹿にしてっ」
龍之介の頬を叩いて、颯爽と店を出た。恵はビックリ眼で立ち尽くし、ウエイターがお絞りに氷を包んで、龍之介にどうぞと手渡した。龍之介がありがたいとそれを受け取る。
「ありがとう。助かるよ。あの人意外と怪力でね」
店内がドッと笑いの渦になる。龍之介は恵の向かい側に座った。
「…あの、大丈夫ですか?」
「あぁ。ちょっと痛むけどね。それより…」
「あああぁぁっ! バニラが、チョコが…溶けてる!」
恵はがっくりとして椅子に座る。客達が可愛いと笑う。
「新しいのを。後、アメリカンコーヒーを」
龍之介は通りがかった、ウエイトレスに追加で注文した。
「…あの、その節は花をありがとう」
「あぁ。毎日いろんな花を持って行ったが、おばあ様に嫌われたからかな。捨てると恵が泣くからと、ナースステーションに届けてたよ。来ないで欲しいとも云われたけど、そうは行かない。俺のせいで君が危ない目に遭ったんだ」
恵はパフェを取替えに来てくれたウエイトレスに、お礼を云う。
「毎日来てくれていたなんて。俺知らなかった」
「仕方ないさ。全身打撲だ。俺も昔車事故で腰を打ってね。軽い打撲だったんだけど、マジかってぐらい痛かった。ほら、また溶けちゃうよ?」
恵はハッとして、パフェを食べ始める。
「訊いて良いですか? え…と南川さん」
龍之介は悲しそうな眼で、恵を見詰める。
「前みたいに、龍之介さんじゃ、駄目かな? 君にそう呼ばれると、心が和む」
恵はバニラアイスをスプーンで口に入れたまま、紅くなる。
「りゅ…のすけ、さん?」
龍之介が微笑んで、頷く。
ーーーうわぁ。カッコイイなこの人。メールでしか連絡出来なかったから。本人の声だ。
声のトーンが低く、微かにタバコの香りがする。
「あれ? そういえば、お父さん! もう俺を置いて何処まで電話しに」
「そのお父さんから呼ばれたんだよ」
「…え?」
「恵に会って欲しい。話をして遣って欲しいって」
恵は驚いた。十和子に龍之介の事を大反対されたのに。太一は応援してくれる。
「普通の親なら反対するよね?」
「…あぁ、まあね」
龍之介は口篭もる。浮気が原因で、恵には哀しい思いをさせたと、太一から聞かされた。だから反対出来ないのだろう。
「お父さんは運命だって云ってた」
「運命?」
「うん、お前が信じて愛したならそれは運命だって」
「運命か…そういえば、腕はどう? 夜は眠れてる?」
「あ。うん、今は痛み止めと夜は睡眠薬飲んでるんだ」
「……睡眠薬?」
龍之介が双眸を細めた。
「うん…時々知らない男の人が、夢の中なんだけど…追い掛けて来て俺の腕を掴むんだ。先生にその夢の話したら、睡眠薬出してくれて」
恵はパフェを頑張って食べる。龍之介は顔を強張らせた。それを誤魔化すかのように龍之介はもう一本のスポーンで、恵のパフェを横から食べる。恵は頬を染めて美味しい? と訊く。
「うん。美味しいな」
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