初恋 1985/2022

2022

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出会い

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 中学3年、15番目の春だった。
 教室の窓から垣間見える青い空に、今日もまたぼんやりと彼女の顔を浮かべていた。

 その出会いのきっかけとなったのは担任の山下先生から半ば強制的に生徒会役員に立候補させられたことだった。そもそも生徒会役員などというのは頭の良い優秀な生徒がなるもので、僕には全く無縁なはずだった。
「俺、生徒会の担当なんよね。うちのクラスからは大さんに立候補して欲しいんよ。大丈夫。たぶん当選するから」
と、有無を言わさず決められたのだった。
 三学年合わせ1,500人が在籍する市内でも有数のマンモス校で、生徒会役員に立候補となると全校生徒の前で演説をし、投票があり、役員が決まる。
「お、俺、演説とか無理やし」
その言葉を笑いながら聞き流し、山下先生は教室を後にした。


 そして演説の日がやってきた。
前期の生徒会役員は2、3年生から選出され、ひとクラス1名ずつ計24人の立候補者が体育館の壇上に並べられた椅子に座っていた。
「あっ、小野!」
隣のクラスの山田巧が見るからに緊張の面持ちで話しかけてきた。
「お前も立候補したんや?」
「うん、山下にはめられたわ」
「俺は貧乏くじ引いてさ……や、やばい! もう一回トイレ行ってくる」
山田は慌ててトイレへと走って行った。

しばらくすると後方席の2年生の立候補者が壇上に上がって来た。一学年違いとは言え、これだけたくさんの生徒がいると知る顔は少なかった。ましてや生徒会役員に立候補するような優等生を僕は誰ひとり知るはずなどーー

 ところが、ある一人の女の子が壇上に上がり、椅子に座る姿に目が釘付けになった。背が高く、ショートヘアがよく似合う女の子だっ。そして椅子に座ると背筋をピンと伸ばし、とても美しい姿で座り、真っ直ぐ前を向いていた。

(あの女の子は……)

途端に胸がドキドキッと鳴るのが分かった。そしてその姿からしばらく目が離せずにいた。

(誰だろう? なんていう子だろう??)

「あぁ、間に合った! うわっ、もうよっけ集まってきたやん」
トイレから戻ってきた山田巧の声で我に返り、壇上から体育館を見渡すとあっという間に人で埋め尽くされていた。

「なぁ、小野……今から辞退できんのかの?」

涙目になっていた山田を見て思わず笑ってしまった。

「5分だけやん。すぐ終わるよ」

そして僕も真っ直ぐ前へ向き直した。ただ、頭の中は後方に座ったあの女の子のことで埋め尽くされていた。
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