秘書は蜜愛に濡れる

吉良龍美

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秘書は蜜愛に濡れる

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 細川大樹が初めて高平奈緒に出逢ったのは、大樹が八歳の夏休み。
 父の聡に連れられて、友人の子供の誕生日パーティーに呼ばれた日だった。「龍之介、君の可愛いおチビちゃんは何処だい? 息子を連れて来たんだ」
 薄い髪を風に揺らせて、中庭に立つ姿はポスターから抜け出したような、美丈夫だ。
 此処は横浜の茅ヶ崎。こじんまりとした白い洋館には、色鮮やかな薔薇が咲き乱れ、大樹は見事な庭園を見詰めた。
 がたいのデカい聡の背後から、大樹はパーティーの主役を探してみる。本当なら今頃友人達とゲーセンで遊ぶ筈だったのだが、今朝になって聡から『出掛ける』と云われ、首根っこを掴まれて拉致られた。
 ーーーなんで俺がこんな見た事ない奴の誕生日パーティーに来なきゃなんないんだよ~。
「大樹君か、大きくなったね。いくつになったんだい?」
 大樹は問われて龍之介を見上げた。
「八歳です」
「うちの奈緒と四つ違いか。まだ奈緒は四歳になったばかりで甘えん坊なんだが、仲良くしてくれると嬉しいよ。さて。さっきまで居たんだが…」
 ガーデニングテーブルの周りには、色取り取りの風船やプレゼント、軽く摘めるお菓子や飲み物が並べられている。
 そこへ家政婦がケーキを運んで来た。
「トキさん、奈緒が 何処かへ行ってしまったんだが」
 ふくよかなトキさんはあらまと首を傾げる。
 大樹は開かれたテラス窓の向こうが気になり出し、大人達の会話をよそに大樹は邸宅に入った。
 中は冷房が利いていてホッと息を吐く。
 そこへタタタっと小さな足音が奥から聞こえ、そちらへ向かうと横からドンと、小さな固まりが飛び出して来た。
「うわっ!」
 リビングの絨毯に仰向いた大樹の腹の上に、小さな子供がびっくり顔で大樹を見下ろしている。
 柔らかそうな黒髪。青く澄んだ大きな瞳。白い肌に紅い唇。
 大樹はドクンと心臓を跳ねさせて、突然現れた天使に見惚れた。
「おにいちゃんだあれ?」
「え…? あ…俺?」
 天使はコクンと頷いた。
 ーーーか、か、可愛い!! pretty!
「おにいちゃん、おかおがまっかですね~おかぜですか?」
 そう云って大樹の額に小さな額をくっつけた。
 ドキドキ、ドキドキ。
 早鐘のように鳴る心拍数に大樹は固まる。閉じられた睫毛が長く、紅い唇にキスをしたい。
 大樹はとてもマセたガキんちょだった。
「大丈夫。風邪じゃないから、俺は大樹、細川大樹」
 腹の上から退いた天使を、大樹は膝の上に抱き寄せた。
「だいき?」
「そう、大樹。君は…もしかして奈緒ちゃん?」
「うん!」
 元気よく返事をした奈緒に、大樹の脳内はファンファーレが鳴り響く。
「誕生日おめでとう! でもどうして外に居なかったんだ?」
「え~と~…おにごっこしてたの!」
 奈緒が首を傾げていたら、ダダダっと何かがやって来る。
「奈緒!」
 大樹と奈緒が、声の方へ振り返る。すると、金髪の少年がワナワナと震えて大樹を指差した。
「俺の奈緒に何しやがる! 離れろ!」
 突如、大樹と金髪少年が睨み合った。
「こんな所に居たのか、あれどうしたの?」
 龍之介と聡が庭からやって来た。
「叔父さん!」
「パパ」
「こいつ誰だよ!?」
「お前こそ誰だ!」
 火花を散らす二人をよそに、奈緒が大樹から離れて龍之介に駆け寄る。「ディオ、彼は僕の友人の息子さんだよ。大樹君その子は妻の兄の息子で、ディオ・ランバート・ヴィルテア。奈緒の従兄弟で、一週間程ウチに遊びに来ているんだ」
 龍之介はディオと大樹に説明する。
 だが二人はフンとそっぽを向いてしまった。龍之介と聡は顔を見合わせ肩を竦める。
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